ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第07章・第05話

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2つの3角地帯

『わたし達、2人のオピュク。ユニット名は……』
『サラマン・ドール』

 魅惑的な笑みを浮かべる、2人のデジタルアイドル。
彼女たちに向けて放たれたフラッシュの量は、それまでのアイドルを合わせた数をも上回っていた。

『やれやれ、勝手にユニット名をきめてしまうとは、困ったモノだな』
『アラ、本名の命名は、そちらにお譲りしたのですから……』
『ユニット名くらいは、こちらで決めます』

 リビングの薄型テレビに映るレアラとピオラは、自然な表情で切り返す。
その仕草は、人間にしか思えなかった。

『ところで久慈樹社長。彼女たちは実体の身体は持っているんですか?』
『現在はドライアイスのミストに、映像を照射してるみたいですが?』
 記者席からまた、質問が上がる。

『残念ながら、まだ開発中の段階でしてね。去年買収した、南波義肢研究所にてボディを制作して貰ってますよ』
『では、天空教室への参加は、それからと言うコトに?』

『いえいえ、簡易的な身体を用意してあるんです。カトル、ルクス』
 天空教室に3組いる双子姉妹の、最後の1組が呼ばれた。

 ステージの左右から、星のように明るい金髪の少女たちが歩いて来る。
2人はそれぞれ、30センチくらいの人形を抱えていた。

『は、始めまして、カトルです。ボクたちはアイドルではありませんが、天空教室で2人のサポートをするコトになりました』
 青く澄んだ瞳で、真っすぐに前を見る少女。

『このドールは、ボクたちが首に付けているコミュニケーションリングと連動していて、ドールが見る映像をボクたちも見るコトが出来るんです』
 2人はアイドルたちホドでは無いものの、普段とは違う白いワンピースの衣装を着ていた。

『そのドールと言うのは、どれくらい動けるモノなんですかねえ?』
『ゲームセンターの、景品のぬいぐるみにしか見えませんが』
 辛らつな記者も、居るものだ。

『こう見えて、かなりの開発費をかけているんですよ。レアラとピオラ、中に入ってくれ』
『あまり、気乗りがしませんね』
『この中って、窮屈なんですもの』

 愚痴をこぼしつつも、2人はステージから消える。
すると、カトルとルクスが胸に抱えていた人形の目が光り、動き出した。

『オオ、人形が動いたぞ!?』
『あ、跳んで、床に着地しました!』
『3頭身ほどの大きさの人形が、歩いています』

「なんだか、スポーツ実況みたいになってるな。でも、確かに凄い。動きも滑らかだし、ホントに生きてるみたいだ」
 ボクは、アクセスできないテレビの中の映像に向って、驚きの感想を述べる。

『やはり、髪の色が違うんですね』
『サファイア色の髪がレアラさん、エメラルドグリーンの髪がピオラさんで良いでしょうか?』

『ええ、その通りよ。でも早く、等身大の身体が欲しいモノね』
『この身体じゃ、ロクに腕を組むコトもできないじゃない』
 可愛らしい3頭身キャラが、必死に短い腕を組もうとしている。

『確かにその身体ですと、動きがかなり制限される様ですね』
『ええ。ですが2人はこの通りの、じゃじゃ馬な性格でしてね。これくらい制約されて無いと、授業を大人しく聞かないでしょう』

『アラ、言ってくれるくじゃない。久慈樹社長』
『でもこの身体だって、こんなコトも出来るのよ!』
 髪色の異なる2体の人形が、同時に跳びあがる。

『……ふえ?』
『ふわッ!?』
 後ろにいたカトルとルクスのワンピースが、大きくめくれ上がった。

 白いロングソックスを穿いた2つの太ももの上に、薄いレモン色の布に覆われた3角地帯が出現する。
それが2つも同時に、テレビ画面に映し出された。

『ぎゃあああーーーーーーッ!!?』
『イヤアァァーーーーーーー!!?』
 双子の凄まじい悲鳴が、ボクの家のリビングにも木霊する。

『ヤダヤダァ、映さないでェ!?』
『お願いだから、撮らないでぇーー!!!』
 カトルとルクスの必死の訴えにも、フラッシュの雨は止まなかった。

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