暗躍する少女たち
「さて、午前中はウォーターライドに、エアバルーンフライトと、結構周ったよな?」
パルク・デ・ルベリエは巨大なテーマパークであり、それでも全体から見ればごく僅かのアトラクションしか周れていなかった。
「え、ええ。どれも、みんなで愉しめましたわ」
クーリアが、少し困ったような顔をしながら言った。
今、ボクたちはお昼を食べに、園内にある巨大なフレンチレストランに居る。
セノンや真央たち、それにクーリアと彼女の取り巻きの11人の女のコたちが、コッコーヴァンやポトフと言ったフランスの家庭料理に、舌鼓を打っていた。
「なあ。午後からは何処を周るんだ、セノン?」
「そうですね、マケマケ。まずはみんなで……」
「あ、あの、よろしければセノンさん」
「ご、午後からは、わたしたちとパレードを見に行きませんか?」
クーリアのお付きである、ヘルミオネとアンリエッタが、セノンに話しかける。
「ふえ。別にイイけど、それじゃあ、おじいちゃんも一緒に……」
「そ、宇宙斗さまは、わたし達をエスコートしていただけませんでしょうか?」
「あの船が回転するアトラクションに、乗ってみたいのですが?」
ボクとセノンの間に割って入る、アデリンダとフーベルタ 。
「ボクも、苦手なんだよな。ああ言うの」
「だったら、替わりにアタシがエスコートしてやるよ」
「お、頼めるか、真央」
「ま、真央さま。わたし達と、フリーフォーラーに行きましょう!」
「なんでも自由落下が、体験できるらしいのです」
レオナとオッテリアが、強引に真央・ケイトハルト・マッケンジーの背中を押した。
「ヴァルナさまとハウメアさまも、ご一緒にいかがです?」
「ささ、皆で楽しみましょう!」
ヴァルナとハウメアも、リリオペとベルトルダが、強引に連れ去られる。
「なんだか、やけに慌ただしいな」
「そ、そうですわね」
レストランには、まだ食べかけの皿も多く残されていた。
「仕方ないな、アデリンダ、フーベルタ。苦手だケド、その船のアトラクションに付き合うよ」
巨大な支柱に支えられた船が前後にスイングし始め、次第に振り幅が大きくなって最終的に一回転し出すアトラクション。
「ええ!? えと……大丈夫ですのよ、無理はなさらずに」
「わたし達は、シルヴィアたちを誘いますから」
2人も慌ただしく、レストランから走り去って行く。
レストランには『偶然』にも、ボクとクーリアこと、クーヴァルヴァリア・カルデシア・デルカーダだけが取り残された。
「2人だけに、なってしまったね」
「は、はい。申し訳ございません。あのコたちったら……」
「イヤ、彼女たちもキミのコトを思って、やったのだろう?」
「ええ、みんな優しいコたちばかりです」
ボクは、少し照れた女のコをつれて、レストランを出た。
「わたくしやあのコたちが、こうして無事に遊園地を満喫できているのも、宇宙斗艦長がフォボスの燃え盛るプラントから、救い出してくれたお陰ですね」
当てもなく歩く遊園地中央の大通りで、クーリアが前に走り出して振り返る。
「そうだったね。あの時は必死で焦りまくってたケド、結果的にキミたちが無事で良かったよ」
周りには大勢の人々が、笑みを浮かべながら行き交っていた。
「フォボスでわたくし達は、ウィッチレイダーに拉致されて、それから……」
「ボクは、時の魔女の思惑通りに、MVSクロノ・カイロスの艦長になった」
「あの艦の中の街で、わたくしは違う記憶を持っていたのですよね?」
「ああ。キミは学校のクラスメイトで、クラス委員長だった」
自身が知らない記憶があると知らされたクーリアは、過去に激しい嫌悪感を示している。
「その時のわたくしは、どんな顔をしておりましたか?」
「どうって……ボクに世話を焼いてくれる、優等生の女のコって感じだったかな?」
「そう……ですか。それならまあ……許しましょう」
クーリアは、ボクの傍らによって腕を巻き付けた。
「観覧車……乗ってみたいです」
「確か、太陽系で最大の観覧車なんだよな。よし、行ってみるか」
ボクは、クーリアと手を繋いで、観覧車へと駆け出す。
その間にも11人の少女たちが、セノンや真央たちを近づけまいと、必死に暗躍していた。
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