ラノベブログDA王

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王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第07章・第06話

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アイドルとお金

「まったくキミたちは、なんてコトをしてくれたのさ!」
「お陰でボクたちは、全国ネットで恥を晒しちゃったんだからね!」

 天空教室に着くと、星色の髪にそっくりな顔をした2人の少女たちが、机に置かれた2体の人形を相手に怒りをぶちまけていた。

「ニャハハ、カトルとルクスのパンツ、めっちゃ丸見えだったモンね」
 金髪タテガミヘアの少女が、腹を抱えて笑い転げている。

「もう、レノンったら他人事だと思ってェ!」
「全然笑いごとじゃ、済まされないんだからね!」

「まあまあ、あんなモノは些細なファンサービスよ」
「ネットで繰り返し再生されてる様だケド、気にする必要は無いわ」
 机に置かれたレアラとピオラは、涼しい顔で双子を慰める。

「あんなモノ言うなァ、人形のクセにィ!」
「気にするよ。お嫁に行けなくなっちゃったら、責任取ってよね!」
 

「まったく、ガミガミとうるさいコたちね」
「クドクドと、何度も同じコトを。聞き飽きたわ」

「なんだってェ。きいいぃぃ!」
「もうアッタマ来た。こんなナマイキな人形、たたき壊してやる!」

「アラ、いいのかしら。貴女たちの仕事は、わたし達の天空教室でのサポートでしょ?」
「お金が貰えなくなるわよ。それに、わたし達は1体幾らすると思っているのかしら?」
 『サラマン・ドール』の2人は、人間である双子に対して完全に優位に会話を進める。

「ひ、人の弱みに付け込んでェ」
「お、覚えて置きなさいよ」
 怒り心頭の双子姉妹は、ボクの前をズカズカと通り過ぎて行った。

「カトルとルクスは、ずいぶんとお冠(おかんむり) だな。それにしても2人は、お金が必要だから人形のサポートを引き受けたのか?」

「あ、先生だ。そうみたいだよ。なんでもカトルが、心臓に難病の持病があるみたいでさ。その治療費を稼ぐためじゃないかな?」
「そ、そうなのか。初耳だぞ、レノン」

「エッへへ。2人とはかなり、親しくなったからね」
「心臓の持病だなんて、場合に寄ったら命に関わるコトじゃないか」
「だから2人とも、発作止めの薬とか持ち歩いてるよ。カトルは、激しい運動とか無理みたい」

「病気がちだとは聞いていたが、まさかそこまで深刻な病気だったなんて……」
 天空教室の教師となって数か月、カトルの心臓の状態に思い至らなかったコトに、後悔の念が過ぎる。

「心臓の手術ともなると、高額の医療費が必要になるのね」
「まったく人間と言うのも、不便な生き物だわ」
 レアラとピオラの入った2つの人形が、3頭身の顔を見合わせた。

「お金が必要と言う点では、わたしもそれホド変わらないわね」
 正義を重んじる少女、新兎 礼唖(あらと らいあ)が、机の前のソファーに座る。

「ライア、キミもお金が必要だから、アイドルになったのか?」
「ええ、そうです。弁護士になる為には、難問の国家試験を受けなきゃならないわ。ここでいただけるお金だけじゃ、まかない切れませんので」

「わたしも、似たようなモノね。教師を目指すと決めたからには、それ相応の出費は覚悟しています」
 八木沼 芽理依(メリー)が、 ピンク色の髪を宝石で飾った少女の隣に座った。

「まさかメリーとライアが、アイドルを選ぶなんて思ってもいなかったよ」
「合理的に考えれば、ステージに立つアイドルをやっていれば、教壇に立つ度胸は付きますからね。それに今は、教師になる道も狭き門ですから」

 やはりメリーもボクと同じく、教民法が施行された現在の、動画のアポイントメンターとしての教師になるつもりは無いらしい。

「わたしは、純粋にお金の為ですね」
 牧師見習いの少女、我柔 絵梨唖(がにゅう えりあ)も、ライアとメリーの隣に座る。

「エリア、キミがお金を必要とする理由はなんだ?」
「教会の修繕費ですね。借金をして教会を改装したものの、牧師である父が倒れて寄付も激減してしまって、どうにもならない状態なんです」

「それは不動産あるあるっスね。目処を付けて借金して家を買って、当てにしてた収入源が無くなって、家を手放さなきゃならなくなった顧客も、何人か居たっスからね」

 天棲 照観屡(あます てみる)が、エリアの隣に座り、『プレジデントカルテット』の4人は、1つのソファーに集った。

「テミルさん、それはわたくし達一家のコトを、仰っているのではなくて?」
「ですがいつかお姉さまと2人で、あの家を取り戻して見せますわ」
 『ウェヌス・アキダリア』のユニット名を名乗ったアロアとメロエが、テミルの言葉に反発する。

「そんなつもりは無いっスよ。アタシだって、プニプニ不動産を大きくする野望の為に、軍資金がどうしても必要なんス!」

 アイドルとしての道を歩み出した、何人もの少女たち。
その理由にお金が絡んでいるコトに、ボクはやるせなさを感じずには居られなかった。

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