ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第05章・第10話

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奪い合いの戦争

「まったく先生は……ウチのクラスの住人は、ドンドン増えるわね」
 元々の部屋の主である、瀬堂 癒魅亜がヤレヤレといった表情を浮かべる。

「やはり怒っているのか。す、すまない」
 ユミアが怒るのも、無理もない。

 最初は彼女1人で占有していた部屋は、久慈樹社長の思惑によって14人の少女が暮らし始めた。
タリアの事件で関わった7人の被害者の少女たちを迎え入れ、シアたち3姉妹も加わり、今周りを見渡すと23人もの少女が跳ね回っている。

「入院中のキアも入れると、このフロアに24人だからな」
「流石に色々と、問題が出て来てるわね」

「す、すみません。わたしには、こんな優雅な暮らしは……」
「ち、違うのよ、シアちゃん。そう言う意味じゃないわ」
 慌てて取り繕う、ユミア。

「せやで、シア姉。お姉が入院しとる間、ここで暮らしてわかったんや」
「ぜんっぜん、優雅ちゃうで。特に朝は、奪い合いの戦争や」

「奪い合いって、何を奪い合うんだ?」
「そんなん決まっとるやろ、先生」
「カワイイ顔のウチらも、毎朝出すモン……ムグッ、ムグゥ!?」

「ミアちゃん、リアちゃん、こっち来て遊ぼうか」
「そうだ、おやつのドーナツもあるよ」
 同じ双子のカトルとルクスに、口を塞がれ連れ去られるミアとリア。

 周りを見渡すと誰もが、頬を赤らめ視線を逸らされる。

「ああ、そういうコトか」
 ユミアが言った問題の一つは、確実に理解できた。

「でも、これ以上口に出したらどうなるか、わかってるでしょうね?」
「わ、わかってるよ。トイレが足りなくて……あ?」
 口元に笑顔を浮かべながら、ボクをギロっと睨むユミア。

「ゴ、ゴメン、なんでもない。いや~なんだったかなあ」
「もういいわよ」
 目の前で栗毛の少女が、呆れ顔をした。

「わたし1人が占有してた時は、ワンフロアにトイレが3つもいるのかと文句を言ったケド、今はなんでもっと作らなかったのかと、久慈樹 瑞葉を恨んでいるところよ」

「ずいぶんな恨まれ方だな。確かにワンフロアと言えど、巨大マンションの最上階を丸々使ってるんだから、少ないと言えば少ないのか」

「今じゃ、完全に足りてないわ」
「かと言って水回りは、簡単に増設できるモノじゃないっスからねえ」
「そうなのか、テミル?」

 不動産屋の娘で、ボクの新居も見つけてくれた天棲 照観屡に、見解を聞く。

「古い木造建築ならともかく、ここまでデザインされた超高層マンションの最上階っスよ。設置場所の問題もあるし、配管も考える必要もあるっス。とくに配管は、上下水道になるから尚更っスね」

「簡単には増設できないってコトか。今はどうしてるんだ?」
「1つ下の階のトイレに、駆け込んでるわ」
「場合によっては、更に下の階に行ってるっス」

「女の子ってのは、色々と大変なんだな」
「それに社長ったら、わたし達がトイレに駆け込む様子を、カメラで撮って流してるのよ」

「え、授業風景以外の撮影は、禁止って約束じゃ?」
「それはあくまで、このフロアの話よ。下の階は、わたしのモノじゃ無いから、カメラを回されても文句は言えないのよ」

「なるホドな。しかし、ただトイレに駆け込むだけの動画に、需要はあるのか?」
「それが、めっちゃ再生されちゃってるんだよ、先生」
「な、何とかなりませんでしょうか?」

 真っ赤な顔の、レノンとアリスに懇願される。

「一応は掛け合ってみるよ」
「なんだか、頼りないなあ」
「仕方ないだろ、レノン。契約違反でもないんだから」

「……にしてもアイツ、天空教室を完全に見世物にしようとしてるわ」
「キミ以外の13人は、その為に集められたのだろうし、後から入って来たコたちも似たような契約を結ばされてるからな」

「それについてですが、先方さまから打診がありましたわ」
「わたくし達の中で、アイドルユニットを作成しようと言うご提案ですの」

 芸能一家に育ち、芸能界で有名になるコトにノリノリな双子姉妹が、上機嫌に言った。

 

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