ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第02章・第10話

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鳴丘 胡陽

 テラスは、夏の面影の残る日差しを遮るように、パラソルが咲き乱れていた。

「ボクですか? なんの用でしょうか?」
「実は少し思うところがあってね。キミを、待ち伏せていたのよ」
 彼女は、星座の神や英雄、聖獣がデザインされたワンピースから伸びた、白い脚を区見直した。

「わたしは、鳴丘 胡陽(なるおか こはる)といいます」
 彼女は、癒魅亜たち高校生よりも遥かに大人で、パーマのかかったピンク色の髪を右側から前へと垂らしていた。

「ユークリッドで、科学の講師をしているわ。あたな、癒魅亜ちゃんとの待ち合わせの時間には、まだまだ余裕があるのでしょう?」
「どうしてそう、思われるのですか?」「だってあなた、真面目そうだもの」

 実際、待ち合わせは十一時であり、今は九時だった。
「コーヒー? それとも、カフェオレ?」「じゃあ、カフェオレを……」
鳴丘 胡陽は、スラリと長い手を上げ注文を取った。

「それで、ボクに用って……?」「簡単に言ってしまえば、忠告よ」
「忠告? それはまた、物騒な話ですね」ボクは言った。
「大して同様しないところを見ると、あなたも薄々勘づいているようね?」

 テーブルに、カフェオレの入ったグラスが一つ運ばれてくる。
「今のユークリッドは、昔とはずいぶん変わってしまったわ」
「昔というのは、倉崎 世判の生きていた頃……という意味ですか?」

「 その通りよ。当時は、アメリアの世界的なストリーミング動画サイトが、日本市場をも席巻する時代だった。倉崎がユークリッドを立ち上げたのは、ちょうどそんな頃……」
 鳴丘 胡陽は、口紅の付いたカップを置き、話しはじめた。

「まだわたしも、参加する前の話よ。ユークリッドは、天才プログラマーの兄と、当時イジメにあって学校に行くことが出来なかった、妹によって産声を上げたの」

「兄の名は、倉崎 世判。妹は……瀬堂 癒魅亜なんですね?」
「ええ、そうよ。二人とも本名ではないし、わたしも本名は知らないのだけれど」
 二人の本名は、ネットでもいくつか憶測が上がってはいたが、確定はされていなかった。

「最初は、再生数も上がらない小さなサイトだったらしいんだケド、やがて倉崎は親友をユークリッドに誘うのよ」
「その親友って、もしかして……『久慈樹 瑞葉』?」
「フフ。もう知ってたのね」鳴丘 胡陽はサングラスを外し、ボクを見た。

「倉崎の生きていた頃のユークリッドは、『貧しくても動画さえ見れる環境なら、誰でも勉強ができる』を旗印に、みるみる人々の賛同を得て躍進して行ったわ。創業初期の、典型ってところかしらね……」

「それがカリスマだった倉崎 世判が死んで、変わってしまった?」
「当然と言えば、当然よね。あれだけ世の中を変えられるコなんて、早々いないわ」
「もしかして倉崎 世判は、貴女の……?」ボクは、なんとなく察した。

「ええ、そうよ。あのコは、わたしの教え子……」
 サングラスが外れた麗しき瞳は、初秋の空を映し出す。
「でもわたしより早く、宇宙(そら)に登っていってしまった……」

 ボクも、空を見上げた。
「ユークリッドと、妹一人を残して……」
「まったく、無責任なヤツよ。自分はやりたいことだけやって、後は人に押し付けるんだから……」

「今のユークリッドの社長……久慈樹 瑞葉についてなんですケド……」
 ボクの質問に、鳴丘 胡陽はコーヒーを一口、口に含んでから答える。

「実は彼も、わたしの教え子なのよ。最初二人は、対立関係にあった……」
 とつぜん風が吹き、街路樹の葉が舞い散る。
「倉崎は教室でも、物静かながらもクラスメイトの人望を集めていた」

 まだ、人が普通に、学校に通っていた時代の話である。
「でも彼……久慈樹 瑞葉は、暴力事件さえい問わない、札付きの不良だったわ」