ラノベブログDA王

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この世界から先生は要らなくなりました。   第02章・第14話

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執行猶予

「わたしが……彼女たちと共に暮せと言うのですか?」
 瀬堂 癒魅亜は苛立ちにまみれた瞳を、久慈樹 瑞葉へと向ける。

「そうさ。まあもっとも、キミにはアイツが遺した金やら財産やらがたくさんあるからね。そいつを使って、適当なマンションでも借りるコトは出来るハズだが」
 久慈樹 瑞葉は、瀬堂 癒魅亜がそうしないと確信しているかのような口ぶりだった。

「兄は確かに薄れゆく意識の中で、あなたにユークリッドをたくしました」
 彼女は、あの日ボクに見せたように、エンジェル・トリックブラシで栗色の髪を梳かす。
「それなのにあなたは、兄の遺産やわたしに遺してくれた財産まで使って、事業を拡大したのよ!」

「キミに確認は取っただろう? それにボクは、キミの後見人でもあるんだぜ」
 久慈樹 瑞葉は、意にも介さない態度で言った。

「このままじゃ、ユークリッドが消えてなくなるって、脅して置いてよくも言えるわねえ! そうやってあなたは、ユークリッドを私物化して……」
 動画の中のアイドル教師となった彼女は、尚も食い下がる。

「実際に、そういう状況だったのさ。何せ、ユークリッドに恨みを持つヤツらも、多かったからねえ。コイツらの、親共のようにさ」
 ユークリッドの社長は、ボクの生徒となった少女たちを卑下する視線を向けた。

「それは、当然の感情です。あなたはそれを、金と権力で押さえつけてるようですが……」
 ボクは、反論すら許されていない、自分の生徒たちの前に立つ。

「キミは、面白いねえ。でも、彼女もそうするかも知れないよ……?」
 久慈樹 瑞葉は、ボクの右肩に左手を乗せながら言った。

「そうなったら、ボクが全力で止めます!」
 目の前の、翡翠色のツインテールの少女がボクを見つめている。

「ま、いいさ……でもキミは、癒魅亜とそこの娘たちの教師。契約条件は、全員が一定レベルの学力を得るコト。もし一人でも脱落したら、キミはクビだ」
 ユークリッドの若き社長は、ボクの方から手をどける。

「瀬堂 癒魅亜……キミも、ユークリッドに講師として契約しているんだ」
 彼はドアノブに、手を掛けながら呟くように言った。
「三か月……これ以上、授業動画の遅延は許さない」

 それだけ言うと、ドアはバタンと閉じられた。
すると瀬堂 癒魅亜の部屋に、重苦しい沈黙が流れる。

「あ、あの……わたし……行くところがなくて……」
 モコモコ髪の少女は、金盛 阿梨栖(かなもり ありす)と言った。

「どうしたモノかな」ボクも少し悩んだ後に、質問をする。
「ユミア……キミの財産は、社長に差し押さえられているのかい?」
 まずは、情報収集の段階だった。

「実質、そうね。わたしの財産管理は、彼がやっているのよ」
「キミが月に使えるお金は、どれくらい?」
「せいぜい、洋服や化粧品を買うくらいで……今は、月に十万程度かしら?」

「ユークリッドで、稼いでいる割りには、質素なのかもな?」
「お兄さまが生きてた頃に撮影した動画が、まだお金を生んでくれてるだけよ。今は、そこまで稼げてないわ。ネットやSNSでも、いい加減噂になってるのよ……新しい動画を出してないって」

 それは、社長である久慈樹 瑞葉が、彼女にプレッシャーをかける理由にも思えた。
「実際……お兄さまが生きてた頃の笑顔満載の動画に比べて、今の授業動画は自分でも酷いと思うわ」
苦悩する心の内を吐露する、瀬堂 癒魅亜。

「キミは……彼女たちと暮すのは、嫌かな?」
「そ、そうね。まだお互い、何も知らない人たちを部屋に入れるのは、ちょっと……それにいくら広いって言っても……」

「オイオ~イ、お姫様よォ。テメーにそんな決定権は、無いっつーの」
 王洲 玲遠(おおしま れのん)が、ソファーにアグラをかきながら言い放った。
「テメーの先生はよぉ、アタシら全員の先生なんだぜ。一人でも脱落したら、ゲームオーバー!」

「つまり、この部屋で暮せないんなら、出て行くってのか?」
「そーゆーコト。一度くらい、こんなセレブな部屋に、住んでみたかったんよ」
「あ、あの……わたしも、隅っこの方で、じっとしてますから」

「レノンも、アリスも、こう言ってるケド……」
「それなら、わたしが出て行くしか、無さそうですね……」
 瀬堂 癒魅亜は、哀しそうな瞳を見せた。