ラノベブログDA王

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王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第04章・第06話

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少年法

「今回の件は、被害者の少女たちの感情を、無視し過ぎているのではないでしょうか……」

「そうよね。いくらモザイクがされているとは言え、女の子なら見られたくない動画のハズよ」
 ユミアも、ボクの意見を補完してくれた。


「イヤイヤ、彼女たちの人権など、完全に無視しているよ」
 久慈樹 瑞葉は、キッパリと言い切った。

「テレビや新聞などのマスコミも、被害者の実名報道を積極的に行っているだろう」
「そ、それは……」

「この国の公共放送ですら、被害者の実名報道を推進する立場なのだから、我々ユークリッドが行ったところで問題はない。被害者に配慮した報道なんてものは、所詮はまやかしに過ぎないのさ」

「確かにそうかも知れません。ですが彼女たちは、ボクの生徒です……」
「だったらキミが精々、守ってやるんだね」
 豪勢な椅子に座った男は、そんな力も無いクセにと言う顔をした。

「もちろん、被害者の娘共を過剰に取り上げる気はないさ」
「そ、そうですか……」
「ボクが取り上げたいのは、加害者のガキ共の素顔だからね」

 すると、ユークリッド・ニュースイノベーションの画面が、白い高級住宅を映し出す。
『今、わたしは今回の事件の主犯格、襟田 凶輔の自宅へとやって来ています』

「ちょっと待って。こんなコトをすれば……」
 ユミアが、スマホで動画を確認する。

「どうし……こ、これは!?」
「コメ欄が一瞬で、罵声や煽りで埋め尽くされて行くわ」
 ボクも、彼女のスマホの画面を目で追った。

[ユークリッド、スゲー。未成年の犯人の、顔も名前も自宅まで映しやがったyo!]
[少年法あんのに、大丈夫か。でもコイツ、マジ人生詰んだなwww]
[ガキが舐め過ぎなんだよ。少年法のせいで、なんの報道もされない方がオカシイ]

「中々の反響じゃないか。長らく世論を支配てきたマスコミ連中も、冷や汗をかいているかもね」
「だ、だけどこんなのは、明らかに犯罪行為だわ。少年法は……」

「加害者を守る法律でしかないのさ、少年法なんてモノは」
 久慈樹 瑞葉が、瀬堂 癒魅亜の言葉を遮る。

「確かに、現行の法律の多くは加害者を救済し、被害者やその家族の感情を無視する傾向にありました」
「だからその問題点を解消しようと、裁判員制度もできたわ」

「ロクな判決を出せない司法に、国民が呆れただけだろう」
 身も蓋も無い、言い草だった。

「そのクセやつ等と来たら、国民に自分たちがするべき仕事を負わせておきながら、報酬が減額されるコトもない。普通に考えれば、あり得ない話じゃないか?」

「そ、それはそうかもだケド……」
 一般企業であれば、仕事の半分を客にやらせて、給料は据え置きなんてコトは無いだろう。

『ここで速報が入ってきました』
 大画面に映った銀色の髪のアナウンサーが、声を高くして言った。

『犯人側の弁護を請け負った、瀧鬼川 邦康弁護士の記者会見が行われる模様です』
 画面が切り替わり、フラッシュの嵐の中に男が立っていた。
今朝、不敵な笑みを浮かべていた男は、既に憔悴した顔をしている。

「こ、これは明らかに、明確なる法律違反です。ユークリッドは、日本を代表する大企業であるにも関わらず、コンプライアンス(法令厳守)をする気など、まったく無いのです」
 文法もどことなくおかしく、説得力も無かった。

「ですが、アナタが弁護されている少年グループの方が、加害者だというユークリッドの主張は、どう説明されるのですか?」

「すでにネット上から元動画は削除された様ですが、明らかに少年グループの誰かが撮影した映像に思われますが?」

 従来のマスコミ記者からの、質問攻めに合う瀧鬼川弁護士。
ネット上の反応も、概ね少年グループとその弁護を引き受けた人物に、非難が集中する。

 マスコミも、世論も、久慈樹 瑞葉が望んだ通りに動かされて行った。

 

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