ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第04章・第05話

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ユークリッド・ニュースイノベーション

 マホガニーの木で造られた、高級扉の前にボクは立つ。

 ここはユークリッドの本社ビル。
直接と直角が織り成す、近代アートのようなタワービルディングだ。

「この建物、わたしは嫌いだわ」
 瀬堂 癒魅亜は、女子高生らしく好き嫌いで感想を言った。

「ボクは、嫌いじゃないデザインだケドね」
「そう。男の人って、こういうのが好きなのかしら?」
「どうだろうか。でも、キミまで呼ばれていたんだ」

「ええ、まったく理解しがたい人間よ。久慈樹 瑞葉と言う男は……」
 本人に聞こえるのも厭わない声で文句を言いながら、扉を開けズカズカと社長室に入って行く。

「やあ。これは忙しいところを呼び出してしまって、申し訳なかったね」
 背もたれの高い椅子に座った男が、ボクたちにクールな視線を送った。

「用件は解かってます」
「おや、そうかい?」
「今回の瀧鬼川弁護士による、告訴状についての……」

「ああ。その件ならもう、終わったコトだよ」
「は、それは一体、どういうコトでしょうか?」
 久慈樹社長は、ボクの顔を見てクスリと笑う。

「そうだね。スマホの小さな画面じゃ、彼らの表情もよく見れないだろう」
「彼ら……瀧鬼川弁護士のチームのコトですか?」

「まあ、見れば解かるさ」
 そう言いながら、リモコンで社長室の壁一面を覆うカーテンを動作させた。

「こ、こんな場所に、モニターが!?」
「一体、何インチあるのよ。大きすぎでしょ」

「まあ、会議やプレゼン用でもあるからね」
 縦がメートル、横幅は5メートル近くあると思われる 巨大モニターに、映像が映し出される。

『本日よりお送りいたします。ユークリッド・ニュースイノベーションは、世の中の出来事を今までに無い切り口で、お伝えいたします』

 美麗なCGのバーチャル空間に、やはりバーチャルな女性アナウンサーが出現する。
銀色の髪に、クリムゾンレッドの瞳の彼女は、淡々とニュースを読み始めた。

「これって、ニュース番組ですか?」
「そうさ。ユークリッドが、ストリーミング動画で始めたニュース番組の一つだよ」

『今回、瀧鬼川弁護士が弁護を引き受けた少年たちは、鉄道の高架下で少女たちの下半身をスマートフォンで撮影する等、卑猥な行為をはたらき……』
 近未来風の服を着たアナウンサーの背後で、事件の映像が流れ始める。

「ね、ねえ。この映像って……!?」
 ユミアの顔が、蒼ざめた。

「ああ。コイツらが、今回の事件の犯人どもだよ」
 動画には堂々と、事件を起こした少年たちの顔がアップで映し出されていた。

「ど、どう言うコトですか。彼らは、未成年ですよ」
「それがどうかしたのかな?」
「か、顔を映してしまって、大丈夫なんでしょうか?」

「ボクらユークリッドは、テレビ局じゃない」
 久慈樹 瑞葉は、サラリと言った。

「国から電波法によって、公共の電波を使用する許可を得ている彼らとは違うのさ」
「だ、だからと言って、未成年の顔を映すなど、少年法にひっかかる恐れが……」

「未成年と言うだけで、犯罪行為が許される少年法には、ボクも随分と助けてもらったしね」
「昔のアナタは……兄の隣には、絶対に居て欲しくない人間だったわ」
「それは、少しは更生したと受け止めてもいいのかな?」

「むしろ、昔よりもっとズル賢くなったわ」
 憤りを見せるユミア。
その背後では尚も、ニュース映像が流れ続けていた。

『彼らが自分たちのスマートフォンで撮影した映像が、こちらとなります。尚、映像は被害者の少女たちに配慮し、モザイク加工を施しているコトをご了承ください』

 巨大モニターに、薄暗い高架下の映像が流れる。
素人の少年が夜に撮影した為か、画面は揺れ、ピントも合ったり合わなかったりだ。
やがてカメラが、少女のスカートの中を映した瞬間に、モザイクがかかる。

「ホントはモザイクなど、かけたくは無かったんだがね」
 ユークリッドの社長は、子供のように無邪気に笑いながら言った。

「まあ、そっちのバージョンは、彼らが動画をアップした先のサイトで見てもらえばいいさ」

 

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