ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

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この世界から先生は要らなくなりました。   第04章・第07話

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アプリ開発

「ところで今日、キミたちに来てもらったのは、新しく開発したアプリの意見が欲しかったんだ」

 久慈樹 瑞葉社長は、自分のスマホ画面を見せながら言った。
どうやら言葉の綾などではなく、本気で別件でボクたちを呼んだらしい。

「アプリの名前はユークリッター。小さな文章でコミュニケーションを図ったり、ウチの動画にコメを付けたり、ネットショッピングまでできるんだ」
 社長がデスクのパソコンを操作すると、スマホ画面が巨大モニターに拡大表示された。

「まだ、プロト段階だからダウンロードはできないが、実機を用意した。触ってみてくれ」
 マホガニー材のデスクには、二台のスマホが置かれていた。

「仕方ないわね。どれどれ?」
 デジタルは大の得意な少女は、一台を手に取りスワイプし始める。

「うッ……うう」
 デジタルなど大の苦手なボクも、恐る恐る手に取った。

「そうね。この手のアプリの場合、あまり多機能にしちゃうと、かえって評価が下がるケド、かなりの機能を詰め込んだわね?」

「そこはあえて踏まえた上での挑戦さ。動画と買い物サイトを統合するだけでも、かなりの相乗効果が見込めると踏んでね」

「確かに海外の有名ストリーミング動画サービスでも、動画と広告との親和性は甘々だわね」

「ウチは、誰でも動画をアップできるサービスじゃない。質の高い動画を厳選して提供し、ユーザーから支持示を得てきた」

 そこが大手動画サイトとの差別化を可能とし、ユークリッドが急成長できた要因でもある。

「今後は、教育動画以外の分野にも進出する。新規ユーザーを獲得する必要もあってね」
「ネットで見たわ。ニュース、ドラマ、アニメなんかに手を出すってヤツ」
 ニューヨークで大々的に開かれた、記者会見のコトを言っているのだろう。

「マスコミを毛嫌いしてるクセに、やっているコトは電波を使わないテレビ局じゃない」
「相変わらず痛いトコを突くな、キミは」
 ピシャリと言い放つユミアに、苦笑いを浮かべる若き社長。

「テレビとの差別化を図るのが、ユークリッターだよ。動画の収益化にも、貢献してくれるハズさ」
「それはアプリの出来次第よ。どんなに企業側が目論んだって、ユーザーに見向きもされないんじゃ、話しにならないわ」

「手厳しいねえ。とりあえず、触ってみた感想を聞いてもいいかな?」
「そうね。まず、コンセプトとしては悪くないと思うわ」
 ユミアの評価は、悪く無さそうだ。

「動画のコメ欄に書き込めるだけじゃなくて、単独で会話アプリとしてもちゃんと機能している」
 その間、ボクはまだアプリの利用規約を読んでいた。

「それから?」
「会話アプリを中心に見れば、動画やネットショッピングサイトともリンクしてるから、テキスト会話の中で自然に、動画や商品紹介なんかを入れられるわ」

「ああ、全てウチがやっている強みだよ。大手のテキスト会話サービスみたいに、唐突な広告では効果は薄いからね」
 久慈樹 瑞葉は、誇らしげに言った。

「でも……そうね」
「何か、気になる点でも?」

「異なるサービスとのリンクは面白いのだけれど、テキスト会話アプリ単独で見るとどうしても、大手海外サービスと比べて見劣りがするわね」

「ウウム、確かに改善の余地があるな。何かアイデアは無いのかい?」
「アイデアって言われたって……でも、他との差別化は必要よね?」
「そうだが……」

「だったら、タブ形式にしたらどうかしら。今話題のワードをタブにして、情報を切り分ける感じ?」

「な、成る程、素晴らしいアイデアだよ!」
 ユークリッドの社長は、目を輝かせてユミアの手を取った。

「確かに、アメリカの大手サービスでは、関係ない分野の情報は発信し辛いから、分野ごとにアカウントを作るユーザーも多い」
 ボクには、何のことかもさっぱりだ。

「アカウントではなく、タブで情報分野を切り替えられるのなら、ユーザーの利便性も増すハズだ」
「でも、ただタブ形式ってのも、詰まらなくない?」
「そ、そうか?」

「例えば話題のワードを、投票できるようにしちゃうのよ。で、ユーザーは人気のワードを選んで、タブにできる……みたいな?」

「スペシャルなアイデアだ。さっそく開発陣に伝えよう」
 その頃ボクは、利用規約を全て読み終えたところだった。

 

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