ラノベブログDA王

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この世界から先生は要らなくなりました。   第10章・第05話

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絶望

 久慈樹社長の見解は、旧来の義務教育や学校の体制では、新たな情報社会で世界の企業を相手に戦う、人材は生み出せないというモノだった。

「ユミア。もちろんキミにも、テストには参加してもらう」
「わかっているわ。わたしだって、先生の天空教室の1員なんですから」
 久慈樹 瑞葉の横暴に反発する、瀬堂 癒魅亜(せどう ゆみあ)。

「他の3人も、ライブ会場の試験に参加するというコトで、構わないかな?」

「モチロンだよ。どんなに周りが騒がしくたって、やってやるんだから」
「わ、わたしも、メリー先生に怒られないように頑張ります」

「レノンもアリスも、その息だ。旧来の教育が無くなっても、学力を測る試験は残されているんだ。ライブ会場でテストができたなら、試験会場で緊張するコトもなくなるだろう」
 ボクなりに、精一杯の励ましの言葉をかける。

「クララ、キミはどうなんだい?」
「そうね。貴方に踏みにじられるだけだなんて、ゴメンだもの。借りはきっちり、返さないとね」
 深紅のポニーテールの少女は、肩に掛かった社長の右手を振り払った。

「全員が、納得したようだね。ならば決まり……」
「まだ、ボクが納得してませんよ」
「ほう。納得できない、理由を言ってみたまえよ」

「簡単な話です。試験が終わるまで、これ以上ルールを追加しないでいただきたい」
「そ、そうよ。それから試験がライブのいつどこでやるのか、ちゃんと教えなさいよ!」
 ボクの要求に乗っかるカタチで、ユミアも要求を繰り出す。

「了解した。新たなルールの追加はしないし、試験が行われるのは会場の空中ステージを予定している。ライブと試験開始の1時間前には、フェリチュタスアレーナの控室に入って置くコトを、お勧めするよ」
 天空教室を出て、玄関へと歩き始める久慈樹社長。

「チョット、待ちなさいよ。試験をやるのがいつかを、まだ聞いてないわ」
 ユミアも、玄関まで社長を追いかけて行く。

「ライブ中に、国語、数学、理科、社会、英語の5科目すべてのテストを行う。つまり5時間のライブのほぼ全てが、テスト時間となるね」
「ハア、なにを言っているの。だったらいつ、ライブをやるのよ!」

「それは、キミの想像に任せるよ」
 久慈樹 瑞葉は、ユミアの追及を振り切るように、玄関ドアを閉めた。

「まったく意味が、解らないわ。アイツったら、なにを考えてるのかしら」
「ユミアに解らないんだったら、アタシにはさっぱりだよ」
「せ、先生は、解かったですか?」

「スマンな、ボクもさっぱりだ。だけど久慈樹社長のコトだ。なにかとてつも無い計画を、用意しているんじゃないかな」

「それくらいの予想なら、誰だってできそうね」
 玄関周りに集まっていたボクたちが振り向くと、クララが壁に背をあずけて立っている。

「先生に対して、失礼だぞ。どうせクララだって、なにも解らないんだろ」
「そうでも無いわよ、レノン。これでも、将来はマスコミ関連に進む予定なのだからね」
「だったらなにが解かったか、言ってみろよ」

「久慈樹社長は、どうやら試験がダメだったら、天空教室を解散させるつもりのようね」
 壁から身体を離し、腕を組むクララ。
深紅の長いポニーテールが、背中で揺れている。

「な、なんですって。そんな権利は……アイツに……」
「そう、あるのよ。元々わたし達は、久慈樹社長に雇われた道化なのだから」

「そ、そんな……」
 クララの言葉を聞き、顔を蒼ざめるユミア。

「ヒ、酷いよ。みんなと別れるだなんて、勝手過ぎる」
「もっとみんなと、一緒に居たいですゥ」

「ムリな話ね。唯一、それを回避できるとすれば……」

「全員が試験で、及第点を取るしか無いってコトか」
 ボクの脳裏にも、絶望という感覚がよぎった。

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