ラノベブログDA王

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この世界から先生は要らなくなりました。   第10章・第04話

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ゲームのルール

「ねえ、先生。ハバツなんちゃらって、なんだ?」
 ライオンのタテガミのような金髪の少女が、問いかけて来た。

「派閥闘争だよ、レノン。会社内で権力を持った人間が、より権力を強めるために自分と意見の合う人間を周りに置き、派閥という名のグループを作っるんだ」

「ああ、女子がよくやっているヤツか」
「お前だって、女子だろう」
「アタシは、そう言うの興味無かったかんな。んで、なんでそんなコトすんだ?」

「1言で言えば、対立する派閥との争いに勝って、出世がしたいんじゃないのか。派閥のリーダーともなれば、それなりの役職には就いているだろうが、課長、部長、専務と登り詰めて行って、いずれは次期社長の椅子を狙うんだと思う」

「でもそんなの、アメリカの企業だってあるコトじゃない」
「上を目指すって、イイことだモンな。なにが、問題なのさ?」
 珍しく、ユミアとレノンが連帯する。

「確かにキャリアアップは、アメリカ企業だって頻繁に行われている」
「むしろ日本よりも、競争が激しいくらいですからね」

「だが日本企業の多くは、大した経営能力も持たないのに、自分の派閥を作るのだけは得意な人間が、トップをやっているのさ」

 それが、久慈樹社長の答えだった。

「そ、それだと、なにがマズいんだ?」
「経営能力の無い人間が、社長をやっている企業が上手く行くと思うか?」
「あ、そうか」

 レノンは、やっと納得する。

「かつての日本教育は、上司に逆らわない従順な下僕(しもべ)を大量生産するモノだった。日本が1大生産拠点だったバブル時代は、それで上手く行ったのだろう。だが、時代は変わった。多くの工場は海外へと移転し、その跡地にはショッピングモールが建っている」

「要するに、工場で働く人たちが必要なくなったってコト?」
「極端に言えば、そうだ。日本企業の販売する商品の多くは、今や海外で造られている。日本を代表するゲーム機も、日本で造られてはいないからな」

「ええ、そうなの!」
「し、知らなかったですウ」

「でもそれって、アメリカの企業だって同じじゃない!」
 ボクも知らなかったが、デジタルに詳しいユミアは知っていた。

「その通りだよ、ユミア。アメリカ企業の多くは、製造に関する工場を持たず、商品の企画開発のみを行い、中国やベトナムの工場で作らせている」

「でも日本の教育は、まだかつての工場中心の働き方に即した人材を、生み出そうとしていると言うコトですか?」

「ゲームのルールが変わっているのに、それに気付かない連中がそれを阻害するんだよ、この国は」
 久慈樹社長の眼が、先ほどよりも辛らつにボクの顔を捉えている。

「古い時代の教育の、象徴が……ボクってコトですか?」

「その通りだよ」
 久慈樹 瑞葉は、天使の様にほほ笑んだ。

「そう言えば、試験会場を伝えてなかったね。会場は、フェリチュタスアレーナだ」

「な、なんですって!」
「ライブ会場が、試験会場だっての?」
「ファンの人も、居るのですよねェ?」

「モチロンさ。試験については、基本的にそれぞれの年齢に合った学力レベルのモノを、用意してある」
「ライブが終わったその場で、試験を行うってコトですか!」

「イヤ。キミの生徒たちであるアイドルたちの、ライブの最中だよ。元々天空教室の授業風景は、ライブで動画配信していたんだ。問題はあるまい」

「問題、大アリよ。ライブ会場でライブの真っ只中で試験なんてしたら、みんな本来の実力が発揮できるワケがないじゃない」

「それは、ボクが知ったコトでな無いよ」
「ア、アンタってヤツはァ!」

「事前に、試験会場がどこかの確認を怠った、こちらの責任と言うコトですか」
「そうさ。中国企業に技術だけ盗まれて、元は自分たちの技術を使った商品を、技術を盗んだ企業に作って貰っている企業もあるくらいだからね」

 久慈樹社長のテストは、ボクに向けたものでもあって、それは当の昔に始まっていた。

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