ゲーム内の恋バナ
「でもさ。いくらユミアでも、勝てそうなギルドを選んで入ってたんでしょ?」
「そこに所属するのも、大変な気はするんだケド?」
カトルとルクスの双子姉妹は、マークに疑問の視線を投げかけた。
「That's right(その通り)。かな~り、苦労しましたね。でもリサーチして、人の良いギルドマスターのトコ、なんとか入れて貰えたよ」
「リサーチまでして、スゴイね、マーク先生」
「イエス、レノン。調査(リサーチ)、ワタシの得意分野ね。ワタシ、レアな剣は持ってなかったケド、レアなアイテム情報、いっぱい調べたね」
「そう言えば、最初はそうだったわね。メルトが色んな情報くれるモンだから、良い剣をたくさん手に入れられたわ」
「それから、一緒にパーティー組んで冒険しました。ユーミリアは、メチャクチャ強かったね」
「メルトだって、ドンドン強くなって行ったじゃない。上位プレーヤーとも、遜色なく戦えるくらいに、アクションも装備も充実してたわ」
「ユーミリアのお陰ですよ。それから彼女とは、チャットで会話するようになりました」
「お互い、リアルで色々あったしね」
ため息を吐きながらも、微笑むユミア。
「チャットって、ボイチャ?」
「ボイチャ? なにソレ?」
「ボイスチャットのコトだよ、レノン」
カトルとルクスが、IT 知識の乏しい金髪ライオンヘアの少女に説明した。
「わたし、ボイチャ切ってたから。小学生だってバレちゃうし」
「だよねえ。ボクたちがMMO始めたのも、中学生の年齢になってからだし」
「小学校低学年でトップランカーって、どんな生活送ってたんだ」
「だから引き籠ってたのよ。もっと早くに教民法が施行されてれば、学校行かなくったってなんの問題も無かったのに」
「困った子だわね。やはり学校と言う場所も、ある程度必要じゃないかしら」
「ユミアの過去を聞いてると、そう思いますね」
ライアとメリーの真面目少女2人が、肩を竦め顔を見合わす。
「それでチャットで、どんな話したの?」
「最初は他愛のない話だったケド、そのウチ自分の素性も話すようになって、2人とも引き籠ってるのが解ったわ。それから好きなゲームとかアニメの話とか、色々としたのよ」
「実は、鉄道経営シミュレーターも、ユーミリアに教えて貰ったんですよ」
「マーク先生が投資を始めるきっかけになった、ゲームだよね?」
「それじゃ、マーク先生の投資の師匠は、ユミアってコト!?」
「ち、違うわよ、カトル、ルクス。わたしは推しのゲームを奨めただけで……」
「その通りです、ボーイッシュな双子姉妹。彼女は、ワタシが投資に向いてるって言ってくれました」
「それはゲーム内での話でしょ。メルトったらそのゲームで、株や土地を転がして資金を何百倍にもしちゃうんだから!」
「ワタシ、ゲームで投資の面白さ知って目覚めたね。それから、リアルでも投資始めたよ」
「マーク先生は、投資家でもあるんですか?」
「イエス、ライア。収入面でなら、そっちが本業ね」
「ちなみにィ……資産はどれくらい持ってるんスかねえ?」
琥珀色の三つ編みお下げの少女が、マーク・メルテザッカーに問いかける。
「Lady, what's your name?(お嬢さん、お名前は?)」
「アタシは、天棲 照観屡(あます てみる)っス。テミルって呼んでくれっス」
「資産は、それなりにね。テミルも、投資に興味ある?」
「ウチは実家が、不動産屋なんスよ。プニプニ不動産って言うっス」
「オー、不動産もワタシ好きね」
「だったら、良い物件を紹介するっスよ。とびっきりのマンションがあるっス」
「もー、商売なら後にして」
「今は、マーク先生とユミアさんの話が聞きたい!」
「わ、わかったっスから。では、スマホに物件の情報送っとくッス」
「いいから早く、あっち行って!」
アステやメルリたち、7人のテニスサークルの少女たちに押し出され、退場するテミル。
「話が逸れましたね。それからボク……メルトとユーミリアの関係は、1年くらい続きました」
「それからどうなったんですか!?」
「も、もしかして!」
「イエス。ワタシはユーミリアに、告白しました」
マークの言葉を聞き、ゲーム内の恋バナに興味津々の14の瞳が潤んだ。
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