ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

ある意味勇者の魔王征伐~第11章・17話

f:id:eitihinomoto:20190914042011p:plain

勇者とは……

「ウフフ。わたくしの強さが、お解りいただけたかしら?」
 魔王ガラ・ティアが、マゼンタ色の髪を跳ね上げながら言った。

「なに寝ぼけてやがる。そんなモンは強さじゃねえ。ただの暴走した力だ」
 珊瑚色の槍で、全身の筋肉にダメージを負ったクーレマンスも意地で言い返す。

「アナタこそ勘違いなさっているのではなくて。力とは、筋肉などではありませんコトよ?」
「グ、グアオオオォォーーア!?」
 ガラ・ティアの槍が、再び筋肉男を弾き飛ばした。

「アレ……ガラ・ティア。良い獲物見つけてる」
「ねえねえ、ボクたちにも戦わせてよォ」
 すると、市場に流れ込んでいる海水の瀧から、2体の魔王が現れる。

「ま、また魔王が現れた。しかも、2体も!?」
 岩陰から、舞人が叫んだ。

「オレは、ベク・ガル。テメー、オレが喰う!」
 2体のうち、藍色の髪の魔王が言った。

 ベクは、褐色の肌の痩せた少年といった風体で、トラの毛皮を着ている。
キザギザの歯を持ち、眼は交戦的だ。
手にした藍色の槍は、3本の鉤爪が付いている。

「イヤイヤ、ここはこのボク……スプラ・トゥリーの出番だよ」
 緑色のショートヘアに、半透明の白いコートを来た少女が言った。

 スプラが着ているコートは、尖ったフードに三角のヒレが付き、下部は無数の触手になっている。
コートの下には、ライム色のスカート付きワンピース水着を着ていた。
手にした緑色の槍は、先端が傘の様になっている。

「ア、アナタたちの助けなど、必要ありませんわ」
「獲物横取り……とうぜん!」
「ま、早いモノ勝ちってねー」

 2体の魔王が、ガラ・ティアの横をすり抜け、クーレマンスに襲い掛かった。

「リーセシル、リーフレア。ここはオレさまに任せて、王子の元に行ってやれ!」
 筋肉の鎧を纏った巨漢が、双子司祭に向かって怒鳴った。

「ハア。この状況で、なに言ってるの。バカなの!?」
「わたし達がいければ、回復(ヒーリング)も出来ないんですよ!」

「ンなことァ解ってる。だが、王子のコトを考えろ。アイツは、なんの武器も持たねェで、魔王と対峙してるんだぞ」

「それは……そうだケド」
「でも、1人で3体の魔王を相手にするだなんて無茶です!」

 その間にもクーレマンスは、魔王たちの繰り出す槍を受ける。

「オレの槍……『クリ・シュナ』を喰らえ!」
 ベク・ガルの槍は無数のサメの顎を呼び寄せ、鋭い牙が何重にも生えた顎は筋肉を裂きえぐり取った。

「ガハアア!」
 ヒザを付き、崩れる巨漢。

「クーレマンス!?」
「今、回復を!」
「い、いいから行け。女王を倒されたら、この街はお終いなんだろ!」

「今度は、ボクの番かなぁ。ボクの槍『アス・ワン』で、ゆっくり絞め殺してあげるよ」
 スプラの放った緑色の槍は、傘の様な先端が大きく展開して、無数の触手となって大男を締め上げる。

「グオォハアッ!?」
 屈強な筋肉でも振り解けない触手が、内臓をも圧迫して血を吐くクーレマンス。

「そ、それにオレは、1人じゃねェぜ。そこの岩陰に、蒼き髪の勇者さまも居るだろうがよ」

「え……!?」
 武器を無力化されている舞人は、焦った。

「でも、今の舞人くんは、剣を使えないんだよ!」
「そうです。今の舞人さんでは、戦力には……」

「いいから行け。こっちは大丈夫っつってんだろうが!!」
 クーレマンスは、大喰剣ヴォルガ・ネルガを振るって、何とかスプラの触手を振り解いた。

「ボクの触手を、振り解いただってェ!?」
「オレの攻撃で、倒れないのもオカシイ」
 力任せの脳筋技に、唖然とする2体の魔王。

「舞人よ。そんなトコに隠れてねェで、出て来て戦えよ」
 背中を向けたまま、後ろの少年に語りかける大男。

「で、でもボクは、ジェネティキャリパーを無効化されちゃって、戦う力は……」

「なあ、舞人。お前は、『勇者』だろ?」

「い、今のボクは、勇者なんかじゃ……」
 思わず顔を背ける、蒼い髪の少年。

「勇者ってのはよォ。強い剣を持ってるから、勇者なのか。違うだろ?」

「あ……」
 少年の心に、憧れていた赤い髪の英雄の姿が浮かぶ。

「勇者ってのはな。誰にも負けない勇気を持ってるから、勇者なんだろ!」

 巨漢の言葉が、少年の心を大きく揺さぶった。

 前へ   目次   次へ