廃ゲーマー
「な、なな……アンタ、なに言って……!?」
突然のプロポーズに、真っ赤になった顔を両手で抱えながら動揺する、ユミア。
「ね、ねえねえ、ユミア。マーク先生と、どんなゲームやってたの?」
「確か、アソセシア戦記って言ってたわよね」
レノンとメリーが、好奇心に満ちた瞳を栗毛の少女に向ける。
「アソセシア戦記ってMMOの中じゃ、かなりアクション要素が強いゲームだったよね」
「うん。プレーヤーは全員騎士で、騎士の種類によって特殊能力を持ってるんだ」
互いに知っている情報を確認し合う、カトルとルクス。
「アラ。お二人は、ゲームの知識が豊富なんですわね?」
「まあね、アロア。ボクがちょっと病弱だから、あまり外で激しく遊んだり出来なくてね……」
「だから家でカトルと一緒に、ゲームとかしてたんだよ」
「オー、カトルにルクス。貴女たちもアソセシア戦記、ご存じでしたか」
「はい。エーシーはかなりのゲーマー向けだし、実際にやったコトは無いケド」
「他のMMOは、それなりにやってましたから」
「エーシーって?」
「アソセシア・クロニクル……アルファベットの頭文字を取った、アソセシア戦記の俗称ね」
レノンの疑問を、ユミア自身が答えた。
「アソセシア戦記は、MMOの中でもかなり特殊でね。基本無料で遊べて、防具や見た目アイテムのみの課金で、剣に関してはゲーム内ショップで買うか、ドロップや宝箱で集めるのよ」
「アソセシア戦記、武器が剣しかありませ~ん。でも、おかしな特殊能力持った剣ばかり。これを集めるのが、とてもオモシロいね」
「武器が剣のみで、プレーヤーが全員騎士だなんて……確かに変わってるわね」
「イエス、メリー。好き嫌いが、ハッキリ別れるゲームよ」
「まあ確かに、やってる連中はMMO上級者ばかりで初心者煽るし、しかもアクションスキルも必須だから、最後は過疎ってたわね」
「ゲームの中じゃ、課金よりもとにかく剣を集めたコレクター、尊敬されるね。普通のプレイヤーが絶対手に入れられない剣を、何百本も持っていたのが……ユーミリア」
「フッフッフ、このわたしよ!」
マークに持ち上げられて、すっかりその気になってるユミア。
「ねえ、それってナニがスゴイの。アタシには、ぜんぜっん解んない」
「まあ、そのゲームをやってる人同士じゃないと、理解できないよな」
レノンとタリアの粗暴娘コンビが、ユミアを現実へと引き戻す。
「う、うっさい。解ってるわよ、そんなコトくらい」
「でも当時のワタシは、ユーミリア……彼女をトテモ尊敬してました。その頃はまだ、ロクな剣も持って無かったですからね」
「だけどさ。その頃のユミアって、まだ小学生なんだよね?」
「ゲーム内じゃ、プレーヤーの年齢なんて解らないんだよ、レノン」
「ネカマも多いし。かわいい女のコと思って話しかけたら、中身オッサンだったとか」
「ウゲ、そ、そうなの。なんだかカオスな世界だなあ」
金髪のボーイッシュな双子の言葉に、衝撃を受けるレノン。
「アソセシア戦記のプレーヤーの中で、ユーミリアの名前知らない者いなかったね。だからワタシ、まず彼女の居るギルド入るコト目指した」
「でもさ。トッププレーヤーが所属するギルドって、入るのけっこう大変だよね」
「そうそう。装備やプレーヤースキルとか求められるし、敷居が高いっていうか」
「そんなコト無いわよ、カトル、ルクス。だってわたし、ギルドころころ変えてたし」
「ええ、そうなの!」
「でも、どうして?」
「ギルド戦って、そんなに興味無かったし、欲しい剣がある時だけどこかのギルドに所属して、イベント終わるとさっさと抜けちゃってたからね」
「でも、ユーミリアが所属したギルドは、必ず目当ての剣をゲットしてました。だからギルド戦の前になると、彼女の争奪戦が始まるのですよ」
「アハハ……」
「それはまた……」
カトルとルクスのみならず、ユミアの廃ゲーマーぶりに天空教室中が、ドン引きしていた。
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