この……バカライオンッ!!
「ど、どうして先生を、寝室に入れたのですか!!?」
ピンク色の髪を宝石で飾った少女が、12台の大きなベッドが円形に並ぶ寝室で怒りをぶちまけた。
「だってさ、ライア。教室の机で寝てるみんなを、風邪ひくから寝室で寝かせるって先生が言い出したんだ。入れなきゃ、運べないジャン」
金髪たてがみ少女が、ライアに対して反論する。
「た、確かにアイドル活動の疲れで、机で寝てしまったのはこちらの落ち度です。だからと言って、こんな有り様の寝室に先生を……ああ!!」
ライアは、下着や生理用品の散らばった自分のベッドに突っ伏して、絶望した。
「これくらいのベッドなら、普通ジャン。ねえ、ユミア」
「そうね。ウチもこんなモンだったわ」
あっけらかんとした顔で同意する、ユミア。
「レ、レノンさんなら、普通かも知れないですケド……」
「わたし達やお姉さま方は、普段はキレイに使っていたのよ」
「こんなに荒れちゃったのは、アイドル活動のせいなんだからね!」
アステやメルリ、エレトらテニスサークルの7人の少女たちが言った。
「それは言いワケに過ぎないぞ、お前たち。アイドルになるってのは、とれも大変なコトなんだ。生半可な覚悟じゃ、やって行けない。これで、少しはわかっただろう?」
妹のような存在の7人の少女を、諭すタリア。
「偉そうに、言ってるケドさ。タリアもみんなとパンツ丸出しで、寝てたよ」
「な、なにィ!?」
親友であり悪友でもあるレノンに言われ、顔が真っ赤になるタリア。
「ウ、ウチらは、どうやったんや!?」
「そ、そうです。キア姉さんやミアとリアはともかく、わたしは……」
「シアも含めて、全員パンツ丸見えだったよ」
「ボクたちは、そうでも無かったんじゃない?」
「レアラとピオラの付き添いだったから、そんなに疲れて無いし」
カトルとルクスも、寝ていた自分たちの様子をレノンに聞く。
「わ、わたくし達は、その様なはしたない寝相ではありませんわ」
「そ、そうですわ。芸能活動は、今に始まったコトではありませんもの」
アロアとメロエは、自分たちの寝相に自信を持っていた。
「4人とも、可愛いお尻が丸見えだったよ」
「うわァん!」「ウソだァ!」
「そ、そんなハズは……」「あり得ませんわ」
「アロアなんか、脚ガバァって開いて寝てたし」
「ええッ、ウソです。ウソだと、仰ってください!」
必死にレノンを揺さぶる、アロア。
「もしかして、アタシらもっスか?」
「わ、わたしは、神に仕える身ですから、寝相は……」
「わたしは、合理的に考えて寝相は良い方よ」
「テミルもエリアも、メリーも全員、アウトォ。みんなのパンツ、可愛かったなァ」
はしゃぐレノンと、落ち込む3人。
「先生も、顔を背けるの大変そうだったよ」
「だったらナゼ、布団をかけてくれなかったんです!」
メリーが、言った。
「レノンはともかく、ユミアやアリスが居てくれたんスよね!?」
「落ち着いて、テミル。もちろんわたし達は、布団をかけたわ。ねえ、アリス」
「は、はい。がんばって、かけたのですゥ。でも……」
「どうして布団をかけてくれたのに、わたし達の下着が丸見えだったのですか?」
エリアが、天使のような微笑みを浮かべながら問いかける。
「レノンが、片っ端から引っぺがして行ったのよ」
「アレ、ユミア……それ、バラしちゃう?」
恐る恐る、クラスメイトの方に目を向けるレノン。
「この……バカライオンッ!!!!」
若き男性教師に下着を見られた、乙女たちの怒りが爆発した。
夜がふけ、少女たちは眠りに付く。
双子姉妹たちは互いに身を寄せ合って、1つのベッドで眠る。
キア達4人姉妹も1つのベッドで眠り、タリアのベッドには7人の少女たちが集まっていた。
日が登り、超高層マンションの最上階にある天空教室にも、朝日が差し込む。
ボクは天に登るエレベーターに乗って、彼女たちの集う教室へと向かった。
「おや、今日はまだ、誰も起きてないのか。やけに静かだな」
不審に思いながらも、教室に足を踏み入れる。
「ぜ、ぜんじぇえ……」
「ン、その声はレノンか。他のみん……なァッ!?」
ボクは思わず、寝室の扉の前でうずくまる少女の姿に絶句する。
「お、お前、その格好はどうして……!?」
「みんなが……みんなが酷いんだよォ!!」
一糸纏わぬ金髪たてがみ少女が、いきなりボクに抱きついて来た。
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