ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第06章・第16話

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寄宝アレキサンドライト

「……んで、どうすんの、ユミア?」
「どうすんのって、なにが?」
 主語の無いレノンの質問に、栗毛の少女が聞き返す。

「マーク先生のプロポーズ、やっぱ1秒でOKしちゃう?」

「す、するワケないでしょ!!!」
 今度は、1秒で拒否した。

「ゲームの中じゃあるまいし、簡単に決められないわ。それに当時は子供だったから、結婚の意味なんて深く考えて無かったのよ……」
 リンゴみたいに紅く染まった頬を両手で隠し、ユミアは必死に反論をしている。

「うおお、ユミアがまともなコト言った!」
「失礼ね。わたしは、普段からまともよ!」

 他の生徒たちの表情から察するに、レノンの意見の方が優勢のようだ。

「オ~、それはとても残念で~す」
 両手を広げたオーバーアクションで、哀しみを表現するマーク・メルテザッカー。

「ゴ、ゴメンなさい、マーク……」
「OK、想定内ね」

「ええ!?」
 驚きの声を上げる、ユミア。

「随分と、あっさりしてらっしゃいますね」
「実は、本気や無かったんやないか?」

「モチロン本気よ、キア。でもライア、ワタシ投資家ね。投資家、リスクヘッジするよ」

「リスクヘッジ……ってなんや?」
「一般的には、危険回避みたいな意味ね」
「投資でも同じよ、ライア。リスクを抑えるのが、投資の基本だからね」

「へー、そうなんだ。でも、どうやってリスクを回避すんの?」
「良い質問ね、レノン。投資した株と逆の値動きをする株を買ったり、プットオプションつかったり、手段はたくさんあるね」

「投資は詳しくありませんが、言い換えれば保険をかけたのですね」
 ウェーブのかかった赤いポニーテールの少女が、棘のある言葉へと変換する。

「May I have your……(アナタの名前を……)」
「赤柴 紅蘭蘭(あかし くらら)です。そう言うコトで、宜しいですか?」

「イエス、クララ。そうなりますね」
「では、マーク先生は一体、どんな保険をかけたのでしょうか?」

「簡単な話ね。短期でダメなら、中・長期戦略よ。彼女の心がワタシに向くまで、ジックリと待つね」
「本当でしょうか。最初からプロポーズは、ジョークだったと言うコトはありませんか?」

「え……」
 ユミアの顔が、一瞬引きつる。

「ジョークじゃ無いよ」
「それはどうでしょう。マーク先生は資産家であり、昔はともかく現在はガールフレンドも大勢いるのですよね。ユミアに対しても、ガールフレンドの1人として考えていらっしゃるのではありませんか?」

「ええ、そうなの!?」
「ユミアも、大勢いるガールフレンドの1人ってワケか」
「資産家の殿方に、在りがちな思考ですわ」

「仕方ない……これ、見るね」
 クララに問い詰められたマークは、白いスーツの懐から蒼い小さな箱を取り出し開けた。

「これって……まさか!?」
「ゆ、指輪。銀色の結婚指輪だ!?」
「しかも、メッチャ綺麗な宝石がいっぱいやで!」

 天空教室の少女たちの瞳が、小さな箱の中身に集中する。
設置された撮影用のカメラも、美しい宝石の指輪に向けられた。

「指輪はプラチナ。中央の石の周りに、0.5カラットのダイヤが12個配されておりますわ」
「ええ、メロエさん。ですが中央の紫色の石は、アメジスト……いえ、この変色具合はもしや!?」

「寄宝アレキサンドライト……光によって、色が変化する宝石ね」
 ユミアが答える。

「へえ、変った宝石もあるんだな」
「でも、ダイヤモンドの方が、高価なんじゃないのか?」
 レノンとタリアが、顔を見合わせる。

「まあ、色々とありましてね。これで信じて貰えましたか、クララ」
「で、ですがどうして、初めから指輪を見せなかったんですか?」
 質問を被せて、自らの謝罪ターンを飛ばした。

「ユミアは、まだ高校生の年齢ね。流石にチョット、重いのかもと思ったよ」
「結婚指輪だなんって、チョットどころじゃ無くてメチャクチャ重いわよ!」

「でもユミア。貴女はマーク先生を、嫌いと言うワケでは無いのでしょう?」
「え、ええ。メルトとは一緒に居て楽しかったし、良いヤツだわ」
 クララは、意図的にユミアに答えさせる。

「そのヘンにして置いてくれ、クララ。ただでさえ大変なコトになっているのに、これ以上騒ぎを大きくしないで欲しい」
 ボクは言った。

 ユークリッターの映し出すワードの恒星系は、マークとユミアの話題で持ち切りだったし、マンションを囲む外のマスコミたちの喧騒は、激しさを増していたからだ。

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