ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

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この世界から先生は要らなくなりました。   第06章・第15話

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天才数学少女

「ど、どんな感じの、告白だったのかな?」
「ゲーム内とは言え、いきなり結婚してくれとは、言いにくいんじゃ……」
 カトルとルクスの双子姉妹が、頬を赤らめながら質問した。

「言いましたよ。ユーミリア、ボクと結婚してください……って」
 マーク・メルテザッカーは、爽やかな笑顔で答える。

「だ、だだ、大胆だなあ。顔が見えないと、そんなコトも言えちゃうのか!?」
「でも、いきなり言われてもな。ユミアも、すんなりOKできる問題じゃ……」
 普段はガサツなレノンとタリアも、女のコな表情でユミアの顔を覗き込んだ。

「ん、一瞬でオーケーしたケド?」
 あっけらかんと答える、ユミア。

「ええ、そうなのッ!?」
「マ、マジか!」

「彼女のタイピングは、当時から凄まじい速さだったね。1秒とかからずに返事が返って来た時には、流石のボクも驚いたよ」

「結婚のプロポーズを、わずか1秒で決断するなんて、あり得ないわ!?」
 合理主義を自負するメリーですら、その決断力に舌を巻く。

「だってゲームだし、結婚ってなんか素敵じゃない」
「ユミアも当時はまだ小学生の低学年だったワケだから、子供っぽく決めたのね」
 ライアは真相を理解し、ホッとため息を付いた。

「ちゅうコトはや。マーク先生は小学校低学年の女のコに、結婚のプロポーズをしたんやな?」
「ほんまキア姉の言うや。ウチらよりも子供やんけ!」
「マーク先生は、めっちゃロリコンなんやな!」

 真っ赤なショートヘアのロックバンド少女であるキアと、ミアとリアの小学生双子姉妹が、悪戯な目をイケメン英語教師に向ける。

「……ちょ、ちょっと。姉と妹が、スミマセン」
 4姉妹の中で唯一の常識人であるシアが、3つの口を塞ぎながら申し訳無さそうに謝った。

「後々知って、流石のボクも唖然としたよ。彼女は文字チャットで、ボクによくアドバイスをくれてたし、てっきり年上の女性かと思ってました」

「そう見えるように、頑張って演じてたワケだし。でも一緒の家に住み始めて、流石にバレちゃった」
「い、一緒の家ェ。だって、ゲームの中でしょ?」
「ゲーム内にプライベート空間があって、結婚するとそこに家を持てるシステムだったのよ」

「ボクたちの新居は、真っ白な家でした。今でも覚えてま~す」
「そうね。費用は全部メルトが出してくれたし、助かったわ」

「その頃には、投資を始めてからかなり経っていて、資産も増えてたね。普通の中学生よりは、お金たくさん持ってたと思うよ」

「お金って、そんなに簡単に増やせるモノなの?」
「簡単じゃないね、レノン。いっぱい勉強したし、いっぱい失敗もしたよ。一日で1000万、消し飛んだ時はチョット落ち込んだね」

「ふぎゃあ。1000万無くなったら、アタシなら落ち込むどころか絶望だよォ」
「よしよし。所詮ウチらには、縁遠い世界の話ってワケだ」
 親友の頭を撫で慰める、パーカー姿の少女。

「そんなコトは、ありませんよ、タリア。投資、誰にだって出来ま~す」
「え、でも……」
「わたし、投資のやり方も教えに来ました。興味あったら、ボクの資産運用の授業出て下さ~い」

「し、資産運用ですか。興味ありますわね、メロエさん」
「はい、アロアお姉さま。投資で資金を運用し増やすのは、現在のトレンドですわ」
 かつては裕福な芸能一家に育っちながら、家や家族を失った2人も興味を示す。

「でも、投資は自己責任。上がるコトもあれば、下がるコトもあるね。信用買い、信用売りオススメしない。株はギャンブルじゃない。コツコツ増やして行く、これが大事……ユーミリアの受け売りだケドね」

「き、肝に銘じて……え、ユミアさんの受け売りですって?」
「どう言うコトですの?」

「株が上がったり下がったりする、確率を計算してみたのよ。メルトが持ってたデータを元にね。そしたらギャンブルみたいな投資をしなくたって、資産は増やせるって結論に行き着いたワケ」

「そのときのアナタって、小学低学年なワケよね?」
「それで株価の、確率を計算しちゃったの?」

「そうよ、ライア、メリー。株価が上がって、更に上がる確率は必然的に低くなるわ。逆もしかりね。つまり確率論で、上がる確率の高い部分から下がる確率の高い部分だけで運用した方が、リスクを取って少ない確率に賭けるより効率的に資産を増やせるのよ」

「言われれば、なんとなくは解るケド……」
「アナタが高校生にして数学教師をやっている意味が、本当の意味で理解できたわ」
 ライアとメリーは、ユミアの天才性にこのとき始めて気付いた。

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