ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第10章・第37話

藤原 光理(ふじわら ヒカリ)

 ミニスターⅠ(ファースト)コアを構成する、4人のメンバーによるソロが終わる頃には、ガラスの塔のカウントダウンは00:00を刻んでいた。

「お疲れ、サツキ。それにみんなも、良いステージだったわ」
 舞台裏に戻って来た4人に、労(ねぎら)いの言葉をかけるミカド。

「ありがとう、ミカド。今までの全てを、出し切ったつもりよ。後は、観客をどれだけファンに出来たかだケド……」
 不安そうに、客席を振り返る4人。

「心配など、必要ないだろう。ミニスターⅠ(ファースト)コアのアルバムも、キミたちのソロ曲も、かなりの売り上げを叩き出しているよ」
 スマホに入れたユークリッターを見せる、久慈樹社長。

「ホントだ。アルバム、メッチャ売れてるよ」
「オレらのシングルも、イイ感じだぜ」
「へェ、ありがたや~、ありがたや~」

 コズエ、アキラ、トウカの3人も、スマホに見入りながら喜んでいる。

「彼女たちにとっても、今日はアイドルとしての試験なんだ。お前たちにとっても……」
 ガラスの塔の中では、国語のテストが終わっていた。

 答案用紙が、昔ながらの方法で回収されて行く映像が、ガラスの塔のパネルに映し出される。
50分のテストが終わって、ボクの生徒たちは10分間の休憩に入った。

 同時に客席にも、10分間のインターバルが設けられる。
ドーム会場の入り口には、トイレや軽食などを目的に、人が長蛇の列を成していた。

「ヤレヤレ。普段ならレアラとピオラが、完全なるスケジュール管理をしてくれるのだが、彼女たちまで試験に参加させたのは失敗だったよ」
 休息どころでは無い、久慈樹社長。

「どうするんです。テストは、あと4教科も残ってますが」
「う、うるさいな。そんなコトは、キミに言われずともわかっている」
 ボクにそう吐き捨てると、久慈樹社長はミカドたちの方へと向かって行った。

「素晴らしいステージだったよ、サツキ、コズエ、アキラ、トウカ。ところで、ミカド。キミたちも、ソロの楽曲があったりするんじゃないか?」

「もちろん、ありますわ。ですが、歌う必要は無いでしょう」
「そこをなんとか、頼めないだろうか」

「ですから、わたし達が歌う必要が無いんです。ミニスターⅠ(ファースト)コアのステージが終わっても、次は……」
 ミカドが、再びステージの奥に控える、冥府のアイドル(ベルセ・ポリナー)たちに目をやる。

「次は、余(よ)らの番じゃろうて」
 集団から舞い出たのは、藤色の長い髪を背中で束ねた少女だった。

「なるホド。次は、キミたちが歌ってくれるか」
 胸を撫で降ろす、久慈樹社長。

「余の名前どころか、ユニット名すらわからんのかえ?」
 不機嫌そうな少女は、黒い着物の袖(そで)で口元を隠した。
袖口は、12色の重ね着になっている。

「スマンな。今日のゲリラライブに関しては、スタッフに任せ切りだったのさ」
「丸投げと、言ってはどうかの?」
 チクリと返す、黒き着物の少女。

「余の名は、藤原 光理(ふじわら ヒカリ)。ミニスターⅡ(セカンド)コアのリーダーにして、アガリアレプトを司(つかさど)る冥府のアイドルじゃ」

「ミニスターには、Ⅱ(セカンド)コアもあったのか」
「ヤレヤレ、それでも主催者かえ?」

 ヒカリは、ミカドやサツキに比べてかなり小柄で、小柄なコズエよりも小さかった。
頭には背の低さを補うように、長い烏帽子(えぼし)を被っていて、ミニスカートのお尻側には、長い裳(も)を引きずっている。

「中々に、手厳しいな。ところでヒカリ。次はキミたち、ミニスターⅡ(セカンド)コアが歌ってくれるんだろう?」

「余は、アイドルじゃ。アイドルが、舞台で舞わんでどうする」
 藤色の大垂髪(おすべらかし)が、軽やかに宙を舞った。

 ガラスの塔に、艶やかな12色の光が灯り、50:00のカウントダウンが再び始まる。

「さあ、皆の衆。休息は終わりぞ。余らの舞台(ステージ)、愉しんで参れ」
 平安の雅(みやび)な音楽が流れる中、新たなるステージが始まった。

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