12+1
次々に、天空教室を模したガラスの塔へと入って行く、生徒たち。
「ミア、リア、落ち付いて考えるんやで。アンタらは、やればできるコや」
「シア姉、それアホのコに言うヤツやで」
「関西弁出てもうてるし、シア姉こそ落ち着きィ」
ミアとリアの双子姉妹に発破をかけようとして、逆にかけられるシア。
「ここまで来たら、全力でやるだけやで。チョッキン・ナーのライブくらいの熱さで行くで!」
「はい、キア姉さん」
普段はヤンチャな双子の面倒を、シアに任せているキアだが、締めるときは締める。
「うわァ、アタシも緊張して来たッスよ。もっと、勉強して置けばよかったッス」
ぷにぷに不動産の看板娘であるテミルが、弱音を吐いた。
「今さら、ジタバタしたところでムダよ。弱気になったところで、結果が変わるワケじゃないのだから」
さそり座を象徴するクララが、言葉の針でチクリと刺す。
「わかってるッスよ、そんなの。相変わらず、言葉にトゲがあるッスね!」
「マスコミ関連に就職を目指す者としては、誉め言葉だわ」
「まったく、クララにはイイ物件紹介してあげないッス」
てんびん座を象徴する少女は、プリプリと怒りながらガラスの塔の扉をくぐり抜けた。
怒ったコトで、緊張がほぐれたようにも見える。
「タリアお姉様、わたしもメチャ不安です」
「だって、アイドル活動にかまけて、ほとんど勉強してないんだモン」
かつてはテニススクールに所属していた7人の少女たちが、タリアに不安そうな顔を向けた。
「確かにな。だけどプロボクサーだって、万全の体調で試合に臨(のぞ)めるワケじゃない。減量に苦しんだ身体で、結果を出さなきゃならないんだ」
ボクサーを目指した父を亡くした、タリアの不器用な言葉。
「そ、そうだね、全力は尽くさないとだよ!」
「ボクも、頑張る!」
「ア、アチシもォ!」
プレアデス星団の名を冠するアイドルグループの、少女たちの瞳に輝きが戻る。
「やはりボクの生徒は、みんな優秀だ。ボクが居なくとも、勝手に問題を解決してしまう」
ガラスの塔を見上げながら、ボクは生徒たちを見送る。
心に嬉しさと寂しさの相反する感情が、込み上げて来た。
「天空のアイドル全員が、ガラスの塔に収まったようね」
デビュー曲を歌い終えたミカドが、久慈樹社長に質問する。
「いいや、もう1組み残っているよ」
イエスと思われた質問の答えは、ノーだった。
「おかしいですね。天空の12ステージは、すでにガラスの塔の元に集っています」
「乗ってたアイドルも、みんな塔の中に入っちゃったモンね」
レインとサトミが、反論する。
「それは、12星座であればの話だ。ボクは天空教室に、2人のアイドルを付け加えたのだよ」
『人を、オマケみたいに言わないでくれるかしら』
『ここまで、貴方の長話に付き合わされて、壁壁(へきへき)としているのよ』
久慈樹社長の言葉に、司会進行を務めていた2人のアイドルが反応した。
「なるホド……サラマン・ドールの、レアラとピオラね」
「え、でもミカド。2人は天空の12星座じゃないよね?」
「そうね、サトミ。でも、13星座とした場合……」
「ああ、へびつかい座(オピュクス)が加わる。彼女たちも、れっきとした天空教室の1員だ」
ルシファーら3人の魔王の瞳を向けられた、久慈樹 瑞葉が言った。
「でも、AIにテストを受けさせて、なんの意味があるのかしら?」
「彼女たちは、世界中のサーバーに繋がっているんでしょう?」
「例え孤立させても、コンピューターなら計算はお手のモノだし、貯えた知識は膨大なハズよ」
出番を控えていた、ミク、フウカ、ミライが問いかける。
「そこに関しては、彼女たちは天空教室で得た知識のみで、テストを受ける。もちろんネットワークからは、完全にシャットアウトした上でね」
久慈樹社長の答えは、説得力としては薄かった。
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