ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第05章・第24話

f:id:eitihinomoto:20200806163558p:plain

完成、ユークリッター

 次の日ボクは、ユークリッドの四角い本社ビルにいた。
目の前には、マホガニー材で造られたクラッシックな机があり、その向こうには男が座っている。

「実は件(くだん)の、ユークリッドアプリが完成してね」
 件のアプリとは、『ユークリッター』と呼ばれるアプリで、ユークリッドの展開するあらゆる分野の動画と、SNSの情報発信サービスを1つに纏めたモノである。

「あの、久慈樹社長。ユミアに意見を聞くのは解りますが、デジタル音痴なボクに聞いても、なんの価値も無いのでは……?」

「正直なところ、その通りだよ。でも彼女は何故か、キミが居るとよく喋ってくれるんだ」
 サラサラヘアの男は、ボクの隣にいる少女に悪戯な視線を送る。

「は、はあ。いきなり何を、言っているのかしらッ!?」
 栗毛の少女が、血相を変えて反論した。

「先生とわたしは、単なる雇用上の関係だけです。先生と生徒の関係でもあるけど……それくらいよ」
「そんなに顔を真っ赤に染めて、反論されてもねえ」
 久慈樹 瑞葉は組んだ手の上に顔を乗せ、ニヤリと笑う。

「うわあ。ア、アンタがヘンなコト言うからじゃない。それより、アプリはどれよ!!」
 とてつもなく強引に、話題を換えるユミア。

「そうだったね。今、持って来させるよ」
 ユークリッドの若き社長が、机のパソコン画面で合図を送る。
直ぐにボクたちの背後のドアが開き、スーツ姿の女性秘書が数人、社長室へと入って来た。

「お持ちしました、社長」
「こちらが開発アプリがインストールされた、スマートホンになります」
 秘書の2人が社長の前に立ち、ジェラルミンケースを開ける。

「仰々しいケースに入っている割りには、普通のスマホじゃない」
「それはそうさ。普通のスマホにインストール出来なきゃ、意味がないからね」

「で、どれくらいの出来栄えよ」
 久慈樹社長の説明などどこ吹く風のユミアは、ケースのスマホを取り上げた。
ボクもとりあえず、同じ行動をする。

「タブ形式で、動画とSNSを簡単に切り換えられるのは、まあ良いトコね」
「それって、凄い機能なのか?」
「ぜんぜん。今時、付いていて当然の機能よ」

「当然の機能でも、UIは重要だからね。レスポンスはどうだい?」
「今のところ良好よ。ま、本格運用されてからこの レスポンスが維持できなきゃ、意味ないけどね」
 2人は、ボクには全くついていけない会話をし始める。

「でも、このSNSの投稿の仕方やタブ切り替えは、面白いアイデアじゃない」
「開発チームが、腐心したところでね。キミのアイデアも、参考にさせて貰ってるよ」
 ボクは仕方なく、ユミアがスマホ画面を押すのを完全コピーで、自分の端末の画面も押してみた。

「うわ、なんか惑星っぽいのが表示された!?」
「そう。その惑星のアイコン1つ1つが、投稿された話題なのよ」
「惑星が……話題!?」

「例えばホラ、これは今わたしが投降した話題なんだケド、惑星アイコンの隣に文字が出てるでしょ?」
「えっと、こうか。なになに、恋愛占い?」
「そ、そこは何だっていいのよ!」

「なに赤くなっているんだ?」
「う、うるさい。それよりこのアイコンは、ユーザーが自分が興味のある話題をアップしたモノよ」
「事前に開発チームや秘書たちにも、話題をアップさせてあるよ」

「ホントだ。釣り、パソコン自作、レンチン料理、色んな惑星がアップされている」
「例えばホラ、この『釣りの惑星』をタップしてみて」
「こ、こうか。うわ、釣りの動画の一覧が表示されたぞ?」

「面白いでしょ。次はこっちの、『ユニバース』タグに切り換えてみて」
 ユミアが、ボクの端末を操作する。

「こ、今度は宇宙になったぞ!?」
「この宇宙に、釣りの惑星を中心にした他の惑星が、浮かんでるでしょ」
「ルアー、堤防釣り、ブラックバス……釣りに関連した惑星が、釣りの惑星の周りを周ってる」

「その通りだよ。より多く投稿された話題が主星となり、それに関連する話題が惑星となるように、AIが判別しているのさ」
「確かに釣りの惑星だけ、妙に大きくて光ってますね。ン、よく見ると惑星の大きさも違う気が……」

「惑星の大きさは、その話題がどれだけ投稿されたかで、決まって来るのよ。より多く投稿された惑星は巨大化して主星になり、恒星系を形成するって感じね」
「キ、キミは開発者でも無いのに、よく解るな?」

「これくらいは、誰でも解るわよ」
「イヤイヤ、流石にそれは無いだろう」
 久慈樹社長は、呆れ顔で言った。

 

 前へ   目次   次へ