ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第10章・第70話

マドルとハリカ

「警察の、刑事さんですね。お待ちしておりましたわ」
 墓場のセットの舞台に現れた、美しい着物姿の少女が言った。

 設定としては、街の和風な宿屋の2階にある広間であり、決して墓場などでは無い。

「貴女が、嗅俱螺 墓鈴架(かぐら ハリカ)さんですね?」
「はい。その通りにございます」
 マドルの問いに、小さく頭を下げるハリカ。

 彼女は、雪のような真っ白な髪を、頭の左右から長く垂らしている。
青い瞳に、白い肌の可憐な少女だった。

「我々を待っていたとは、どうしてですか?」
「刑事さん達に、色々とお伝えすべきコトがあるからです」
「我々に? それは一体、どう言う……」

「ハリカ、そうコトを急(せ)くモノではありません。刑事さんが方も、まずはお掛けになって」
 ドームのステージに、少し年配の女性の声色(こわいろ)が響く。

「そうですな。では、失礼させて貰いますよ」
 宿の和風テーブルの座布団に胡坐(あぐら)をかく、汗臭い警部の姿が浮かんだ。

「さて……早速ですが、ハリカさん。我々警察に伝えたいコトとは、何なのでしょうか?」
 マドルが、問い質す。

「実を言うと、警察にでは無いのです。神於繰 魔恕瘤(かみおくり マドル)さん、貴女個人にお話して置きたかったのです」

「吾輩を、ご存じで?」
「はい、存じ上げております。貴女が解決された事件の1つに、わたしの知り合いもおりましたので」
 ハリカは、言った。

「どうやら彼女は、吾輩が本来は探偵であるコトも、実は女であるコトも知っている様子だった。でもハリカさんは、それを周りに悟られない様、話を進めてくれてね」

 観客たちは、ハリカが配慮のある性格だと言うコトを知る。

「それで、ハリカさん。コイツに話して置きたいコトって、なんだい?」
 警部の野太い声が、ぶっきら棒に聞いた。

「はい。実は3日ほど前、竹崎弁護士から連絡があったのです。伊鵞 重蔵(いが じゅうぞう)氏の遺産の件で、話があると言って……」

「竹崎弁護士とは、以前からの知り合いだったのですか?」
「いえ。その電話が、始めてでした。わたしは、なんのコトだか解らなかったのですが、念のため母に話しました」

「実はこの子には、伊鵞との関係も、伝えてはいませんでしたから。驚くのも、無理のないコトです」
 ハリカの母親である、嗅俱螺 藤美(かぐら ふじみ)の声が言った。

「そうじゃ。伊鵞などとは、疾(と)うの昔に縁を切ったのじゃからな」
 咳にむせびながら、初老の嗅俱螺 蛇彌架(かぐら タミカ)の声が続く。

「みなさんに、伺います。伊鵞の館で起きた事件は、ご存じでしたか?」
 マドルが、問いかけた。

「新聞などにも連日、大々的に取り上げられておりましたから」
「あの男に、天罰が堕ちたのじゃ。当然の報いぞ……ゴホッ、ゴホッ!」

「お婆さま、無理をされないで」
 祖母の背中をさする仕草をする、ハリカ。

「それでハリカさん。貴女は、竹崎弁護士に会ったのでしょうか?」
「はい。連絡のあった次の日に、街の喫茶店で」
「その時は、わたくしも同伴致しました」

「ハリカさんと藤美さんが竹崎弁護士と会ったのは、今日から2日前と言うことになりますね?」
「それで、合っていると思います」

「竹崎弁護士は、お2人に何をお話されたのでしょうか?」

「伊鵞の遺産についてです。伊鵞の館で、遺産を受け継ぐ2人の少女が亡くなって、その他にも重蔵氏の遺産を受け継ぐ権利を持つ方々が、亡くなったと伺いました」

「それでこの子にまで、遺産を受け継ぐ権利が、巡って来たのだと。当初聞いたときは、俄(にわ)かには信じられませんでした」
 ハリカに続き、藤美の声も言った。

「竹崎弁護士は、遺産の相続順などを1通り説明された上で、詳しい話は後日伺うと仰(おっしゃ)っておられました」
「それで竹崎弁護士は、嗅俱螺家を訪問されたのですか?」

「いえ。ですが、お寺の方からご遺体が見つかったのですから、家と間違えて本堂の方にお越し下さっていたのでは?」
 藤美の声が、推測を立てる。

「それについてですが、お母さま」
「なんです、ハリカ?」
「わたし、見たのです」

「一体、何を見たと言うのです?」
 娘に心配そうに問いかける、母親の声。

「昨日、お寺の本堂の前に立っている、黒いレインコートを着た男の姿をです」
 嗅俱螺 墓鈴架は、凛とした顔で言った。

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