ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第10章・第60話

夫人と姉妹

 マドルが生前に関わった、連続殺人事件の容疑者たち。

 重蔵の次男が武瑠(たける)、次男の妻が椿姫(つばき)、夫妻の長女が刹姫(さつき)、次女が捺姫(なつき)と判明した。

「武瑠氏は、事業が上手く行っていないのが原因で、ご帰宅する回数も減っていたそうですね?」
 ステージのマドルが、挑発するように尋問(じんもん)する。

「ええ、そうですわ。他に原因があるのも、明白でしょうケド。夫が、外に女を作っていたなんて……」
 椿姫(つばき)夫人は声だけだったが、眉間にシワを寄せている姿が、容易に思い浮かぶ。

「刹姫さんも、捺姫さんも、突然妹が現れたときには驚かれたでしょう?」
「オイ、マドル。もう少し、言いようってモンが……」
 伯父の警部の、いつもより小さな声が注意した。

「わたし達は、あのコを妹だなんて認めてませんわ」
「そ、そうですわ。どうしてお爺さまが、あの娘に遺産を遺そうと考えたのか理解に苦しみます」

 マドルの1人芝居を、ステージ裏から見ていたボク。

「サツキ、ナツキか。どんな外観なのかは判らないが、アロアとメロエを想像するな」
 ボクはお芝居の中の2人に、自分の生徒であるグラマラスな双子姉妹を重ねていた。

「それはさて置き、3人は第2の殺人事件……サキカさんが殺された日の夜、この館に宿泊しておられたのですよね?」

「端正なお顔に似合わず、トゲのある言い方をされますわね」
「お褒めに預かり光栄です、椿姫(つばき)夫人」

「なあ、マドル。お前頼むから……」
「いいでしょう」
 警部の取り繕(つくろ)いを、夫人の声が遮(さえぎ)る。

「わたくし達はあの夜、館の2階にある賓客室(ひんきゃくしつ)に居ました。食事を終えたわたくし達は、部屋でしばらく談笑した後、直ぐに寝てしまいましたわ」

「だいたいわたし達は、館にやって来て1週間になるのです」
「その間、事件なんて起きませんでしたわ」

「警察が、目を光らせてましたから。その1週間の間、お2人はサキカさんに対し酷く冷たく当たったと聞きましたが?」

「と、当然でしょう。亡くなったお爺さまの遺産が、どこの馬の骨とも判らない娘に、いきなり横取りされるのですよ!」
「お父さまの会社が危ないと解っていて、どうしてお爺さまはあんなご遺言を……」

「つまりお2人にも、サキカさんを殺す動機は十分にあると?」
 挑発に乗った姉妹を、さらに揺さぶるマドル。

「そ、それとこれとは、話が違いますわ。いくら恨めしくとも、人を殺すだなんて」
「わたしに達には、あんな恐ろしいマネはできません」

「事件現場の惨状を、ご存じのようですね?」
「そ、それは……新聞にも載っていたし、警察の方々も話されてましたから」

「新聞は、吾輩も目を通しました。何処から漏(も)れ聞いたのか、マスコミとは恐ろしいモノです」
 マドルは、見せかけの笑顔を作った。

 急に墓場のステージが暗転し、マドルにだけスポットライトが当たる。

「この時、吾輩は彼女たちから、最初の聞き取りを行った。感想から言えば、少なくとも2人の姉妹の犯行である可能性は、薄いと言える」

「え、どうしてだよ?」
「オレ、2人はけっこう怪しいとも思ったケドな」
「なんで、そうなるのよ。絶対、白でしょ」

 観客席が、騒(ざわ)めいた。

「吾輩の質問に対し、姉妹はあまりに無防備だった。自分が犯人と疑われてしまう返答を、平気でしていたのだからね。もっとも、それも演技である可能性も無くはないが……」
 マドルは、言葉を濁(にご)らせる。

「それから吾輩は、現場も調査してみた。メイド長の言っていた、黒いレインコートの人物も気になっていたからね。だが残念ながら、事件当時は大雨が降っていたコトもあって、現場に残されるハズの足跡も、すっかり消えてしまっていたんだ」

 マドルは、お手上げと言ったポーズで、おどけて見せた。

「オイ、キミ。再び、キミの見解を聞こうじゃないか?」
 久慈樹社長が、しつこくボクに問いかけて来る。

「そうですね。第2の殺人は犯人にとって、最も都合の良い日に決行されたと言うコトでしょうか?」
 ボクは少しだけ、探偵気取りで言った。

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