ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

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この世界から先生は要らなくなりました。   第08章・第10話

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去り行く星たち

 ライブ会場の宙に浮かんだステージに、次々に降り立つ7人の少女たち。

「うぉわああァァーーーーッ!」
 最初に飛んだハズのタリアだけが、未だに宙を舞っていた。

「タリアも、ボクと同じく高所恐怖症なんだな。可哀そうに……」
 観客席の上を、ジェットコースターに乗っているかのように絶叫しながら飛に回る、金色の衣装を纏った少女。

「お姉さま、こっちです!」
 今度は、アステたち7人がタリアを出迎える。

「ふう、なんとか着地に成功したみたい……ん?」
「あなた、どこかで見た顔ですね。ユークリッドの関係者ですか?」
 ステージ付近にそのまま留まっていたボクは、警察官に声をかけられてしまった。

「え、えっと、ボクは彼女たちの担任教師なんですが、不審なドローンが飛んでいたもので、つい来てしまいました」
「そうでしたか。では……聴取……」

 ステージにあった巨大スピーカーから、轟音が鳴り響く。
警察官も、肩を竦めて苦笑いをうかべていたので、ボクも苦笑いで返した。

「それじゃあ、今度はわたし達7人のソロ曲メドレー、行ッくよォ!」
 アステの号令と共に、再び盛り上がりを見せる観客席。
ボクは狭い通路を通って、ユミアたちの待つVIP席に戻る。

「アステたちの曲は、アイドルっぽいポップな感じの曲ばかりだな。これぞ王道アイドルステージと、言ったところか」
 ステージを取り囲む観客席に、揺れるケミカルライトの花畑。

「一部を除いて……」
 後ろを振り返ると、元のステージには警察や警備員が上っていて、鑑識がドローンが放った銃痕のあとをチェックしている。

「あ、先生……帰って……た!」
「ああ、完全に取りこし苦労だったよ」
 レノンの大きな声も、聞こえないくらいの音量の中、ボクは元居た席まで舞い戻って来た。

 7つの曲の1番だけを繋ぎ合わせたメドレーは、それから5分ホドして終了し、舞台はまた束の間の静寂を取り戻す。

「ステージを、中止しなくて良かったんですか、久慈樹社長!?」
 ボクは、隣に座っている男に言った。

「容疑者は捕まっているんだ、構わんだろう。それにステージはああして、犯行当時を保存してある。観客たちはライブに集中しているから、鑑識作業もしやすいだろうに」
「そ、そうでしょうか。アイドルや観客たちの安全を、優先的考えた方が良いのでは?」

「だからこそさ。下手に中止なんて言って見ろ。それこそ、暴動が発生しかねない」
 久慈樹社長は、実に楽しそうにしている。

 一歩間違ったら、タリアが死んでいたかもしれない大惨事も、社長にとってはライブを彩るスパイスの、ひと欠片なのだろう。

「それじゃ最後の曲、行ってみよう!」
「ラバーズ・デスティニー」
 タリアの低い声で、曲名が紹介される。

 プレー・ア・デスティニーの最後の曲は、勇壮なタリアのソロから始まり、アステたちのポップな曲調で締めくくられた。

「先生、アレ……タリアだよねェ?」
「そうだが、どうしたんだ、レノン」?

「イヤ、なんだか普段のタリアと、ぜんぜん違うなって……」
「今のタリアは、アイドルだからな」
「そっか。アレが、アイドルなんだ……」

 タテガミのような金髪の少女は、羨望の眼差しで友のステージを見つめていた。

「プレー・ア・デスティニーのステージは、これで終わりか」
「みんな、夜空に帰って行くのですゥ」
 アリスが、後ろの席で目を輝かせている。

 ドームの真上は青とオレンジを混ぜ合わせた、トワイライトな空になっていた。

「昼間に始まったステージも、もう夕方か」
「単独ライブならともかく、プレジデントカルテット、プレー・ア・デスティニーとも、メンバーも多いのだから当然かしら」

「さて、次はどっちだ?」
「残るは、サラマン・ドールと、ウェヌス・アキダリアの2組よね」
 ユミアが腕を組んで考えていると、艶やかなピアノの音色が流れて来る。

「どうやらこの曲調は……」
「アロアと、メロエの2人ね……」
 ムーディーな曲と共に、空のステージには豊満な身体の双子が立っていた。

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