ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第02章・第01話

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ボクは先生になる夢を先送りしました

 ボクは自宅のボロアパートへと帰宅した。

 今どき四畳半の畳が、ボクを出迎える。
「時代の波に抗い続けたこの畳とも、もう直ぐお去らばか」
来月には隣接する道路の拡張工事とやらで、アパートの取り壊しが決まっていた。

「思えば四年と少し前、大学の合格を勝ち取って上京したボクを、随分と落ち込ませてくれたのが、このボロアパートだったな」
 袋からカップ麺を取り出し、蓋を開けてポットでお湯を注ぐと五分の時を待った。

「それも今となっては……不思議なモノだな……」
 昭和の風情が残る木の柱も、ギシギシと軋む階段も、むき出しになった電気配線も、別れるとなると寂しさを感じる。

「このまま就職が決まらなければ、実家に帰って就職浪人か……何とも気が引けるなあ」
 蓋を開けると、カップ麺のうどんは少しふやけていた。

「親もボクには相当期待をかけてくれていただろうに……情けない話だ、まったく」
 厚揚げをどけてうどんを啜る。

 スープをたっぷり吸わせた厚揚げを頬張っていると、耳元で羽音が聞こえる。
振り払って天井を見上げると、蚊が飛んでいた。
夏のボロアパートは、吸血虫の侵入を容易に許すのだ。

「瀬堂 癒魅亜……か。偉そうに振舞ってしまったが、今のボクは女子高校生に完全に負けてるな」
 大学入学と同時にボクを絶望させたアパートは、久しぶりにボクを落ち込ませる。

「……彼女、ボクをお兄様に似てるとか言ってたよな。一体、どんな兄なんだろう?」
 網戸の向こうは、星灯りと黄色い三日月が夜空を照らしていた。

「何にせよ奇麗で優秀な妹を持って、さぞや幸せな兄じゃないか」
 何の考えも挟まずに、彼女の兄を羨ましく思う。

 ボクはそれよりもまず、彼女の言った言葉(キーワード)を、深く考えるべきだったし、推察すべきだったのだ。

「彼女……動画で見るより可愛いっていうか、意外とコケティッシュな部分もあるよな」
 炎天下を一日中歩き回り、食欲も満たされたボクの脳ミソは、十分に機能しているとは言い難かった。

「まずは食いつなぐ為の仕事を見つけないとな……明日、職安にでも行ってみるか」
 ボクは畳に寝転がると、天井からぶら下がっている照明の紐を引っ張った。

 バスタオル一つで朝を迎えたボクは、スマホのランプが点滅しているのに気付く。

 履歴を見ると、昨日の友人から何通もメールが入っていた。
折り返し電話をかけると、やかましい声がボクの脳を完全にを目覚めさせる。

「お、起きたか? オレさ、就職決まりそうなんだわ。まあオレが望んでたのとは少し違うんだが、最近流行ってるスマホゲームの音楽を手がけてる会社でさ。オレがネットにアップしてた動画を見て、気に入ってくれたらしいんだ。昨日あれから連絡があってよ……」

 ボクはオメデトウを言った。
それは、半分は心から言ったもので、半分は違っていた。

 歯を磨いて顔を洗い、着替えを済ませる。
朝食は外で済ませるつもりで、荷物の少なくなった四畳半の部屋を出ようとすると、玄関には冷めたコーヒーが置いてあった。

「まったくボクは……でも、もったいないから飲んで置くか」
 昨日のコーヒーを飲んだあと、部屋を出て鍵をかける。
「とりあえず職も探さないとな。それに来月からの住む場所も……どうしよっか」

 田舎の実家に帰る決断も出来なかったし、都会で新たな住居と仕事を見つけて、やって行く自信も無かった。

「瀬堂 癒魅亜の前で、あれだけ大人ぶって置きながら……計画性も決断力もゼロじゃないか。これじゃ生徒に勉強を教える資格なんて無いな」
 ボクはまず、職業安定所……通称、職安へと向う。

 設置してあるパソコンで、職種を選んで検索してみるが、教育関連の仕事は皆無だった。
「工場や運送業ならけっこうあるが、もやしなボクにやって行けるか不安だ。でも、そうも言ってられないか? その場しのぎな選択にも思えるが、悩むな……」

 マウスで画面をスクロールさせていると、ふと友人の助言を思い出しす。
「仕事を見つけるなら、ネットの求人サイトの方が優秀って言ってたな、アイツ」
 今にして思えば、処世術に長けた友人の知識には随分と助けられた。

「……アイツはもう、就活なんてしなくてもいいご身分か……大学の成績はボクの方が優秀で、勉強もよく教えていたケド、面倒を見て貰ってたのはボクの方かもな……」
 常に隣に居た戦友を失って、ボクはその有難みを感じずには居られなかった。

「就職アプリも、ダウンロードはしてあったよな。今までは大学経由で面接行ってたケド、流石に就職浪人ともなると……大学に頻繁に顔を出すのもな」
 喪失感を感じつつもスマホを取り出し、求人アプリも立ち上げてみる。

 アプリは、登録してある職種の求人が一覧で表示される仕組で、一週間に二度情報が更新される。
「職安じゃ教育関連の求人なんて一件も無かったケド、民間の求人アプリはどうなのだろう?」
恐る恐る、アプリの求人ページを開いた。

「お、あるじゃん! ……一件だケド」
 早速、その求人の詳しい情報を得るために、画面をタップする。

「え……か、家庭教師? ユークリッドがあるご時世に!?」
 熱血教師を目指しているボクでも、流石に驚いたし少し不安にもなった。