ラノベブログDA王

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萌え茶道部の文貴くん。第五章・第八話

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闇にうごめく獣たち

 暗闇と言ってしまっても過言では無い、土壁に覆われた小さな部屋。

 そこにたいまつが二つ灯り、暗闇から祭壇を赤く照らし出す。
「……どうッスか、お爺サマ? 何かわかったッスか?」

「……ウム……これは間違い無く、『キツネの毛』じゃぁなあ」
 祭壇には、長く伸びた毛に体中を覆われた一匹の獣が、人間の老人の様に腰を曲げて立っていた。

「や……やっぱりッスか?」
 祭壇の下には、一人の少女が正座をして座っている。
少女は小柄で、髪の毛はかなりのクセ毛であり、シマシマのポシェットをしていた。

「恐らくその女、キツネに憑かれたか……もしくは……」
 年老いた獣は、外観に似つかわしくないギラリとした黄色い目で、目の前の少女を見つめる。

「アリガトウございましたッス。では、行って参りますッス!」
 少女は、その場を後にしようとした。

「……待て、絹絵よ。お前が人間の姿で居られるのは、この事件が……」
 獣は、しゃがれた声で少女を呼び止める。

「……わかってるッス。元々、ご主人サマに助けて貰った命ッス。恩返しが終ったら……」
 少女は四つ足の獣となって、洞窟を出て行った。

「……やれやれじゃのォ。獣が人と関われば、悲惨な結末が待っていると云うに……」
 老齢の獣は、手に持った杖を突きながら、ヨロヨロと歩き始める。

「キツネ……か。彼奴(きゃつ)等は、我等より知恵が回りおる……厄介な相手じゃぞ、絹絵よ」
 やがて年老いた獣も洞窟を出て、漆黒の夜空に細い眼のように浮かぶ弦月を見上げた。
「我が孫娘よ……果たして……」

 空は澄んだ青空に変り、白い月が小さく浮かんでいた。

 薄いピンク色のナース服を着た五人の少女が、ある建物の前で立ち止まる。
「ここが、例のおじいさんの入っている施設ですわね」
玄関フォールには巨大な強化ガラスが並び、煌びやかなシャンデリアがぶら下がっていた。

 庭には、リハビリ用としては巨大過ぎるプールがあり、南国のリゾートホテルを思わせる。
「ちょっと豪華過ぎない?」「高級ホテルよりスゴイよ?」
そこは『老後の保養施設』と言うには、余りにも豪華だった。

 施設の最上階の半分を占有する、大きな部屋の大きなベットの上。
「ほ~ら、お口を開けて。 お爺様、あ~~ん♪」
一人の老人が、五人の少女に甲斐甲斐しく世話を焼かれている。

「全く、揃いも揃って、貧相な体の女子どもじゃのォ?」
「酷いですわぁ。こんなぴちぴちした女子高生が、五人も居てお世話をしているのですよ」
 ナース服姿の少女たちは、大きなベットに跳び乗った。

「もっと、色めき立ってもよくてよ?」「うっふ~ん♪」
 老人はため息を付く。

「……いくらナース服を着込んで、言葉使いを色っぽくしたところで、体つきまでグラマーになるワケでは無いのじゃぞ?」「そ、そんなッ!?」「う……うそ!?」
 少女たちは、驚愕の真実を突きつけられてショックを受けていた。

「これこれ、そう落ち込むでない。お主らはまだ若いのじゃから、体の成長はこれからじゃろうて」
「……そ、そうですわよねぇ!」「悩殺的なプロポーションになるのは、これからですわ!」
 周りではしゃぐ少女たちの輪の中で、再び老人はため息を付く。

「しかし、沙耶歌の知り合いにお主らの様な者がおるとはのォ。あの子は少し、堅苦しく物事を考え過ぎると心配しておったのじゃが……取り越し苦労だったかのォ?」

「……実はお爺様……その件について、お話がございますわ」 
 『ナース服・学生服化推進委員会』の香住 癒音は、かしこまった表情になっていた。
老人は、少女達の話に耳を傾ける。

 それから老人は、深く大きなため息を付き、部屋の窓から遠くの景色を眺めた。
「……全くワシをこんな場所に押し込めておいて……愚息どもは……何をやっておるのじゃ」

 ~別の場所~

 漆黒の夜空を舞い跳ぶ、一匹の獣がいた。

 その毛並みは月明かりを浴びて、銀色に輝いている。
雲が月を隠し、地上は闇に包まれた。

 再び月が顔を出した刻……獣は消え去り……。
地上には、吊り上がった妖艶な目をした女が、細い半円を描いた口で妖しく笑っていた。

 

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