ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第05章・第33話

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踊らされる少女たち

 久慈樹社長が情熱を注いで開発したアプリは今、隣の部屋でボクの生徒たちが楽しそうに使っている。

「社長、ボクも教室に行っても構いませんか?」
「構ないが、あまり水を刺す言動は避けてくれよ」
「わかりました」

「なら、わたしも行くわ。もう、ある程度のデータは取れたんでしょ?」
「まだ10分も経っていない。できれば授業を、あと30分後ろにずらしてくれないか?」
「え、ええ。でも、枝形先生が……」

「彼にも当然、了解は取るよ」
「それでしたら、ボクは了解です」
「ま、先生が言うんじゃ、仕方ないわね」

 ボクとユミアが、データセンターと化した部屋から隣の天空教室に向かうと、久慈樹社長が何やら指示を出していた。
何となく気になったが、今さら戻るのもおかしいと思い、天空教室へと入る。

「あ、先生とユミアだ!」
 最初に気付いたのは、レノンだった。

「もう、どこ行ってたのさ。それよりこのアプリ、めっちゃ面白いよ」
 ライオンのような金髪のたてがみ少女が、ボクの隣にやって来る。

「これ見て。新作のアニメが見られるんだ。しかも、独占放送なんだって」
 レノンのレンタルスマホには、男の子向け忍者アニメが映し出されていた。

「よ、良かったな。アリスは、何の動画を見ているんだい?」
「わ、わたしですか。わたしは、編み物とか好きなので……」
 真っ白な綿のようなモコモコ髪の少女は、俯きながら呟く。

「へえ、ニット帽の編み方か。誰かへの、プレゼントかな?」
「え、えっと、キアちゃんに……」
 アリスは網み掛けのニット帽を、手提げバッグから取り出した。

「え、ウチにか?」
 驚く、赤毛のショートヘアの少女。
「は、はい。勝手に作っちゃって、スミマセン」

「イヤイヤ、有難いこっちゃ。それに、めっちゃ可愛いやん。カニのステッチやろ?」
 今は短くなってしまったが、キアは蟹の様な赤いツインテールが自慢の少女だった。

「姉さんの為に、わざわざ作ってくれてるんですか?」
「キア姉、禿げてもうたさかいな」
「これから秋やから、ちょうどエエんちゃうか」

「女の子にハゲ言うなや、アホ。これでも入院中に、伸びた方なんや」
 相変わらず仲のいい、キア、シア、ミア、リアの4人姉妹。

「タリアは、何を見てるの?」
 ボクの後ろで、ユミアがタリアのスマホを覗き込む。

「うわあ、何でもないよ」
「ほう、どれどれェ?」
 タリアがのけ反ったところに、レノンが待ち構えていた。

「なんだ、ボクシングの試合じゃんか。これって、日本タイトルマッチだよねえ」
「か、勝手に見るな、バカライオン」
 制服の下にフード付きパーカーを着こんだ女の子が、慌ててスマホを取り返す。

「そう言えばタリアの親父さんは昔、ボクサーを目指していたんだったよな」
「ま、まあな。アタシはそんなに、興味ねーケドよ」
 タリアの父親は、夢をあきらめて体育の教師になり、そして……。

「ウソつけェ。小学生ン時なんか、他のボクシングジムに殴り込みかけてたジャン」
「そ、それ本当ですか、タリアお姉様!?」
「ち、違うってアステ。ただ……その……」

「自分のジムじゃ、男の子と戦わせて貰えないモンだからって、わざわざ他のジム行って対外試合挑んでたジャンか」
「よくバレませんでしたね」

「だって、この身なりだよ。ヘッドギアしてりゃ、男の子にしか見えないって」
「オ・マ・エにだけは、言われたかねェよ」
 ヘッドロックでライオンを締め上げる、タリア。

「お、お姉様が強い理由が、解かった気がします」
「ア、アタシのコトは、イイから……アステたちは、何見てんの?」
 強引に話題を変えるパーカー少女の傍らから、レノンが崩れ落ちた。

「今、どんな『ワード』が伸びてるかですね」
「天空教室ってワード、かなり伸びてますよ」
「あと、タリアお姉様ってワードが伸び始めました」

「な、何でぇ!?」
 自分を慕うテニスサークルの少女たちに囲まれ、唖然とするタリア。

「実は試験的に、ユークリッター以外のSNSに上がっているワードを、データに反映させたのさ」
 ボクが顔を上げると、久慈樹社長が天空教室に入って来ていた。

「つまり、この動画中継を見た視聴者が、他のSNSにアップしたワードってコトね」
 相変わらず、デジタルに強いユミア。

「そう言えば今は、カメラが回っているんでしたわ」
「タリアさんに注目が集まってしまっておりますわ、アロアお姉様」
「わ、わたくしとしたコトが、芸能情報を集めている場合では、ありませんでしたわ」

 芸能人の裏の顔や、スキャンダル特集を見ていた双子姉妹が、カメラを意識しポーズを取り始める。

「余りあざといのは、止めてくれるかな」
 久慈樹社長は、冷たく言い放った。 

 

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