ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第06章・第05話

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マーク・メルテザッカ―

「マークは、ボクやキミと同い年でね。ドイツ系アメリカ人の家に生まれたんだ」
 ボクはハグされたまま、ボクをハグする男のプロフィールを聞く。

「それは……さぞや資産家の、名家の家柄なんでしょうね」
 ボクは、動揺をしていたのだろうか?
少し、嫌味な感じの答えを返す。

「名家だってェ? アハハ、ぜんぜ~ん違うね」
 けれどもマークは、大きな声で爽やかに笑った。

「コドモの頃のワタシの家、アパートメントだたね。両親たまに失業して、食べ物貰いに教会行たよ」
 マークの予想外の答えに、ボクは会話を途切れさせてしまう。

 金色のエングレービングが施された、真っ白な高級外車に乗り、真っ白なスーツをさりげなく着こなす男の過去が、貧しい家の出身だったなんて。

「彼……マークは、ユミアには会ったコトがあるんですか?」

 どうしてだろうか。
いつの間にか、そう質問していた。

「ノー、実は初対面ね」

「マークは、日本に来るのも始めてなんだ。ユークリッドの同僚の教師となるんだから、先輩として良くしてやってくれたまえよ」
 久慈樹社長はボクの肩をポンと叩くと、再びマホガニーの扉を開ける。

「初対面って……会ったコトすら無いのに、彼はユミアを狙っているんですか?」
「ん。そうだが、何か問題でも?」
 社長は、ワザとらしいクールな顔で言った。

「それは問題ですよ。彼女はまだ、高校生なんです」
「だが、高校生なんて呼び方は、義務教育の学校が在った頃の名残りでしか無く、形骸的にそう呼んでいるに過ぎない。実際の彼女は、生徒であると同時に教師でもある」

「では、言い方を換えましょう。彼女はまだ、未成年の女のコです」
「その未成年の女のコと問題になっているのは、むしろキミの方じゃないか」

「アレは……勝手にマスコミが騒いでいるだけで、彼女はただの生徒です」
 なんでボクは、こんなに向きになっているんだ?
今日のボクは、全然冷静じゃない。

「アナタ……女のコ、好きになたコトありますか?」
「え?」

「アナタ、恋愛初心者ね。今ではワタシも、ガールフレンドたくさん、たくさん居るね。でも、昔はそうじゃ無かたから、気持ち解るよ」
 セレブな外国人に同情されている様で、心の内から悔しさが込み上げる。

「今は、恋愛の話をしているのでは無く……」
「まあまあ。これから天空教室に行って、生徒たちにマークの紹介をするんだ。キミも来たまえよ」

 ボクは仕方なく、社長の後に付いてエレベーターに乗り込んだ。
完全なる調和の取れたデザインのゴンドラが、地上へと降りて行く。

「彼女と直接会うの、愉しみね。きっと、驚くよ」
 軽くウェーブのかかった金髪の外国人は、独り言とも問いかけとも取れる言葉を繰り出しては、自らの言葉で盛り上がっている。

「久慈樹社長、先いてるね」
「日本の道交法は、護ってくれよ」
「オーケー、了解ね」

 マーク・メルテザッカ―は、颯爽と白い高級外車に乗り込むと、地下駐車場のスロープを駆け上がって行った。

「社長。どうして彼と、ボクを遭わせようと思ったんですか?」
「そりゃあ、面白そうだからだろ」
「なッ、そんな理由ですか?」

「アハハ、ウソだよ。そんなに向きになるなって」
 久慈樹 瑞葉は、運転席でハンドルを握りながら言った。

「実は、キミの気持ちを知りたくてね」
「ボクの……気持ちですか?」
「概ね、予想通りさ。じゃあ、行こうか」

 若き経営者とボクを乗せた車は、白い車の後を追い地上に出る。
スロープの先は相変わらず、マスコミのカメラでひしめき合っていた。

「一度、地上に出なきゃ行けないのも、大変ですね。地下駐車場同士、繋がってればいいのに」
「それもそうだな。どうせこの辺りは全てウチの土地だし、繋げてしまうか」
「ホ、本気ですか!?」

「さて、どうだかな」
 ボクの思い付きの提案は、ボクの予想を上回る形で具現化するコトになる。

 社長の黒塗りの高級外車は、ファンファーレの替わりに大量のフラッシュライトに出迎えられ、円筒形タワーマンションの地下駐車場へと潜って行った。

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