ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第10章・第33話

ミニスターⅠ(ファースト)コア

 ガラスの塔の、最上段のガラスパネルに浮かぶ、デジタルの数字が50:00を刻んだ。

「最初の科目は、国語だ。時間は50分。この辺りも、冥府のアイドル(ベルセ・ポリナー)たちの受けた試験と合わせてある」
 久慈樹社長は、テストの公平さを強調する。

「出来れば試験会場も、同じにして欲しかったのですがね」
 ボクは少しだけ、社長に抗(あらが)った。

「フフ、それは悪かったよ。だがまあ、ガラスの塔の中は静寂そのモノでね。彼女たちからは、外の会場の喧騒(けんそう)は一切確認できない」

「それを聞いて、少し安心しました。ですが生徒たちは、観客たちに一方的に観察されるのですね」
「キミの天空教室も、そうだったじゃないか」
 ボクは、完全なる反論を受けてしまう。

「さあ、テストを開始する!」
 久慈樹社長が右手を上げると、ガラスの塔のカウントダウンの時計以外のパネルが、ボクの生徒たちの顔で埋め尽くされた。

「みんな……ボクはキミたちを信じている」
 生徒たちの入ったガラスの塔を、見上げるボク。
心中には、複雑な感情が渦巻いていた。

 カウントダウンの数字が、50分から49分59秒へと変化し、さらに秒数が減って行く。
生徒たちは真剣な表情で、テストに取り組んでいた。

「オイオイ、マジでテスト受けるのを見てるだけかよ!」
「授業風景ならともかく、テストなんて絵にならんぞ」
「よほどコアなファンじゃなきゃ、ムリじゃね?」

 ボクは、自分の生徒の受けるテストと言うコトもあって、退屈とはホド遠い心境だったが、ゲリラライブに集まった観客たちはからは、不満の声が沸き上がる。

「仕方あるまい。ボクの見込みが、甘かった様だ」
 久慈樹社長は、ため息を吐き捨てる。

「悪いな、ミカド。キミたちにまた、ステージを頼めるかい?」
「残念ですが、それには応えられません。わたし達が自信をもって歌える曲は、2曲のみと申しました」

「フッ。プロとして、未完成の曲は歌えない……か。それは、困ったな」
「どうして困る必要が、あるのです。わたしのかつての仲間は、サトミとレインだけではありません」
 ルシファーを象徴するミカドは、自らの雇用主に迫った。

「だが、個別のユニットとしてレッスンを受けたのは、キミとミクのグループだけだぞ?」
「わたしの仲間を、見くびらないでいただけますか。彼女たちも、かつて共にアイドルを目指したプロです。少なくとも、素人同然の天空のアイドルよりは、完成度が高いと思いますわ」

「ならばキミの言に、従おうじゃないか。それで誰がステージで、観客を満足させてくれるのかな?」
 ミカドの横を通り過ぎ、後ろに控える60人以上のアイドルたちに向け歩いて行く、久慈樹社長。

「ユニット名は、ミニスターⅠ(ファースト)コア。リーダーは、プート・サタナチア を象徴とする洞萬 五月(どうま サツキ)よ」

 ミカドが名指しした少女が1人、アイドル集団より歩み出る。
彼女は紫色の長い髪をしていて、ヤギのような長い角を生やしていた。
両肩には、女性の銅像型のアーマーがあり、黒い衣装には黄金の五芒星や六芒星がいくつも輝いている。

「まさかこんなカタチで貴女と、同じステージに立てるとは思わなかったわ、ミカド」
 サツキは、クールな眼差しをミカドに向けると、ステージの先に向かって歩み出した。
その背後に、3人の少女が従う。

「すでにユニット名まで、考えてあったとはね」

「貴方がわたし達の会社を壊すまで、あのコたちは同じユニットとして活動していました。楽曲は貴方のAIたちが創ったモノですが、あのコたちなら歌いこなしてしまうでしょう」
 久慈樹社長と共に、後ろから仲間のステージを見守るミカド。

「わたし達のユニット、ミニスターⅠコアのメンバーを紹介するわ。まずはプロケルを象徴とする、氷室 小梢(ひむろ コズエ)よ」
 サツキの紹介で、1人の少女にスポットライトが当たる。

「わたしは、コズエだよ。水泳が大好きなんだ。でも、お歌も得意だから、今日は頑張っちゃうね」
 アニメの声優のような甘い声で、会場に笑顔を振りまく少女。
ソーダ色のクルクルとした髪に、浮き輪を模したミニスカートを穿いていた。

「次は、アモンを象徴する、風童 晃(ふどう アキラ)。ちょっとガサツだケド、可愛いコよ」
 お姉さんキャラのサツキが、次のメンバーを紹介する。

「ベ、別に可愛くねェだろ。オレは、アキラだ。ま、ヨロシクな」
 アキラは、黒いバサバサの短髪に、リアルなフクロウの帽子を被っていた。
悪魔らしいコウモリの羽根に、ヘビの長いシッポが生えている。

「次はバルバトスを象徴する、馬場 灯花(ばば トウカ)。ゲーマーとしても、有名なのよ」
 最後に残った少女を紹介する、サツキ。

「まあね。わたしは、トウカ。FPSなら、そこそこのエイム力はあるって感じかな」
 飄々(ひょうひょう)とした雰囲気のトウカは、緑のミリタリー帽子に灰色のマントをしていた。
両肩には、6本のSFチックなライフルが装備されている。

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