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ある意味勇者の魔王征伐~第7章・2話

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フォンテーヌ・デ・ラ・デエス

「ええッ!? 忍び込むなんて、マズく無いですかぁ!?」

 舞人は城に忍び込むと言い出した、赤毛の少女に意見した。
「大丈夫だって、舞人。こーゆーのは、昔から得意なんだ!」
「得意とか、そ~ゆ~問題じゃあ?」

「だいじょうぶだって。元々オレは城にいたんだし、バレなきゃ問題ね~よ」
 少し前まで赤毛の英雄と呼ばれていた少女は、聞く耳を持たない。

 死角から器用に、城壁の高さまで伸びている木をてっぺんまで登ると、舞人に向ってロープを垂らす。

「ホラ、太い枝に結んでおいたから、お前も早く登ってきな」
「ホントにいいんですか? みつかって怒られても、知りませんよ」
 先パイの英雄に催促され、仕方なく木を登る舞人。

「なんだ、お前。ロープなんて無くても、余裕で登ってこれるじゃね~か」
「子供の頃は、よく登ってましたからね」「オレもだ、舞人」
 舞人は、憧れの英雄と共通点があるコトがうれしかった。

「まったく、警備がなっとらんなあ。こんなに簡単に、侵入できてしまったぞ?」
 木から城壁へと飛び移り、進入に成功して得意気の赤毛の英雄。
舞人もすぐに後を追った。

 少女は、蒼い髪の少年を先導しながらも、衛兵の警備を巧みにかい潜り城内の広間に入る。

「……あの、シャロリュークさん。ここって浴場じゃないですか?」
 舞人が辺りを見回すと、床には正方形の白と赤銅色のタイルが交互に敷き詰められ、緑が美しい観葉植物が飾られ、高い天井は太い木の柱で支えられていた。

「ああ、そうだが。何か問題でもあるのか?」
「……そうだがって、ボクたちは会議に出るために、城に来たんじゃ?」
 ドラゴンの彫刻から湧き出すお湯で顔を洗った少女は、舞人に向かって真顔で言った。

「会議は、ここで開かれるんだよ」
「ええッ!? そんな……ウソでしょ?」
「本当さ。プリムラーナ将軍って知ってるか? バインバインの美人の将軍」

「……し、知ってますよ! ……って、何がバインバインなんですかぁ!」
「そりゃあオメー、乳に決まってるだろ?」
 なんの躊躇もなく言ってのける、シャロリューク・シュタインベルグ。

「ありゃあ、大きさといい形といい、非の打ち所が無い……と見たね。カーデリアやリーフレアたちの貧弱な胸なんかとは、比べものにならんぞ!」

「た、確かにパレアナやルーシェリアと比べても……って、何の話をしてるんですか!?」

「いやワリィ。話がそれたわ」
 ナゼか着ていた服を脱ぎ、湯舟に浸かる赤い髪の少女。

「で、そのプリムラーナ将軍なんだがよ。女の精鋭だけを選りすぐった、女だけの親衛部隊『ブルー・ジュエルズ(蒼き宝石たち)』って組織の、トップなんだ」
「へ~そうなんですか? ……それがこの浴室と、何の関係が?」

「プリムラーナを頂点とした『ブルー・ジュエルズ』は、お互いを義理の姉妹と呼び堅い絆で結ばれているって話だぜ」
「浴室で会議と何の関係が?」舞人はだんだんと嫌な予感がしていた。

「彼女たちはなんと、円卓ならぬ『浴場』で会議を開くのだッ!!!」
「ええええッ!」予想が的中し、戸惑いを隠せない純朴な少年。

「『フォンテーヌ・デ・ラ・デエス(女神たちの泉)』と呼ばれる、大理石でできた豪奢な浴室で、お互い一糸纏わぬ姿で話し合うコトによって、親睦を深めあっているらしいぜ」

「ま、まさかそれが、この場所で開かれる……と!?」
「最もここは、フラーニア共和国の『本物』みてーな立派な浴場じゃねーケドな」

「問題はそこじゃ無いでしょ!」
 お湯の中で、ゆったりと体を伸ばす少女とは対照的に焦りまくる。
「女の人がお風呂場でやる会議に、男のボクたちが出席していいんですか?」

「いいワケねーだろ? フラーニア共和国の永い歴史でも、その会議に忍び込んだ不埒な輩は一人もいねーって話だぜ」
 自ら率先して、不逞な輩になろうとしている赤毛の少女は、堂々と胸を張った。

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