ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第10章・第34話

獣(ビースト)たちのバラード

「それでは、わたし達の曲を聴いてください」
 ミニスターⅠ(ファースト)コアのリーダーである、サツキが会場に向けて言った。

「曲名は、ペンデュラム・ペンタグラム・サモニングだよ」
「妖しく激しい、スピードチェーンだぜ!」
「そんじゃ、行きますか」

 コズエ、アキラ、トウカの3人のメンバーも、ギターやベースを構える。

「ま、まさか、キアたちチョッキン・ナーと同じ、ロックバンドなのか?」
 ボクの声などは、アキラの弾く激しいエレキギターが掻き消した。

「オ、オイ、見ろよ。天井から、巨大なペンダントが出て来たぞ!」
「チェーンに吊るされて、会場の上をブラブラ周り出しやがった」
「あんなの落っこちて来たら、死んじまう」

 ガラスの塔の上空を中心とし、観客たちの頭上をユラユラと揺れながら移動する、巨大な銀色のペンダントトップ。
その軌道は、無作為では無かった。

「ペンダントが、五芒星を描いている……?」
「差し詰め、魔法陣と言ったところだろう。まったく、いつの間にこんな仕掛けを用意していたんだ」
 久慈樹社長ですら、レアラとピオラの行動を、抑制し切れてはいないらしい。

 振り子の軌道が、ドーム会場に五芒星の魔法陣を描いた。
怪しげな文字の書かれた魔法円が浮かび、その上に冥府のアイドル(ベルセ・ポリナー)たちが飛び立って行く。

「マジで演出、神だよな!」
「さっすが、ユークリッドの推す、アイドルグループだぜ」
「ミカドちゃんも良かったケド、サツキちゃんもサイコー!」

 プロを目指して、厳しいレッスンを重ねたであろう少女たち。
今、この会場で、彼女たちの歌声が花開いていた。

「アリガトー、みんな。わたし達は、1度はアイドルへの道を諦めたの。でも、例え自分たちの望むカタチで無くとも、大勢のファンが見守るステージに立てたコトに、感謝するわ」

 曲の長い間奏に乗せた、サツキのボイスパフォーマンスに会場も1段と盛り上がる。

「みんなー。今日はわたし達のコト、覚えて帰ってね。お願いだよー」
「オラオラァ。イヤでもオレらのコト、覚えさせてやんぜ!」
「あのね。悪い印象を覚えさせて、どうすんのさ」

 リズムギターのコズエは陽気なリズムを刻み、リードギターのアキラは凄まじい勢いでピックを弾き、ベースのトウカもアサルトライフルのようにベースを鳴らしていた。

「これって、普通にロックバンドだよな」
「チョッキン・ナーも凄いって思ったケド、完成度は遥かにこっちのが高いぞ」
「ああ。オレ、ゼッテーアルバム買うわ」

 五芒星は完成し、冥府のアイドルたちが召還されたと言う体(てい)で、会場の上空を舞っている。
やがて巨大なペンダントは天空へと消え、会場にゴシック調のアウトロを残して完結した。

「ヤレヤレ。これは度肝を抜かれたよ、ミカド」
 静かになった会場で、久慈樹社長がステージに残ったミカドに向け、両手を挙げる。

「それは、時期尚早だわ。だって、サツキたちの曲のレパートリーは、こんなモノでは無いもの」
 当然と言った顔で言い放つ、プリンセス・オブ・ダークネスのリーダー。

 ステージには、いつの間にかピアノが置かれていた。

「次の曲は、獣(ビースト)たちのバラード……」
 黒く輝くピアノを奏でる、サツキ。
同時に、ボーカルも務めていた。

「おッ、今度はバラードかよ」
「サツキっち、メチャクチャ歌上手くねェか?」
「声量がハンパ無いって言うか、よくあんな高域が出せるな」

 ある程度の低音域から、オペラ歌手のような高音域まで操る、サツキの美声。
美しいピアノのメロディと共に流れ出るそれは、会場中を虜(とりこ)にして行った。

 サツキが歌い終わり頭を下げると、会場からクラシック会場のような拍手が沸き起こった。

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