ラノベブログDA王

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この世界から先生は要らなくなりました。   第02章・第18話

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八木沼 芽理依

 新兎 礼唖は、それ以上は反論しなかった。
かと言って、ボクの意見に完全に納得したワケじゃ、無さそうではあるが。

「キミたちは全員、高校二年だったな。それじゃあ授業を始める。まずは、高校二年の数学からだ」

 ボクは、白板やデジタルディスプレイを使って、授業を始める。
教科書と呼べるモノは、すでに多くが廃刊となってしまっていた。
理由はすぐに明白になる。

「あの~先生、アタシ数学、高校一年どころか中学くらいから解りません!」
 レノンが、威風堂々と手を挙げた。

「わ、わたしも、高一くらいから自信……ないかな?」
 モコモコ髪のアリスも、チョコンと手を挙げる。

 すると八木沼 芽理依が、二人を見下すように言った。
「わたしは高校三年の数学もほぼ、終えています。今さら高校二年の数学を勉強する気には、なりません。この場合、どうしたらよろしいのでしょうか?」

 これが、かつての学校教育における、大きな問題点だった。
ユークリッドの動画であれば、各自自分に合った動画を見るコトで問題は無く、学年も教科もバラバラの教育を、一つの教室で行えるのだ。

「もう一度、高校二年の数学を、基礎から学ぶ気にはならないか、メリー」
「ぷっ、メリーだって。羊みたいな名前だな」
 レノンが自分たちがバカにされた、腹いせに出る。

「お黙りなさい、バカライオン。体だけ大きく育って、頭の中は空っぽなアナタに、どうしてこのわたしが合わせなければならないのでしょう? おかしいとは思われませんか、先生?」
 メリーは教壇に立つボクに、鋭い視線を送りつけた。

「バカで悪かったな。でも胸の方にはぜんぜん、栄養が行ってないみたいじゃんか?」
「う、うるさい! 胸などそのウチ、大きくなります!!」
「あれェ? うるさいってのは、否定じゃなくて肯定だったよな、ライア?」

 レノンに同意を求められても、ライアは何も答えなかった。
新兎 礼唖は、正義を重んじる少女であり、時には独善となってしまっても、彼女には正義に対する規律と誇りがあるように思う。

「チェ、なんだよ。無視かよ?」
 椅子の上で、悪態をつくレノン。

「メリーは、十二月二十四日生まれだったよな? メリー・クリスマスでメリーなのか?」
 ボクは話題を変えようと、八木沼 芽理依の名前の謎について、本人に質問をぶつけた。

「それがどうしたと言うのです。先生には関係がないコトですよね?」
 アイボリー色のショートヘアの少女は、眉間にしわを寄せる。
「クリスマスなんて……」

「どうかしたのか、メリー?」
 ボクは、急に険しい表情となった彼女が気になった。

「あ、わかった! クリスマスと誕生日のプレゼントを一緒くたんにされて、ひねくれてんだ!」
「ア、アナタと頭のレベルを、同じにしないでください。キリスト教徒でもない日本人が、クリスマスを祝うなど愚かだと思っているだけです」

 メリーはそう言ったが、ボクにはそれが本心とは思えなかった。
「それじゃあメリー。キミに、頼みがあるんだ」

「なんでしょうか? わたしに先生の頼みを聞かなければならない、道理はありません」
「そう言うなよ。実はメリーには、レノンとアリスに数学の勉強を教えて欲しいと思ってるんだ」
 ボクが言ったとたん、メリーの表情が激しく変化する。

「どうして生徒であるわたしが、二人の落ちこぼれの面倒を見なければならないのです? わたしの貴重な時間を、割く価値がある行為には思えません!」
「そうかな?」「そうです!」顔を背けるメリー。

「アタシだってやだよ。こんなムカつくヤツに、どうして教えて貰わなきゃならないんだ?」
「それはメリーが、教えるのが上手いと思ったからだよ、レノン」
「はえ? どうしてそんなコトが解るのさ、先生!?」

「それについては、そのバカライオンと同意見です。意味が解りませんわ!」
 八木沼 芽理依は、相変わらずボクを鋭い視線で睨みつけていた。