ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第07章・第26話

f:id:eitihinomoto:20200806163558p:plain

人に教えると言うコト

「確かにボクが今後、プレジデントと呼ばれるコトは無さそうだ」
 ボクは言った。

 プレジデントとは、アメリカ大統領が有名なワケだが、大学の学長や官庁の総裁などもプレジデントであり、組織や団体の長がそう呼ばれるらしい。

「わたしが目指しているのは、先生と同じ『教師』と言う職業。つまりわたしは、プレジデントカルテットに相応しい人選では無いのよ」
 八木沼 芽理依(やぎぬま めりい)が、コーヒーを飲みながら苦笑いを浮かべた。

「どうだなか。確かにコイツは、一生先生をやっていそうだケドさ。メリーちゃんなら招来、学長とかになってそうじゃん」
 友人が、偉そうにのたまう……が、反論できないのが腹立たしい。

「ウ~ン、そりゃ言えてるっスね。メリーはライオンすら手懐ける、威厳があるっスからね」
 テミルの言う『ライオン』とは、レノンのコトだろう。

「人を調教師みたいに、言わないでちょうだい」
「当たらずも、遠からずって思うっス」
「お・だ・ま・り!」

「ヒェ、じょ、じょ~だんっスよ」
 調教師は、うるさいテミルを沈黙させた。

「……とは言え、先生ってのは現行の学校に居るアポイントメンターじゃなくて、コイツみたいに自分で生徒に授業をする先生のコトだろ?」
「そうです」

 教育民営化法案こと教民法が施行され、学校の先生が先生としての役割を終えた今の時代。
学校は、ユークリッドの教育動画を見る場所と化し、先生は生徒の学力に応じてどの動画を見るのが適しているかをアドバイスする、アポイントメンターに成り下がっていた。

「コイツは幸運にも、憧れの教師になれたが今の時代、本当の意味での教師になるのは、想像以上に大変だと思うよ」

「道が厳しいのも、ユークリッドの教育動画が優れているのも、わかっているつもりです。わたし自身、未熟な先生が授業をするなんて、無意味だと思ってましたから……」

「そう言えば最初の授業のとき、メリーとは白熱した討論をしたよな」
「フフ、そうでしたね。ナマイキな、小娘だと思ったでしょう?」
「す、少しだけな。だけどキミが先生を目指すなんて、意外だったよ」

「わたし自身が、1番意外だと思ってます。でも先生に、レノンとアリスの勉強を観るように言われて、2人が少しずつわたしが教えたコトを、理解してくれるようになって……」

「それで人に教える楽しさに、目覚めたってワケか。なあ、ひょっとしてお前もオレに……」
「それは無い」
「即答かよ!」

 ボクと友人の低品質な漫才にも、笑いが起きる。

「だけど、人に教えるってのは、逆に教えられる部分もかなりあるのは確かだな」
「え、そうなの。おれ、お前になにか教えたっけ?」
「勉強に関しては、ほぼ皆無だな」

 友人には色々と教わってはいたが、それは社会での生き方や、IT情報に関するコトが殆どだった。

「じゃあ、なんだよ。からかってんのか!」
「違うよ。ボクが、ボク自身に教えてるんだ」
「ハア、なに言ってんだ、お前!?」

「先生の言いたいコト、なんとなく解ります。わたしもレノンやアリスに教えてると、自分で自分の言ってるコトに感心しちゃうときがあるんですよね」

「だろ。実は人に教えるのって、自分自身の復習にもなるんだ。自分では覚えたつもりでいたコトを、いつの間にか忘れちゃっていて、それを再確認できたりする」

「あっ、それあります。最初は2人に教えてると、成績が下がるんだと焦ってましたが、逆に上がってるんですよね」

「そっかァ。オレも誰かに教えてたら、成績上がってたのかな?」
「お前はまず、人に教えられるくらい勉強しろ」

「そこからかよ。でもメリーちゃんが、優秀な先生であるコトはわかったよ」
「いえ……わたしなんかユミアに比べたら、まだまだです」
 メリーの自信が、少し揺らいだ。

「ユミアはもっと前から、ユークリッドのアイドル教師で、数学の知識は完璧です。人に教えるのも上手いし、まだまだ見習うところが多いって言うか……」

「そうでも無いと、思うぞ」
 ボクは言った。

 前へ   目次   次へ