ラノベブログDA王

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この世界から先生は要らなくなりました。   第05章・第31話

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モニタールーム

「ところでもう、撮影は始まっているのかしら?」
 瀬堂 癒魅亜は、嫌そうな顔をしながら問いかけた。

「イヤ、まだだよ。ここは一応はキミの部屋だからね。主の帰りを、今や遅しと待っていたところさ」
「アンタにしちゃあ、殊勝な心掛けじゃない」
 久慈樹社長に対しても、上から目線のユミア。

「それで、返事はどうなんだい。ユミア?」
「馴れ馴れしく、呼ばないでくれるかしら」
 ボクも普段から呼んでしまっているが、いいのだろうか……?

「まあ今回は、新型アプリのお試しって感じだし、みんな次第だケド」
「彼女たちは、キミらが来る前に意志を聞いて置いた。全員、異存はないよ」
「相変わらず、用意周到ね。だったら、問題ないわ」

「戦争にしろ、ビジネスにしろ、勝敗は事前準備に拠るところが大きいからね。では、お言葉に甘えて始めさせて貰うとしよう」
 既に部屋に入っていたスタッフが、社長の合図で一斉に動き出す。

「前もって説明した通り、今回配布したスマホには、我がユークリッドが開発を進めていたアプリ、ユークリッターが入っている」
「みんなのスマホに、アプリを入れるワケじゃ無いのね?」

「データを取りたいと、思っているからね」
「今さらデータ検証が、必要なワケ?」

「無論、自信はあるさ。あらゆる業界から選りすぐったスタッフが、開発に関わっているからね」
「だったら……」
 どうやら2人の会話にも、カメラが向けられている様だ。

「ソフトは、完全に近いと思うよ。だけど、実際にどんなワードが検索され、どんな感じでマインドマップが広がって行くのか、まだ未知数なんだ」

「なる程……実際の女の子たちの、生の検索データを採りたいってワケね?」
「ああ。彼女たちが検索しているワードは、貴重なサンプルになる」

「でも、それってプライバシー……あ、だから用意したスマホを渡したのね」
「当然ながら、事前に彼女たちの同意は取ってあるよ。フフ、完全に生の声とまでは行かないまでも、貴重なデータが集まって来ている……」

 天空教室の隣の部屋にはデスクが持ち込まれ、パソコンが複数台起動している。
大勢のスタッフが、大量に並んだモニターを見ながら、ヘッドセットで会話をしていた。

「さて、どんなワードが上がって来ている?」
 久慈樹社長も、スタッフの背中越しにモニターを覗き込む。

「王洲 玲遠(おおしま れのん)は、ヒーロー物アニメや、特撮のワードが大きく膨らんでいるな」
 モニターは、数値のみが映し出されるものもあったが、ユークリッターの画面を直接映しているものもあった。

「でも、おかしくない?」
 ユミアが、疑問を呈する。

「このアプリは、より多く検索されたワードが巨大な惑星になり、やがて恒星になって他の惑星を従えるんでしょ?」
「スキンに惑星を指定した場合、そうなるね」

「だけどアニメはともかく、特撮ヒーローなんてワードを入れるのって、レノンくらいじゃない?」
「レノンも、酷い言われようだな。でも、確かにそうか。天空教室には、女子生徒しか居ないワケだし」

「キーワードについては、スタッフによる事前モニターの他に、有名な検索エンジンの数値を参考に、仮のビッグデータを構築してあるのさ」
「ふ~ん。了解、そう言うコトね」

「なにが、なんだか……!?」
 2人の会話に、全然着いて行けないボク。

「他には、どんなワードが上がってる」
「はい、ランダムに切り換え表示いたします」
 久慈樹社長に釣られ、ボクとユミアをモニターを覗き込む。

「ハードロックや、ビジュアル系バンド……これはキアかシアちゃんたちね」
「司法試験に、過去の裁判に置ける判例……これは確実に、ライアだな」

「家賃収入、格安アパート物件、土地価格の推移……これなんか、テミルに決まってるわね」
「芸能人の裏の顔、スキャンダル特集……これは、アロアかメロエだろう」

「フフ、これは面白い。可憐なる少女たちの心の内が、赤裸々に暴かれていく」
 久慈樹社長が、無邪気に笑い転げている。

「ちょっと、アンタ趣味悪いわよ」
「キミたちだって、嬉しそうに読み上げてたじゃないか」
「そ、それは……」

「最終的に、ビッグデータがどう変化するか、愉しみだ」
「でも、たった2~30人くらいの入力で、大して変わらないんじゃないの?」

「ビッグデータに与える影響力は、平等では無いよ」
「え……そうなの?」
 モニターに釘付けだった少女が、素早く横を見る。

「勿論さ。彼女たちは今や、有名人の仲間入りをしているからね」
 ここ数日で、世の中に顔を知られるようになったボクの生徒たち。

「彼女たち以外の有名人も、ビックデータに与える影響が大きくなる様に設定してある」
「それって、ただの一般人の影響は少ないってコトですか?」

「当然じゃないか。どこの誰とも知れないヤツの意見に、大した価値は無いよ」
 久慈樹 瑞葉は、悪びれもせずに言い切った。

 

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