ラノベブログDA王

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この世界から先生は要らなくなりました。   第05章・第34話

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アプリ開発と裁判

「でも『ゴージャス姉妹』とか、『犯罪ボディ』みたいなワードが上がって来てるわよ」
「なんだって?」
 ユミアに聞き返す、久慈樹社長。

「ホ、ホントですか、ユミアさん」
「あ、上がっていますわ、お姉様」
 ゴージャスな犯罪ボディの双子姉妹は、食い入るようにスマホを覗き込む。

「アロアとメロエの名を売るチャンスですわ、お姉様!」
「ですわね、行きますわよ、メロエさん」
 再びカメラの前で、ポーズをとるアロアとメロエ。

「スマンが、カメラが切り替わってるコトは、少し黙っていてくれ」
 久慈樹社長が、ボクとユミアに小声で耳打ちした。
スマホを見ると、2人の後ろ姿が映っている。

「今度は、『美尻』とか『デカ尻』とか、上がって来てるわ」
「ヤレヤレ、これは調整が必要だね」

「でもここまで一瞬で、視聴者の意見が反映されるんですね。凄いアプリだ」
「先生、凄いのは他の外部アプリよ。ユークリッターじゃないわ」
「え、そうなのか?」

「現時点では他のSNSアプリのデータを、反映させているに過ぎないからね。とは言え、ユークリッターにも似た機能はある。そっちの試運転も、近々やらねばならないな」
 久慈樹社長が、替わりに答えてくれた。

「実際、こう言ったSNSアプリの場合、サーバーと端末アプリとの応答速度がモノを言うわ。しかもアクセスが増えれば増える程、サーバー負荷も増え、レイテンシー(待ち時間)が増加する傾向にあるのよね?」

「そこはクラウドメモリー上でシステムを走らせるコトで、反応底度はコンマ1ミリ秒まで可能なんだが、SNSともなると年中無休の常時運転が常識だろう?」
「なる程、むしろそっちが課題なんだ」

 2人の会話の、全てが理解不能だ。

「果たして、アメリカの巨人どもに対抗しうるシステムが、組めるかどうか」
「技術的に、難しいんでしょうか?」
「それもあるが、むしろ特許問題の方が深刻かな」

「特許……ですか?」
「ああ。SNSやサーバー運用のノウハウの多くは、アメリカ企業に特許として抑えられているからね。勝手に使用したと言って、訴訟問題になるのは既に想定済みなんだ」

「訴えられるのが、想定済みなんですか!?」
「相手が小さな企業なら、企業自体をTOB(株式公開買い付け=買収)できるんだが、大手となるとそうも 行かないからね」

 少し前までボロアパートに住んでたボクには、スケールが違い過ぎる話だった。

「裁判ですか。もしそうなった場合、見学させていただくコトは可能でしょうか?」
 正義を重んじる少女、ライアが社長に伺いを立てる。

「キミは確か、新兎 礼唖だったね。英語は得意かい?」
「はい。リスニングに重きを置いて、勉強しております」

「なら問題は無いよ。裁判はほぼ確定だ。ウチを訴えると想定される企業のリストも、作ってある」
「どこまで用意周到なのよ、アンタは」
「リスク管理はビジネスの基本さ、ユミア」

 そう言うと、久慈樹社長は部屋を出て行った。

「ライア。社長のあの口調じゃ、裁判はアメリカで開かれる可能性もあるぞ」
「ええ、そのつもりですから。渡航費用は、自分で何とか工面します」

「キミは、正義を重んじるコだ。だけどアメリカの場合、『勝った方が正義』みたいな考えもある」
「解かってます、先生。わたしは将来、弁護士になりたいと思っています。自分の正義を押し通せる程、甘い世界だとは考えていません」

 意外な答えだった。

「ライア、凄いね」
「そんなコト無いわ。まだわたしは、何も踏み出せてないもの。ユミア、貴女の方がユークリッドの数学講師として、結果を残しているじゃない」

「アレは……その……」
 歯切れの悪い、栗毛の少女。

「そうですわ、ユミアさん。わたくし達はアイドル路線ではございませんケド……」
「芸能界を狙うのであれば、貴女とはライバルですわ」
 ユークリッドのアイドル講師に、ライバル心を燃やすアロアとメロエ。

「ユミア、ボクたちもそろそろ、決めないと行けない時期に来てるんじゃないか?」

「ええ……そうね」
 瀬堂 癒魅亜は、小声で呟いた。

 

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