ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第6章・9話

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灼熱の絶望

 巨大な紅き魔物と化した『赤毛の英雄』は、口から『光と灼熱のブレス』を吐く。

「ぐわああああぁぁぁぁーーーーーーーーーーッ!!?」
 舞人は、『ガラクタ剣・ジェネティキャリパー』で、壊れた溶鉱炉のような攻撃を必死に耐えた。
けれども舞人の周りの草原は熱と衝撃はで、原型をとどめないほどに破壊される

「……ヤレヤレじゃのォ? 一瞬で川が蒸発してしまったでは無いか……」
 ルーシェリアは、教会の倉庫から選んで自らの剣とした、『エギドゥ・メドゥーサス』を抜いて、金髪の少年に斬りかかった。

「おっと、危ないなあ。でも、キミたちこそ一体何者だい?」
 そう言いながらもサタナトスは、自らの剣でルーシェリアを叩き落とす。
「この状況で生きているなんて、『名のある冒険者』か何かかな?」

「きゃあああああぁぁぁぁーーーーーーー!!?」
 漆黒の髪の少女は、地面に叩きつけられ土煙が上がる。

「ルーシェリアーーーーーーッ!!?」
 赤毛の魔王を前に、舞人は駆け寄ることすらできない。

「『ルーシェリア』……と言うのか? どこかで聞いた名だな?」
 舞人が叫んだ『名前』に、サタナトスは興味を示した。
「そう言えば、あの『役立たずの魔王』が言っていたような気もするが?」

「……その、役立たずとの魔王とは……何と言う名……じゃ?」
 砕かれた岩盤の中央で、血まみれの少女がサタナトスに問う。

「あんな雑魚魔王のコトなんて、忘れちゃったよ。でも、奴は確かにキミの名前を……!?」
 そう言いかけたサタナトスは、自身の左手の感覚がおかしいことに気付いた。
「……な、何だ……これは! ボクの左腕が!?」

「お主、油断し過ぎじゃぞ」
 邪眼が縦に三つ並んだ剣を掲げながら、ルーシェリアが言った。
「それは『石化』じゃ。我が剣『エギドゥ・メドゥーサス』の力……侮るで無いわ!!」

「フッ……このボクに、随分とナメたマネをしてくれるじゃあないか?」
 少年は事も無げに自らの左腕を切り落とすと、魔力を集中させて『新たな左腕』を作り出した。

「即興で作ると、こうなっちゃうんだよね。あとで、『気に入った左腕』を見つけないといけなくなったじゃないか!」
 サタナテトスが新たに生み出した左腕は、青緑色のウロコに覆われ、爪は鋭利に尖っていた。

「その能力……お主も魔族か?」
「まあ、そんなところさ。それより、やっと『キミの正体』が解ったよ」
 金髪の少年は、ヘイゼルの瞳に『漆黒の髪の少女』を写した。

「キミは、冥府の魔王『ルーシェリア・アルバ・サタナーティア』だね?」
「『こんな姿』に、成り果ててしまっておるがのォ。お主が言う『役立たず』とは、『モラクス・ヒムノス・ゲヘナス』のことじゃろう?」

「ムダに長くて、覚える気なくなるんだよ。そう言えば奴も、キミの配下の魔王だったね?」
「何百年も、顔も合わせてはおらんがの」

「だけど、配下も配下なら、主も『少女の姿』にされてしまうなんて……可笑しくてたまらないよ」
 少年は、呆れるくらい無邪気な表情で笑った。

「魔族なんて下らない! いずれ人間と共に、ボクの前にひれ伏す運命にあるのさ!」
「なる程……のォ? 妾も、お主の正体が読めて来たわ」
 今度はルーシェリアが割れた岩の上に立つと、金髪の少年をその『真紅の瞳』に写した。

 サタナトスとルーシェリアが対峙している間にも、舞人は荒れ狂う赤毛の魔王の猛攻を耐え凌いでいた。

「マ、マズイ……このままじゃ、街にまで被害が及んじゃう。なんとか、ここで食い止めないと……」
蒼髪の少年は、幼馴染みたちの居る街を守ろうと考え、踏みとどまる。

「……なん……だと?」
 サタナトスの表情から、笑みが消えていた。

「ヌシは……『魔族』と『人間』との、ハーフ……そんなところであろう?」
 漆黒の髪の少女の言葉に、サタナトスは焦りの表情を露にする。

「フッ……それがどうした! そんなコトァはどうだっていいだろ!?」
 金髪の少年は、急に苛立ち始める。

「……気が変わった。キミたちは、目障りだ。この場で始末する!」
巨大な魔王の上空で、サタナトスが右手を挙げる。

『魔王・シャロリューク・シュタインベルグ』が、全身の『氣』を口と両腕に集中させ、その三点の中央に巨大な光の弾が構成された。

「シャロリュークさん、目を覚まして!!?」
「無駄じゃ、ご主人サマよ。アレを喰らったら、一溜りもないのじゃ!」
 それは赤毛の英雄の剣、『エクスマ・ベルゼ』のように、真っ白に光輝いていた。

「こ……こんな姿にされ、更に街を破壊してしまったら……ボクの憧れの『赤毛の英雄』は……もう!!?」
絶望に支配されそうになりながらも、舞人は上を見上げて剣を構える。

「……キミはまさか、この攻撃を正面から受け止める気かい? キミの能力があれば、この場が灼熱地獄になる前に、逃げ切ることも出来そうなんだケドね?」

「あの街には、リーセシルさんや、ルーフレアさんが居る。ネリーニャやルビーニャも居る!」
 舞人は、背後にある『ニャ・ヤーゴの街』を思った。
「アイーナやマイーンたち八つ子も居るし、それに……パレアナだって居るんだッ!」

「ヤレヤレ……他人の心配かい? 下らないねえ。いくらキミが立ちはだかったところで、魔王と化したシャロリュークの灼熱の炎は防げやしないよ」
「やってやるさ……絶対に街を護って見せる!」


「だからムチャだと言っておろう!アレを喰らえば、ご主人サマとて……!?」
「ダメだ……シャロリュークさんに、そんなコトさせちゃいけない!!」
「気持ちは解かるが……今は……」

「『人間を魔王に変える能力』……それが、ボクの魔晶剣・『プート。サタナティス』の能力だよ」
すでに川は干上がり、舞人のガラクタ剣の結界の外は、灼熱地獄と化していた。

「でも、本当に彼を『魔王に変える』のは、『大勢の人間』の命さ!!」
 サタナトスは、眼下の少年を見下ろした。

「さあ、見るがいい。炎の英雄『シャロリューク・シュタインベルグ』が、『爆炎の魔王』として生まれ変わるときだよ!!!」

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