切断王女(ギロチン・プリンセス)
ステージには既に、ミニスターⅣ(フォース)コアの4人の少女が立っている。
「オイオイ、今度はアニソンかよ」
「あのコたち、女の子向けヒロインアニメで、声優やってる人じゃない?」
「ああ、聞いたことあるぞ。夏に始まった、ユークリッド・アニメチャンネルで人気のヤツだろ」
コミカルでポップな勢いのある曲を、カッコいいとカワイイが合わさったポーズを決めながら歌う、4人の少女たち。
「わたしは、クリッター・ピンク。サルガタナスを司る、相良 龍美奈(さがら ルミナ)だよ!」
曲が終わると、4人の真ん中に立っていた少女が、会場に向かって名乗りを上げる。
冥府のアイドル(ベルセ・ポリナー)だけあって基本色は黒いものの、低年齢層の女の子向けアニメのヒロインみたいに、ピンク色のフリルが付いた可愛らしい衣装を着た、ルミナ。
「我ら、『クリティカル・テック・ストライカー』ことクリッターは、世界の正義を守るために、今日も悪と戦う!」
金髪の長髪からピンク色のツインテールが長く伸び、背中からは黒の骨格にピンク色の被膜(ひまく)の、龍の翼が生えていた。
「アレ。チーム名は、全然可愛くないですね?」
「まあ……ね」
ボクの質問に、歯切れが悪そうに答える久慈樹社長。
すると舞台に、全身が黒いタイツの戦闘員たちが、ワラワラと登場する。
「出たわね、ダーク・フォレスター。アナタたちの悪事は、レラジエを司るクリッター・グリーンこと、大鳳 蒔世琉(おおとり ジゼル)が許さない!」
黒髪のポニーテールを長く垂らした少女が、長い名乗りを上げた。
ジゼルは、黒に深緑色のフリルの衣装を着ていて、背中には黒い鳥の翼を生やしている。
フリルスカートの後ろからは、深緑色のクジャクの羽が垂れていた。
「みんな、安心して。アイツらはヴァレフールを司るボク、クリッターイエローこと、麟堂 駆路琉(りんどう クロル)が、やっつけちゃうんだからね」
栗色のショートヘアから、鹿のような角を生やした、ボクっ子のクロル。
黄色のフリルが何重にも重なった黒いスカートを穿(は)き、大きなフサフサの金色の毛が肘(ひじ)や膝(ひざ)に生えていた。
「フォラスを司る、玄岩 穂田琉(くろいわ ホタル)こと、クリッター・ブルーです。が、頑張ります」
黒に青色のフリルが折り重なったスカートの、ホタル。
黒い甲羅を背中に装備し、全体的に重武装な衣装だった。
『ギェ、ギェ、ギェ、ギェ。出たな、クリッターどもめ』
『今日こそ、お前たちを亡きモノとしてくれる!』
遊園地などで催される、ヒロインショーのようなステージが、繰り広げられる。
「行くよ、ジゼル、クロル、ホタル。ダーク・フォレスターの好きには、させないんだから!」
クリッター・ピンクのルミナが、両方の腰に下げた刀を抜いた。
『ギャギャァアァーーーーッ!?』
真っ二つに両断され、左右に別れて崩れ落ちる、ダーク・フォレスター戦闘員。
「ゲゲ、真っ二つになって死んだぞ!?」
「あの戦闘員、中に人は入ってないのか」
「そんなコトより、演出グロくない?」
その後も臆するコト無く、敵を斬り捨てて行くルミナ。
「お前、知らないのかよ」
「クリティカル・テック・ストライカーは、見た目に反してやるコトえげつないからな」
「クリッター・ピンクは、切断王女(ギロチン・プリンセス)なんて呼ばれてるし」
「わたしも、容赦はしないわ!」
クリッター・グリーンのジゼルが、背中に背負っていた弓を取り出して、戦闘員に目掛けて放つ。
『ボギャッ!!』
複数の矢が戦闘員の頭部に命中し、胴体からもげてステージの床に転がった。
「ボクも、行ッくよォ!」
クリッター・イエローのクロルが、口から火炎弾を放つ。
焼け焦げ、燃え落ちる戦闘員たち。
「わ、わたしも、混ぜてください」
クリッター・ブルーのホタルが背負った甲羅の下部から、巨大なヘビが現れ戦闘員を締め上げる。
バラバラにされ、床にまき散らされる戦闘員だったモノ。
ヒロインのショーに思われたステージは、地獄絵図と化していた。
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