ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第10章・第52話

ある館での惨劇(さんげき)

「吾輩は、連続殺人事件の調査中に殺された……と、言っただろう?」
 神於繰 魔恕瘤(かみおくり マドル)は、設定の前提条件を観客たちに確認する。

「つまり……吾輩の他にも、殺された者が存在すると言うコトだよ、諸君。そして館で殺された者たちは、この墓地に埋められたんだ」

「そ、それが、卒塔婆(そとば)に書かれた、ヤツらってコトかよ」
「ホラーだと思ってたケド、ミステリーっぽくもなって来たわね」
「館(やかた)モノってコトね。わたしの、1番好きなシチュエーションだわ」

 察しの良い観客は、すでにステージの趣旨(しゅし)に気付き始めていた。

「まず、吾輩が館を訪れる前に、第1、第2の殺人事件が発生していた。事件が発生していなければ、探偵である吾輩が呼ばれるコトも無いのだからね」

 マドルは、ステッキをクルクルと回しながら、墓場の不気味なセットを歩き始める。

「最初に殺されたのは、伊鵞 兎愛香(いが トアカ)。館の主だった、伊鵞 重蔵(じゅうぞう)の孫娘でね。遺書が存在しなければ、遺産の相続順は7番目だった」

 3人の黒い外套(がいとう)の人物の内の、1人の前で立ち止まるマドル。
彼女の、お尻くらいまでの丈のマントが、生暖かい風に揺れていた。

「始めまして。悪魔イポスを司る、伊鵞 兎愛香と申します。トアカとお呼び下さい」
 マドルの前に立った人物が、外套を脱ぎ捨て話し始める。

 トアカは、金色の巻き髪を大きなピンク色のリボンで止め、後ろ髪も何本かの巻き髪に別れて背中に垂れていた。
ピンク色のプリンセスラインのドレスに、手には白い長手袋をしている。

「お察しの通り殺人事件は、伊鵞 重蔵の遺(のこ)した莫大な遺産絡みで起きたと推察される。彼は遺書を残していてね。遺書には、遺産の全てをトアカが受け取ると書いてあったのさ」

「わたくしの母は、伊鵞の血を引いておりました。多忙だった父と母が自動車事故で亡くなり、わたくしは、おじい様の看病と館の管理を任されました」

 目を閉じ、胸に手を当て自らの素性を語る、トアカ。

「おじい様も亡くなり、葬式を終えてしばらくすると、1人の弁護士が館を訪ねて来ました。その弁護士は、生前におじい様から預かった遺書があると、告げたのです」

「遺書は、弁護士協会が正式に受理したモノでね。親戚1同が集められ、開封されたんだよ。集められたのは、伊鵞 重蔵の次男夫婦と、3男夫婦。それに彼らの妹にあたる長女と、その夫だね」
 マドルが、補足した。

「わたくしの母は、伊鵞 重蔵の次女に当たります。遺書には、館を含めた遺産の全てを、わたくしが相続すると書かれておりました」

「吾輩の生前の調査では、次男は事業に失敗して重蔵に多額の借金があり、3男は仕事もせず世界中を飛び回って遊び呆(ほう)けているような男でね。正直、トアカさんが遺産を受け取るのも、至極当然(しごくとうぜん)に思えると言うのが、吾輩の感想だよ」

「ですが伯父や伯母は、遺言書の内容に納得したしませんでした。遺言を、わたくしが捏造(ねつぞう)したと言って、館に留(とど)まったのです」
 トアカの目から、涙がこぼれ落ちる。

「その夜、トアカさんは殺された。翌朝メイドの1人が、彼女が館のエントランスにあった大きなシャンデリアの下敷きになっているのを、発見する。ただし、身体だけの状態でね」

「よ、要するに、頭は切り落とされていたってコト!?」
「い、一体誰が、そんな酷(むご)いコトを……」
 観客席が、にわかにざわつく。

「彼女の頭部は、後に吾輩が発見するのだが、それは酷い有り様だったよ」
 マドルも、整った顔を歪めた。

「検視の結果、彼女の死因はシャンデリアの落下に寄るモノではなく、事前に絞殺された可能性が高いと判明した。つまりトアカさんは、絞殺された後に首を落とされ、シャンデリアに身体まで潰されたんだ」

「わたくしは、後ろから誰かに首を絞められ、殺されました。残念ですが、わたくしは犯人を目撃できなかったのです……」

 トアカが、醜くなった自身の頭部を、小脇に抱えながら言った。

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