ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

一千年間引き篭もり男・第08章・59話

巨人の群れ

「コ、コイツ、なんでだよォ! なんで復活してやがる!」
 タンガタ・マヌーで、汚水で構成された巨人の周囲を飛びながら、真央が叫ぶ。

「マケマケ、大丈夫ですか。外で、なにが起きてるんです!?」
 ドームの中に避難した人々を、放射能の水の脅威から護る、アシュピド・ケローネ。
動くことが出来ないセノンは、ドームの外の親友の身を案じた。

「セノーテの天井の大穴で、戦った巨人だ。ソイツに、追い回されてるんだ」
「それって、ヴァルナのバール・ヴァルナが倒したハズじゃ……」
「お前も、見たよな。だけど現に、アタシの目の前に……うわぁッ!?」

「大丈夫ですか、マケマケ。返事してください!」
 必死に呼びかけるものの応答は無く、心配になるセノン。
すると、避難民たちまで騒ぎ出す。

「ど、どうした。ドームが、ギシギシ音を立てて軋(きし)んでいるぞ!」
「外で一体、なにが起こっているのよ!」
「まさか汚水が流れ込んだ影響で、地盤が崩落したんじゃ……」

 ドームに避難した人々は、パニックを起こしつつあった。
外の様子も知れず、避難船(アフォロ・ヴェーナー)に置いてけぼりにされた人々。
心の拠りどころだったドス・サントス代表の死も、少なからず影響を与えていたのだろう。

「み、みなさん、落ち着いてください。直ぐに、宇宙から助けが戻って来ますから」
 アシュピド・ケローネから、セノンの声が響いた。

「こんな状況で、落ち着いてなんか居られるかッ!」
「宇宙船が戻って来たって、また少しの人しか乗れないじゃない」
「宇宙まで、なん往復すればイイと思ってんのよ!」

 ドームが軋む音は、鳴りやむどころかボリュームを上げ、さらに人々に恐怖を植え付ける。

「ねえママ、アレ見て。おっきな目が、こっち見てる」
 母親に抱かれた幼い少年が、ドームの天井の隙間を指差した。

「きゃああァァーーー、化け物よ!」
「きょ、巨人が、オレたちの居るドームを、押し潰そうとしてやがる!」
「もう、何もかもお終いさ……」

 アフォロ・ヴェーナーの背びれが出ていたドームの開口部から、2つ目の巨人が中を覗き込んでいた。

「マケマケの言った通り、巨人が復活してたんですね……」
 アシュピド・ケローネも、巨人を見上げる。

「でも、おじいちゃんが戻るまで、みんなを護るって決めたんです。絶対に、死なせたりしない!」
 巨人がドームを押し潰そうとするのを、なんとか阻止するアシュピド・ケローネ。

「セノ……聞える……」
「マケマケですか!?」
「そうだ。そう何度もヤラれてちゃ、カッコ付かないからな」

 タンガタ・マヌーの捉えた映像が、セノンの首に巻かれたコミュニケーションリングを通じて、彼女の脳裏に浮んだ。

「見えるか、セノン。これが、今の外の様子だ。巨人は、一体だけじゃねェ。ドームに張り付いたのホドじゃ無いが、小型や中型の巨人がとんでも無い数居やがる」

「わたしにも、見えるですゥ。なんでこんなに、増えちゃったんでしょうか?」
「アタシの推測だが、ヤツらの身体は汚水で出来てる。濁流が流れ込んで来てる影響で、身体のパーツはいくらでもあるって状況なんだ」

「確かに、そうですね。でも、まだ他にある気がします」
「他にって、なんだよ。アイツらは、タンガタ・マヌーの翼で切ったところで、直ぐに再生しちまう。水をいくら切ったところで、ムダって話さ」

「でも巨人さんたち、みんな目を持ってますよね。おっきなのが2つ目で、他の小さいのや中くらいの巨人は1つ目ですゥ」
「目が、巨人の核(コア)ってコトか?」

「わかりませんが、狙ってみる価値はありますね」
「わかったぜ、セノン。お前って、たまに頭イイよな」
「たまには、余計ですゥ」

「そんじゃ行くぜ、タンガタ・マヌー。狙いは、巨人たちの目だ!」
 蒼き身体の鳥人が、急降下から数体の巨人の目を、鋭利な翼で切り裂く。

「マケマケ、どうでしたか?」
「セノン、お前の言った通りだ。ビンゴだぜ」

 目を失った巨人たちは、身体が崩れて本来の汚水へと戻って行った。

 前へ   目次   次へ