ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第10章・第63話

昴瑠(すばる)

「吾輩は、ミステリアスな彼女に対し、不躾(ぶしつけ)と言った態度で望んで見た。彼女には、聞きたい情報が山のように有ったし、他に事件を解決に導く打開策も思い浮かばなかったのでね」

 重蔵の長女である、昴瑠(すばる)さんの部屋へと足を踏み入れたマドル。
ステージは墓場のままだったが、ボクも実際にマドルがスバルさんの部屋に立って、聞き取り調査をしている姿を思い浮かべていた。

「実の兄が亡くなって、感心が無いと言うのは、穏やかでは無いですね」
「兄は、当然の報いを受けたのでしょう。どんな死に様だったのかは知りませんが、地獄に突き落とされて当然の男です」

「そうでしょうか。実はここに来る前、絮瑠(わたる)氏の妻である朱雀さんにも会って来ました。彼女の口ぶりでは、ワタル氏に対しそこまで非道な人物との印象は、受けませんでしたが」
 マドルが、反論する。

「人間とは、表と裏の顔があるモノです。朱雀さんも、そこに気付いていないだけなのですよ」
 凛とした女性の声が、強い口調で言った。

「つまり貴女は、伊鵞 ワタルさんの裏の顔を、憎んでいるコトになりますね?」
 宣言通り、不躾な質問をぶつけるマドル。

「その通りです。彼は、伊鵞の血を引く人間でありながら、妹を……」
 凛とした声はトーンダウンし、最後には消えてしまった。

「妹さんが、どうされたのです?」
「い、いえ。なんでも、ございません」
 警部の問いに対し、会話を拒否する態度の伊鵞 スバル。

「貴女の妹さん……光瑠(ひかる)さんは、交通事故で亡くなったと聞きましたが?」
 ここで重蔵の次女の名が、ヒカルだと判明した。

「警察がロクに調査もせずに、事故だと断定してしまいました。ですがアレが事故だったかどうか、今でも疑問に思っております」

「ヒカルさん夫妻の自動車事故は、ワタル氏がなにか細工でもしたとでも?」
「兄は、車も少しは弄(いじ)れましたから」

「流石にそれだけでは、なんとも言えませんなァ」
 警部の声が、ため息交じりに見解を答える。

「貴女とヒカルさんは、とても中の良い姉妹だったと、警部から伺いました」
「え、ええ。あの子は愛嬌があって、誰からも可愛がられておりましたから」

「事故は、どんな状況で起きたのですか?」
「ヒカルは、結婚を契機に館を離れ、夫と共に新居で暮らしておりました。あの日、妹1家は館に帰省していて、幼いトアカも館に連れて来ておりました」

「第1の殺人の被害者となった、トアカさんもですか。なるホド」
 マドルが再び煽(あお)るような発言をすると、スバルの声はしばらく間を置いて話し始める。

「その日、兄が気まぐれに湖に行きたいと言い出して、ヒカルたちの乗って来た車を借り、出かけて行ってしまいました」
「兄とは、ワタルさんのコトですね」

「タケル兄さんは、自分のビジネスが忙しいのか、あの頃は館に寄り付かなくなってましたから」
「それで、ワタルさんはヒカルさん夫妻の乗って来た車を借り、湖へと出かけて行った。目的は?」

「釣りです。湖に、バスが放流されたと聞いて、子供みたいに……」
「帰宅されたのは、何時ですか?」

「夜も、遅くなってからです。それで、本来は夕方には帰省するハズだったヒカルたちも、夜の道を走るハメになったんです」

「それが原因で、事故が起きたと?」
「わかりますん。現場に居たワケでも無いですから。ですが、事故の1因が兄であるコトは、間違いないでしょう」

「ヒカルさん夫妻が事故で亡くなられた後、貴女は夫妻の遺児である、トアカさんをまるで自分の娘のように可愛がった?」

「親子でしたからね。トアカには、何処となくヒカルの面影がありました。それが、あんなに惨(むご)い殺され方をするなんて……」

 スバルの声には、怒気が籠っていた。

「トアカさんは、この館の維持管理を任され、重蔵氏の世話も担っていたのですよね?」
「あの子には、幼いながらも館を取り仕切る才能がありました。わたし達夫婦が後援するカタチで、トアカに館を任せたのです」

「それは、トアカさんに重蔵氏の遺産を、継承させようとも見て取れますが」

「あのコも、伊鵞の血を引く娘です。遺言のように全部とは言いませんが、1部なら継承して当然ではありませんか?」

 墓場のステージが、再び闇に包まれる。
それは、スバルへの聞き取りの終了を意味していた。

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