ミノ・テロぺ将軍対3体の魔王
暗雲から舞い降りて来た、雲の龍(クラウドドラゴン)の群れ。
地上の闘技場に集った観客たちを、次々に呑み込んで行った。
「うわあァァッ! なんだ、なんだ!?」
「ま、周りが見えねェ。た、助けてくれェーーーッ!」
「ギャアアアア!?」
雲の龍は稲妻を内包しており、雲によって視界を奪われた人々を感電死に追いやる。
ほぼ男性で埋め尽くされた観客席は、阿鼻叫喚(あびきょうかん)の地獄絵図と化して行った。
「見て、ルスピナ。闘技場の方、なんだか大変なコトになってる!」
港町の宿屋の2階から、闘技場のある丘の上を見上げながら、少女が叫んだ。
彼女は、ハンターグリーンの髪を背中で纏め、青っぽい肌にターコイズブルーの瞳をしている。
「ホ、ホントだ。船長さんたちや、イオ・シルたちが心配だよ、ウティカ」
コーラルグリーンの瞳の少女が、不安げな顔をした。
彼女は、コバルトブルーの髪をお下げにして左右に垂らしている。
「ベッドメイキングも終わったし、行ってみよう」
「そうだね。でも、ご主人や女将さんに言わなくて、大丈夫かな?」
「ルスピナったら、マジメなんだから。言ったら止められちゃうに、決まってるでしょ。ホラ、風の精霊を呼ぶから、掴まって!」
「わ、わかったよ、ウティカ」
メイド服姿の2人の少女は、宿屋の2階の窓から飛び出すと、風を纏(まと)い舞い上がって行った。
闘技場では、大魔王と化したダグ・ア・ウォン率いる、魔物の軍団が暴れ回っている。
「クッソ! ダグ・ア・ウォンが魔王にされちまって、オレらの敵になるとはよ。テリオスは魔王と戦ってるし、雲の龍はオレがなんとかするしかねェか!」
ミノ・テロぺ将軍は、アーク・トゥルスを抜き、雲の龍が群がる観客席に向かおうとした。
「テメー、どこ行こうってんだ?」
「お兄さん、けっこうカッコいいっしょ」
「だども、ここは通さないんだなァ!」
雷光の3将が1人の前に、3体の魔物が立ちはだかる。
「なんだァ。雑魚が3匹立ちはだかったところで、オレを止めれるとでも思ったか!」
ミノ・テロぺ将軍は、ノコギリ状の刃をした剣で、3匹の魔物に戦闘を仕掛けた。
「油断するで無い。そヤツらは……」
ルーシェリアの声が届く前に、3体の魔物が牙を剥(む)く。
「雑魚たァ、聞き捨てならねェな。オレは、蒼玉の魔王メディチ・ラーネウス。蒼流槍ジブラ・ティアを、その身で味わいな!」
蒼い海龍のような姿をした魔王の槍が、ミノ・テロぺ将軍を襲った。
「グッ、グワァァァーーーーーッ!?」
槍に付いた鋭利な無数の歯が、将軍の全身を切り裂く。
「キャハハ。お兄さん、ボロボロっしょ。ダッサーーイ」
血まみれになったミノ・テロぺ将軍を、尖った髪の少女の姿をした魔王が、手に持った剣山の様な槍で跳ね上げた。
「アタシは、黄玉の魔王ペル・シアっしょ。お兄さん好みだから、キレイな顔が歪むのを、見て見たいっしょ」
跳ね上げられ落ちて来たところを、剣山の槍で串刺しにする、ペル・シア。
「グアアアァァァーーーーッ!?」
「ギャハハ、いい響きっしょ。アタシの破黄槍バス・ラスを、たっぷりと味わうっしょ」
苦痛に顔を歪める将軍の悲鳴を聞き、高笑いをする黄玉の魔王。
「こ、今度は、オデの番なんだな」
巨大な山のような身体の魔物が、ゆっくりと動き出した。
「しゃーないわね。好きにするっしょ」
メル・シアは、剣山の槍に突き刺さったミノ・テロぺを、同胞の前に放り出す。
「すまねェだ。オデは、橙玉の魔王ソーマ・リオ。オデの橙引槍カニヤクマリも、受けて欲しいんだな」
巨漢の魔王の槍は、先端がモップのように広がっていて、ミノ・テロぺ将軍を掃除機のように吸い込んでしまった。
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