ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第02章・第04話

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久慈樹 瑞葉

 カーテンが勝手に開かれた窓に近づくと、そこからセレブな街が一望できた。

「スゴイな。立ち並んだ高級マンションも、公園もまるでミニチュアのようだ」
 ボクは改めて、瀬藤 癒魅亜の生活レベルに驚かされる。

「そんなコトは、どうだっていいわ。この部屋がキレイかなんて……ね」
 ボクは目の前の女子高生に、自分が雇われるために面接に来たコトを思い出した。
「ガロア理論……マクスウェル方程式……大学レベルの本が並んでいるな」

 巨大な本棚に並んだ書籍の何冊かは、ボクのアパートのラックにも並んでいた。
「別にどうってコトないわ。わたしにとっては、普通の問題集よ」
「ボクも大学生の頃は、苦労して頭に詰め込んだんだがな……」

 彼女は、多くの大学生や受験生の苦労を知ってか知らずか、サラリと言ってのける。
「それでキミは、どうして家庭教師を雇いたいんだ? 他に苦手な教科でもあるのか?」
 ボクは、その可能性は小さいだろうと思いつつも、彼女に問いかけた。

「ユークリッドは、一人の教師が一つの科目を受け持つの」
 彼女は、巨大な冷蔵庫からペットボトルを取ってきて、高価そうなグラスに注ぐ。
「どうぞ……」「ど、どうも」グラスの中身を口に含むと、無糖紅茶の味がする。

 場所とグラスの質を除けば、ボクがアパートでいつもやっている作法と変わらない。
「わたしが他の教科を受け持つことは無いし、他の先生方が数学をやるコトなんて無いと思うわ」
瀬藤 癒魅亜は言い切った。

 彼女が思っている程、世の中は不変では無いと思いつつも、ボクは黙って紅茶を飲む。
「キミが、家庭教師を雇いたい理由なんだケド……」
「そうね……」すると彼女は、手にしたブラシで髪を梳かし始める。

 エンジェル・トリックブラシは、彼女の髪をアニメのようなグリーンへと染め上げた。
「どう、ユミアだよ? みんなに勉強、教えてあげるね♪」
瀬藤 癒魅亜は、声までアニメ声優のように変化させる。

「スゴイな、一瞬で内面まで変えられるのか?」
 けれども、ボクの驚きの顔は一瞬で凍り付く。
「そんなワケ無いじゃない……」重たい声だった。

「こっちよ、付いて来て」
 動画では決して見られない、レアな表情のユミアが歩き出す。
「ど、どこへ行くんだ?」「いいから……」不機嫌そうな声が、前を歩く少女から聞こえる。

「これはまた、高そうな照明やら機材が溢れてるな」
 ドアを開けた先にあった部屋は、動画の撮影スタジオだった。
「今どき、テレビ局ですらこんな設備は揃ってないんじゃないか?」

 ユミアは無言でスポットライトを付けると、自分に光が浴びるようにセットの前に立った。
「わたしにもう一度、授業のやり方を教えて欲しいのよ……」
沈んだ顔をしながら、ポツリと呟くユミア。

「何を言っているんだ?きみは、ちゃんと授業が出来ているじゃないか?」
 ボクも面接にあたって彼女の動画を見たし、悔しいが素直にスゴイとも思った。

「アレは、今のわたしじゃ無い……二年前のわたしなのよ」
 彼女は、真っ白な教壇に立って授業を始める。
それは紛れもなく、ユークリッドの女子高生アイドル教師『ユミア』の姿だった。

「はあい、そこのキミ。今日も元気してる? 今回は、二次関数について教えてあげるね」
 授業は、とても解かりやすく進められる。
「何か……動画と違う?」だがボクは、不自然な違和感を感じていた。

「そうなんだ……彼女は、笑えなくなったのさ」
 うしろから声がした。
振り向くと、開けっ放しのドアのところに、一人の男が立っている。

「アナタは……どこかで?」ボクは、彼の顔に見覚えがあった。
「オイオイ、傷つくなあ。これでもそれなりに、有名人になったつもりだぜ?」
 考えるまでも無かった。

「そ、そうか……久慈樹 瑞葉!?」
 彼は、ユークリッドの現社長だった。