ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第03章・第23話

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クラスメイト

 その後、ボクたちは泣き崩れる少女たちを慰めながら、公園を後にした。

「先生、やっぱアタシ、天空う教室には行けねェよ」
 踏切の音が鳴り響く、線路横の小道を歩きながらタリアが呟く。

「正論で言えば、悪いのはお前じゃない」
「でも、アタシも手を挙げちまったしな」

「だけど、女の子がスカートの中盗撮されてたら、普通助けるじゃん!」
「そうとも限らんだろ」
「むしろ大勢の男相手に立ち向かえる女の子が、どれくらいいるでしょうか」

「先生もライアも、どっちの味方なんだよォ」
「世の中、お前の頭の中身みたく、単純じゃないってコトだ」
「タ、タリアまで、酷いィ」

「だけど、レノンのようにシンプルに考えるのも、時には必要かもな」
 ボクは隣を歩いていた、フードの少女に語りかけた。
「もう一度言う。一緒に、天空教室に行こう」

「だ、だけど、そんなコトをしたら、またみんなに迷惑を……」
「今回の一件、最初に犯罪を犯したのは、明らかに相手方です」
「そーそー、タリアは襲われてた女の子を、助けたんだから」

「で、でもさぁ……」
 フードを深く被り、俯く少女。

「もう、いつまでそうやって、いじけてるつもり!」
 目の前から、聞き覚えのある声がした。

「悪いのは全部、卑劣な犯罪をした男共って言ってるじゃない」
「ユ、ユミア……どうしてここに?」
 小さな交差点で、瀬堂 癒魅亜が腰に手を当て立っている。

「みんなが心配だから、わたしも来たの!」
 顔を赤らめ、ソッポを向く栗色の髪の少女。
「先生も、頼りないしね……」

「キ、キミ一人で……地下鉄にも、乗れたのか?」
 アナログなコトは、大の苦手なデジタル好き少女。
「う、うっさい。そ、それくらい……」

「そんなワケないでしょ。切符の買い方もわかってないんだから」
「ボクたちが付き添って、来たんだよ」
 工場の塀の影から、星のように明るい金髪の双子が現れた。

「カトル、ルクス……そうか、キミたちがユミアを助けてくれたんだ」
「ち、違うわよ。一人で地下鉄くらい乗れるし」
「でも、三人で来たんでしょ?」

「そ、それは……彼女たちが勝手に付いて行くっていうから、仕方なく……」
 言葉に切れがない、ユミア。

「何はともあれだ、タリア」
 ボクがフードを外すと、中からダークブラウンのショートヘアが現れる。
「こうして大勢のクラスメイトが、キミのコトを心配している」

「そうよ。他のみんなも、教室で待ってるわ」
「い、いいのか……本当に?」
 クルクルとしたクセ毛の少女は、ユミアに問いかけた。

「当たり前じゃない、みんなで帰りましょ」
「そろそろ、お腹も減ったしさ」
「それに、午後から授業もありますしね」

「ユミア、レノン、ライア……アリガトな」
 タリアは少しだけ、涙声だった。

「ところでユミア。実は、彼女たちのコトなんだが……」
 後ろに付いて来ていた、テニスサークルの女子中学生。

「このコたちが、事件の被害者ね。さぞかし怖かったでしょうに」
 同じように、男たちに襲われそうになった経験のあるユミア。
口には出さなかったが、『あの時』も相当怖い思いだったのだろう。

「彼女たちも天空教室に……ってのは、無理かな?」
「べ、別に、無理ではないけれど、どうして?」
「今回の事件は、まだ終わっていない。これから裁判が始まるくらいだ」

「つまり、彼女たちを加害者である男たちから、遠ざけたいのですね」
「確かにアイツらなら、何をしでかすかわからないよ」
 ライアとタリアが、ボクの意図を理解する意見を言ってくれた。

「ようするに事件が終わるまで、このコたちをマンションで保護するのね」
「ああ。セキュリティ万全の高級超高層マンションで、寝泊りするワケだ」
 それ以上に少女たちの安全を図れる場所を、ボクは思いつかない。

「キミたち自身は、どうかな?」
「え、でも両親が、なんと言うか……」
「だけど、聞いてみようよ」「そ、そうね」

 それぞれの親に連絡を取った結果、全員が天空教室での生活を許可された。

 

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