ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第06章・第09話

f:id:eitihinomoto:20200806163558p:plain

急襲的再会

「ではカメラ回しますんで、皆さん配布してあったスマホで、各自ユークリッターを起動して下さ~い」
 場慣れした女性スタッフの指示で、一斉にアプリを起動する天空教室の生徒たち。

「前回のプロモの時は、先生がヘンなコト言うモンだから、大変なコトになっちゃったケド、今回は気を付けないとね。わたし達、影響力ハンパ無いんだから」

 ゴシップ番組やゴシップ週刊誌の、格好のネタにされたユミア。
自分のみならず、周りの少女たちにも警戒を促(うなが)す。

「確かに今のわたくし達は、有名女優やアイドル顔負けの影響力ですものね」
「そうですわね、お姉さま。わたくし達も、ユークリッターの検索上位に来ております」
「ですが、検索1位の先生とユミアさん関連の話題には、遠く及びませんわ!」

「イヤ、別に好きで話題にされてるワケじゃないから。いい迷惑よ」
 芸能界でのし上がって行こうとしているアロアとメロエ。
2人との価値観の違いに、ユミアは軽く戸惑った。

「でも、前回はアメリカのSNSの統計機能を代用で使って話題を表示させてたケド、今回はユークリッター自体の話題のアップ機能で統計を取ってるのね」

「はい。ユークリッターは、ベータ版の配布を開始致しました。日本で10万人、全世界で200万を目安に、抽選で先行配信したんです」
 ユークリッドの大株主であるユミアの問いかけに、仰々しく答える女性スタッフ。

「倍率、スゴかったみたいっスよ。なんせ、先生とユミアの衝撃の告白があった後っスからねェ。自分も話題に参加してみたいって、みんな思ってるんじゃ無いっスか?」
 プニプニ不動産の看板娘である、天棲 照観屡(あます てみる)が言った。

「こっちは勝手に話題にされて大変だってのに、テミルはお気楽なんだから」
「実はウチ、恩恵受けてる派なんスよ」
「ハ、どう言うコト?」

「実は、先生に紹介した新居が、プニプニ不動産の物件だって密かに話題になってるんスよ。まあ、二十代の独身男が持つにしちゃあ立派過ぎる家だし、かつてアロアとメロエとご両親の芸能一家が住んでた、いわく付きの家っスからね」

「人の家庭の過去を、勝手にいわくにしないで下さるかしら!」
「勝手にいわくにしてるのは、マスコミやゴシップ誌っスよ?」

「わたくし達の家が話題になって、さぞや儲かっていらっしゃるんでしょうねえ?」
「お陰サマでプニプニ不動産にお客さん殺到で、ウハウハっス」

「きいいいぃぃ。なにがウハウハよ。こうなったら、わたくし達も直ぐにビッグになって、家を買い戻しますわよ、メロエさん!」
「ええ、お姉さま。絶対に、世間を見返してやりますわ」

 商売人気質のテルミに、鼻息を荒くするゴージャスボディの双子姉妹。
その様子も、しっかりとカメラに収まっていた。

「今日は、あっちが話題になりそうね。わたしはなるべく、ひっそりと目立たない様にしなくちゃ……」
ユークリッターで盛り上がる少女たちに紛れて、カメラから身を隠そうとするユミア。

 けれどもその時、天空教室の入口ドアが開いた。

「ワーオ、ユミア!」
 ドアから颯爽と現れたのは、真っ白なタキシードの様なスーツに身を包んだ金髪の男だった。

「うわ、いきなり外人が入って来たぁ!?」
「で、でも今、ユミアの名前を呼ばなかったか?」
 レノンとタリアの、荒くれ少女コンビが顔を見合わす。

「うん。確かに呼んでいたね」
「ユミアの知り合いかな?」
 カトルとルクスのボーイッシュな双子も、ユミアの方を見た。

「し、知らないわよ、こんな人。一体あなた、誰……」
 ユミアが反論している合間にも、男は彼女に近づき頬にキスをした。

「……んなッ!?」
 顔を、真っ赤に染める栗毛の少女。

「久しぶりなのに酷いじゃないか、ユミア。ボクのコト、忘れちゃったのかい?」
 男は、軽くウェーブのかかった金色の髪を、手櫛で掻き上げる。
天空教室に設置してあった、全てのカメラが2人に向けられた。

「わ、忘れたもなにも、アンタなんか知らないわ。一体、どこのどいつよ!」
 ユミアは、強引に男を跳ね除ける。

「ワタ~シは、マーク・メルテザッカー。貴女とは、結婚した仲ね」
 男は、好奇心に満ちたサファイアブルーの瞳に、少女を映した。

 前へ   目次   次へ