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ある意味勇者の魔王征伐~第11章・12話

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迫りくる絶望

 これまで、シャロリューク・シュタインベルグを始め、魔力の高い数々の人間を魔王へと換えて来た剣、『プート・サタナティス』。

「さて、キミたち双子司祭は、どんな魔王になるのか愉しみだねえ」
 サタナトスは、自慢の魔晶剣を振りかざした。

「クソ、マズイぜ。テメーは、邪魔だァ!」
「それが我が役目よ。サタナトス様の元へは、行かせぬ!」
 クーレマンスは、魔王アクト・ランディーグの相手で手一杯で、2人を助ける余裕は無い。

「リーセシ……逃げ……て……」
「残念だケド、坊や。そこで可愛らしいお仲間が、魔王になるのを見ていらっしゃい」
 瀕死の舞人を蹴り飛ばす、魔王ガラ・ティア。

「斬撃耐性の防御魔法だよ、リーフレア」
「ね、姉さま。斬撃を防ぐだけでは、サタナトスの剣には意味が……」
「いいから、言う通りにして!」

「新たな双子魔王の、誕生だよ!」
 サタナトスは、防御壁を張る双子司祭に向かって、プート・サタナティスを振り下ろした。

「きゃああああーーーーーッ!!」
 2人の少女の悲鳴が、海底の街に響く。

「防御魔法のお陰で大したダメージも無いようだケド、ボクの剣はキミたちを魔王に……!?」
 リーセシルとリーフレアの元に、歩み寄っていた足を止めるサタナトス。

「残念ながら、そうはならなかったみたいね」
 リーセシルは、大切な妹を抱きながら立ち上がった。

「ど、どう言うコトでしょうか。どうしてわたし達は、魔王にならずに済んだのでしょう?」
「わからない? 舞人くんの剣と、同じだよ」

「舞人さんの、剣って……あッ!」
 姉に問われ、ハッと気付く妹。

「舞人さんの剣は、魔王ガラ・ティアを攻撃したのに、相手を少女の姿に変えられませんでした」
「うん。そして今、サタナトスの剣も、わたし達を魔王に変えられなかった」

「フッ。つまりキミは、2つの剣がその機能を停止しているのを、気付いていたんだね」
 サタナトスが、双子司祭の言葉を受け事態を把握する。

「ええ、そうよ」
「中々に賢(さか)しいじゃないか、リーセシル。天才魔導士との呼び声が高いのも頷ける」
 サタナトスはそう言いながら、2人から距離を取った。

「舞人くん、大丈夫?」
「今、回復魔法をかけますね」
 リーフレアの回復魔法で、傷が癒え体力も回復する舞人。

「有難うございます。2人が魔王にならなくて、ホントに良かった。でも、どうして……?」

「因幡 舞人。どうやらキミの剣とボクの剣が、斬り結んだのが原因のようだ」
 舞人の疑問を、敵であるサタナトスが答える。

「さて、どうしたモノかな。流石にボク自身の剣がこの有り様じゃ、出直す他は無いか」
 サタナトスの前に、2人の魔王が立ちはだかる。

「オイ、一体何がどうなってやがる!?」
 鮠(ハヤ)のような身のこなしで、舞人たちの前にも1人の男が現れた。

「バルガ王子、ご無事だったのですね」
「ああ。だが親父と7将軍が、魔王にされちまった。お袋が1人で、この海底都市の泡のドームを支えているが、もう長くは持たねえ」

「女王様は、ご無事なんですか?」
「今んところはな。崩壊した海底神殿のご神体でもある、深海の宝珠に隠れている」
「海皇の宝剣『トラシュ・クリューザー』を生み出したとされる、神聖なるホタテ貝だね」

「確かに厄介なホタテ貝ではあるが、7将軍のウチ3人を向かわせている。ホタテの殻が開くのも、時間の問題じゃないかな?」
「こっちだって、ティルス達が戦ってる。簡単には、堕ちないぜ」

 舌戦で火花を散らす、サタナトスとバルガ王子。

「仕方ない。ここは一旦、引くとしよう。双子司祭と、クーレマンス。覇王パーティーの半分を相手に剣が機能しないんじゃ、流石のボクも分が悪いからね」
 サタナトスは、背中に天使と悪魔の翼を生やす。

「オイ、待て……って、なんで戦力に、オレが入ってないんだ?」
「簡単な話さ。雑魚は、含めても仕方ないじゃないか」
「誰が雑魚だ、オラァ!?」

「まあ、せいぜい頑張るんだね。キミの父上が、海の大魔王として目覚める、その時まで」
 金髪の少年は海底ドームの天井まで飛翔すると、それを突っ切って飛び去って行った。

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