ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

ある意味勇者の魔王征伐~第7章・3話

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透明化と水中呼吸

「当たり前ですよ。さっさとココを出ましょう。見つかったら、ただじゃ済みませんよ!」
 蒼い髪の少年は、浴場に誰かが入ってこないかと気が気でない。

「……だろうな。何たって今回は、客人として『神澤・フォルス・レーマリア皇女殿下』まで招かれてるみてェだからな~♪」

「ええッ!? レーマリア皇女サマが、この街に来てるんですか?」
「ああ。レーマリア自らが、何でもオメーに会うために来てるって話だぜ?」

「ど、どど、どうしてボクなんかに?」
 皇女が自分に会いたい理由が解らない。

「……って、今はそれどころじゃ無いですよ。皇女サマの入浴を覗いたりなんかしたら!?」

「まあ死刑はねえと思うが、去勢されちまうかもな? オレ、女になってて良かった~♪」
「ひいぃぃぃーーーー!? 良くない! ボクはどうなるんですかぁぁぁーーッ!?」

「バレなきゃいいんだよ。今回はカーデリアやリーセシルたちも呼ばれてるから、久しぶりにアイツらがどれだけ成長したのかも、拝んでやっかな~?」
「久しぶりって……ええッ!?」

「つっても、ガキの頃の話だケドなあ? カーデリアとは幼馴染みだし、リーセシルやリーフレアとは、アイツらがまだ修行中で『神殿』にいた頃に知り合ったからな」

「ボクも子供の頃は、パレアナと一緒にお風呂に入ってましたけど……」
「おッ、そのパレアナってコも呼ばれてるぜ。彼女の成長具合を確かめたいだろ?」
「そりゃあ、まあ……って、ダメですよ、そんなの! 殺されてしまいます!」

 生真面目な蒼髪の少年に対し、赤毛の少女は大きな湯舟でバタ足をしながら挑発する。
「オメー『伝説の勇者』になりたくね~のか? 歴史に『名』を刻めるチャンスだぜ!」
「刻みたく・あ・り・ま・せ・ん! どんな意味の『伝説の勇者』なんですか!?」

 そうこうしていると、浴場の脱衣所の辺りから少女たちの声が聞こえ始めた。

「きゃー、レーマリアってば、随分と成長したわね。まったく十五歳とは思えないわ!」
「あの、カーデリアさん、良いんですか? 皇女サマに対して……その」
「ああ、パレアナ。いいの、いいの! 皇女サマとは顔馴染みな仲だから」

 可憐な声の中には、舞人にとって聞き覚えのあるモノも混じっていた

「そうですね。カーデリアさんは、姉みたいな感じです」
「そ、そうなんですか!?」

「『皇女』なんてホントは、重荷なだけなんですよ、パレアナ。お風呂の中くらいは、十五歳の普通の女の子でいさせて下さいね」

「……マ……ママ、マズイですよ、シャロリュークさん!?」
 とてつもない窮地に追い込まれる、舞人。
「この浴場、脱衣所からでないと外に出られないじゃ無いですかぁ!」

「心配ね~って。『こんな時』のために用意周到、準備してんだ」
 赤い髪の毛の中から、小瓶と小石を取り出す少女。
「『透明化ポーション』と、『水中呼吸』のエンチャントされた丸石だぜィ!」

「どんな時のために用意してたんですか! アナタ、ホントに英雄なんスか?」
「お、入ってくるぜ!!」
 赤髪の少女は、舞人の言葉など完全に無視する。

「魔法だと、リーセシルたちに気付かれるからな~。さっさとポーションを呑んで、丸石を口にくわえな。五分は持つからよ」

「ええッ!? 五分しか持たないんですかぁ!」
 舞人の頭から、血の気が引いて行く。

「五分で会議が終るワケ無いですよねえ?」
「ん、言われて見ればそっか? ……マズったな」

「どうするんスかぁーーーーーーーーーーーーッ!!?」
「しゃ~ない、オレのをやるよ。今のオレは女だし、まあ何とかなるだろ?」

 舞人はシャロリュークからそれらを受け取ると、『透明化のポーション』をいっきに飲み干し、『丸石』を口にくわえて湯船に潜水を開始する。

 ……と同時に、脱衣所から少女たちが入って来た。

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糖尿病で入院中に描いたイラスト・004・キング・オブ・サッカーのトップ絵

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倉崎 世叛と御剣 一馬

 倉崎 世叛と御剣 一馬の二人を、色をつけてみました。

 一馬に着せようとイメージしていたユニホームは、オランダの名門・アヤックス・アムステルダムのものでした。
アヤックスは、白地に真ん中が赤なんですよね。

 でも、倉崎が創った一馬のチームである、『デッドエンド・ボーイズ』のイメージと、ちょっと違うかなあと?

 デッドエンドは、『行き詰った』……みたいな意味です。
なので黒と青という、ネガティブっぽいカラーにしてみました。
ちなみにエンブレムは、進入禁止の道路標識です。

プロのサッカーチームのユニホーム

 倉崎のユニホームは、74年ワールドカップの、オランダ代表ユニホームをイメージしてました。
だけど彼の着てるのは、代表のモノではなくクラブチームのユニホームなんですよね。
なので、スポンサーロゴが入ったりします。

 日本人の彼が代表になる場合、やっぱ日本代表の青いユニホームを着ますからね。

 スポンサーは、『ユー・クリエイター・ドットコム』。
どこかで聞いたコトあるような?
(この世界から先生は要らなくなりました。に登場する、架空の動画制作会社ですね)

 ボクが当初、イメージしていたユニホームとは、かなりかけ離れてしまってますが、これはこれでアリかなと。

 一馬のデッドエンド・ボーイズは、イタリアのアタランタなんかに近い気がします。
倉崎のは、架空の日本のプロサッカーチームなんで、それっぽい感じ?
(たぶんJリーグは、権利上使えないだろうから、架空のリーグにしちゃってます)

ある意味勇者の魔王征伐~第7章・2話

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フォンテーヌ・デ・ラ・デエス

「ええッ!? 忍び込むなんて、マズく無いですかぁ!?」

 舞人は城に忍び込むと言い出した、赤毛の少女に意見した。
「大丈夫だって、舞人。こーゆーのは、昔から得意なんだ!」
「得意とか、そ~ゆ~問題じゃあ?」

「だいじょうぶだって。元々オレは城にいたんだし、バレなきゃ問題ね~よ」
 少し前まで赤毛の英雄と呼ばれていた少女は、聞く耳を持たない。

 死角から器用に、城壁の高さまで伸びている木をてっぺんまで登ると、舞人に向ってロープを垂らす。

「ホラ、太い枝に結んでおいたから、お前も早く登ってきな」
「ホントにいいんですか? みつかって怒られても、知りませんよ」
 先パイの英雄に催促され、仕方なく木を登る舞人。

「なんだ、お前。ロープなんて無くても、余裕で登ってこれるじゃね~か」
「子供の頃は、よく登ってましたからね」「オレもだ、舞人」
 舞人は、憧れの英雄と共通点があるコトがうれしかった。

「まったく、警備がなっとらんなあ。こんなに簡単に、侵入できてしまったぞ?」
 木から城壁へと飛び移り、進入に成功して得意気の赤毛の英雄。
舞人もすぐに後を追った。

 少女は、蒼い髪の少年を先導しながらも、衛兵の警備を巧みにかい潜り城内の広間に入る。

「……あの、シャロリュークさん。ここって浴場じゃないですか?」
 舞人が辺りを見回すと、床には正方形の白と赤銅色のタイルが交互に敷き詰められ、緑が美しい観葉植物が飾られ、高い天井は太い木の柱で支えられていた。

「ああ、そうだが。何か問題でもあるのか?」
「……そうだがって、ボクたちは会議に出るために、城に来たんじゃ?」
 ドラゴンの彫刻から湧き出すお湯で顔を洗った少女は、舞人に向かって真顔で言った。

「会議は、ここで開かれるんだよ」
「ええッ!? そんな……ウソでしょ?」
「本当さ。プリムラーナ将軍って知ってるか? バインバインの美人の将軍」

「……し、知ってますよ! ……って、何がバインバインなんですかぁ!」
「そりゃあオメー、乳に決まってるだろ?」
 なんの躊躇もなく言ってのける、シャロリューク・シュタインベルグ。

「ありゃあ、大きさといい形といい、非の打ち所が無い……と見たね。カーデリアやリーフレアたちの貧弱な胸なんかとは、比べものにならんぞ!」

「た、確かにパレアナやルーシェリアと比べても……って、何の話をしてるんですか!?」

「いやワリィ。話がそれたわ」
 ナゼか着ていた服を脱ぎ、湯舟に浸かる赤い髪の少女。

「で、そのプリムラーナ将軍なんだがよ。女の精鋭だけを選りすぐった、女だけの親衛部隊『ブルー・ジュエルズ(蒼き宝石たち)』って組織の、トップなんだ」
「へ~そうなんですか? ……それがこの浴室と、何の関係が?」

「プリムラーナを頂点とした『ブルー・ジュエルズ』は、お互いを義理の姉妹と呼び堅い絆で結ばれているって話だぜ」
「浴室で会議と何の関係が?」舞人はだんだんと嫌な予感がしていた。

「彼女たちはなんと、円卓ならぬ『浴場』で会議を開くのだッ!!!」
「ええええッ!」予想が的中し、戸惑いを隠せない純朴な少年。

「『フォンテーヌ・デ・ラ・デエス(女神たちの泉)』と呼ばれる、大理石でできた豪奢な浴室で、お互い一糸纏わぬ姿で話し合うコトによって、親睦を深めあっているらしいぜ」

「ま、まさかそれが、この場所で開かれる……と!?」
「最もここは、フラーニア共和国の『本物』みてーな立派な浴場じゃねーケドな」

「問題はそこじゃ無いでしょ!」
 お湯の中で、ゆったりと体を伸ばす少女とは対照的に焦りまくる。
「女の人がお風呂場でやる会議に、男のボクたちが出席していいんですか?」

「いいワケねーだろ? フラーニア共和国の永い歴史でも、その会議に忍び込んだ不埒な輩は一人もいねーって話だぜ」
 自ら率先して、不逞な輩になろうとしている赤毛の少女は、堂々と胸を張った。

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萌え茶道部の文貴くん。第六章・第十五話

 

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抹茶の味

 渡辺は、絹絵のことで頭がいっぱいだった。

「絹絵ちゃん、どこだ? 返事をしてくれ、絹絵ちゃ~ん!?」
 学校前の事故のあった道路を中心に、探し回るが返事は無い。
電柱にぶつかったトラックの周囲には、人だかりができていたが、手掛かりすらも見つからない。

「フーミン、聞いてくれる。お母様と戦ってた、絹絵ちゃん……て言うのかしら?」
 悲嘆に暮れながらも必死で後輩を探す渡辺の姿に、千乃 美夜美は声をかける。
「あなたの探している女の子が戦っていたのは、『現実の世界とは少しズレた場所』なの……」

「え? それって……」
「つまり、人間の世界をいくら探しても、恐らくその子は見つからないわ」

「そ、そんな!?」
 渡辺は、『絶望』という言葉の本当の意味を知った気がした。

「絹絵ちゃんは、オレが先パイのコトで落ち込んでいたときに、必死に励ましてくれました。いつも明るくて、笑顔がまぶしくて、オレにとって掛け替えの無い後輩なんです!」

 千乃 美夜美は涙を零す眼鏡の少年を、ギュッと抱きしめる。
「ねえ、フーミン。絹絵ちゃんのためにも、今あなたが出来ることをしましょう?」

「オレに……できるコト?」
「あのコの望みは、わかってるハズよ」
 先パイの言っている意味は、痛いほどよくわかっていた。

「絹絵ちゃんが望んでいたのは、大茶会を成功させるコト……」
 それでも、絹絵が心配でならない。

「お母さまがもし、フーミンに手を出したら……今度はわたしが戦うわ」
 普段の柔和な先パイからは、想像できない表情を見せる、千乃 美夜美。

「わかりました、先パイ。オレ、行ってきます!」
 メガネの少年は、想いを飲み込むようにグッと拳を握りしめると、体育館へと駆けて行った。

「わたしも……逃げてばかりじゃダメだ!!」
 薄紅色の頬を二度三度はたくと、彼女も後輩のあとを追った。


「蒔雄……どうしよう!? もうこれ以上、時間を引き延ばせないわ……」
 副会長である醍醐寺 沙耶歌の焦りは、限界まで達していた。

 既に『ナース服・学生服化推進委員会』の発表は終り、十ある極者部の最後に控える茶道部の発表の時間が、刻一刻と迫っていたからだ。

「大丈夫だよ、沙耶歌姉さま!!」
「渡辺先パイが来るまでの時間は、わたし達が何とかして見せます!」
 双子は体育館へと戻ると、直ぐに抹茶を点てる準備に取り掛かった。

「あ……あなたたち!?」
 醍醐寺 沙耶歌は、双子の義妹の行動に驚く。

(醍醐寺の家にいた頃は、この子たちは自分から何か行動を起こすことはしなかったのに。親戚中をたらい回しにされた影響なのか、権力を持った者の意向にすぐに従うクセがあったわ。それを心配もしていたのだけれど……)

 浅間 楓卯歌と浅間 穂埜歌は、着物に着替え、自らの言葉どおり二人で壇上に立った。

「ご来場の皆様……本日は、お忙しい中お越しいただき、誠に有難うございます」
「我が茶道部が、『大茶会』の大トリを務めさせていただきます」
 双子は、茶道部から持ち出した二畳の畳の上に座って、抹茶を点て始めた。

「……ほう? 流石は我が醍醐寺で、茶の湯を学んだだけのことはある」
 それを、後ろから見ている男がいた。

「所作にしろ点前にしろ、中々のものではある」
 意外にもそれは、醍醐寺 草庵だった。

「……破門となった今では、なんの意味も無いがな」 男は、口元を歪める。

「そもそも、『茶の湯』などと言う古い仕来たりに固執する体制から脱却せねば、醍醐寺の未来は無い。そうは思わんか?」

「はい……」
 後ろに控えていた女は、不気味な笑みと共に仰々しく会釈した。

 浅間 楓卯歌と浅間 穂埜歌は、客席にお尻を向けない様に『ハの字』に向かい合って座り、点てた茶を舞台の後方に向って置き、そして深々と頭を下げる。

「身寄りの無いわたし達を、今まで育てていただき…誠に有難うございました」
「お二人に、心を込めて抹茶を点てました。どうぞ、飲んでやって下さい……」

 二人はそう言うと、湯気の立つ抹茶茶碗を、『醍醐寺 草庵』と、学園長である『醍醐寺 五月』の前の机に置いた。

 学園長は、目に涙を浮かべながら抹茶を呑んだ。
草庵も場の雰囲気から考えて、流石に呑まない訳にもいかず、それを口に運ぶ。

「こ、これは……!?」 
 抹茶を口に含んだ醍醐寺 草庵は、何かとてもなつかしい気持ちになっていた。
「抹茶など……美味いと思ったことなど、無かった筈だが……?」

 

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一千年間引き篭もり男・第04章・03話

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5光秒かなたの艦隊戦

「やれやれ……人類って生き物は、千年も経っても戦争をやっているんだな」
 漫画やアニメで使い古された、お決まりの文句だ。

「他の動物さんたちは、戦争なんてしませんからね」
 ウンウンと納得する、小動物みたいな雰囲気のセノン。

「まあ人類だけが、お互いの勢力争いを『戦争』って呼んでるに過ぎないケドね。他の動物だって縄張り争いはするし、同族同士で殺し合うこともあるさ」

『なるホド……おもしろい考え方をされますね、艦長は』
 フォログラムの、ベルダンディは言った。

「でも、因果な話だな。イーリアス(古代ギリシャの叙事詩)じゃ、アキレウスとパトロクロスは親友同士なのに、この宙域じゃ戦争をやっているなんて」

『わたしには、人間が戦争をする意義は理解できません。現在の戦争の首謀者は、国ではなく巨大企業であり、双方の戦力は艦載機だけでなく戦艦も空母も無人なのです』

「無人機同士で戦ってるのか。それ、マジで戦争やる意味あるの!?」
『わたしには、理解できないと言ったばかりですが……』
「ああ、ゴメン。でもそれちょっと、オレにも解らない」

『現在も、戦闘が行われている模様です。映像を、ご覧になられますか?』
「時間の無駄な気もするが、今の時代の艦隊戦とやらを見ておくか……」
 するとスクリーンに、巨大な戦艦や空母が航行している映像が映し出された。

『主に緑色の戦艦や空母が、小天体であるアキレウスが主星のグリーク・インフレイム陣営の戦力となります。艦載機の色は赤ですね』

「それじゃ、もう一方の蒼い戦艦や空母が、パトロクロスが主星のトロイア・クラッシックってワケか。こっちの艦載機の色は、黄色なんだ。しっかし相当ハデなカメラアングルで、撮影されてるな?」

『専用の撮影用無人機からの、映像です。戦っているのはどちらも、軍事産業が主体の企業ですので、顧客へのアピールも含めて撮影されております』

「兵器の、プロモーション映像ってワケか?」
『はい。彼らが製造する艦艇を入手したいと考えている顧客は、太陽系中におりますから』

「それも、歪(いびつ)な話だよな。それで戦争に巻き込まれでもしたら、どうする気だ」
「戦争になんか、巻き込まれたくはないですよ。おじいちゃん!」
 栗色の髪の少女が言った。

「ちなみにこの戦闘空域と、この艦とはどれくらい離れてるんだ?」
『およそ、5光秒といったところでしょうか』

「……え?」
 ベルダンディは、とても解りづらい表現を用いる。

「確か、一光秒が約30万キロメートルだから、5光秒だと大体150万キロメートルか。地球の感覚で言えば、月までの距離が38万キロだから、かなり離れているように思えるが?」

『実際に、なんの影響もないと言っていいくらいには、離れてます』
「ほらな。心配ないってさ、セノ……どうした?」

 『世音(せのん)・エレノーリア・エストゥード』は、スクリーンを指さしていた。

「見てください、おじいちゃん。戦争……終わっちゃったみたいです」
「そんなハズ……?」
 慌ててボクも、スクリーンを見上げる。

「ホ、ホントだ。両方の陣営の戦艦や空母が、砲撃を止めちまってるぜ!?」
「やられた艦載機も、プカプカ漂ってる……」
「まだ開戦して間もないってのに、どういうコト!?」

 真央、ヴァルナ、ハウメアも、理解が追い付いていない様子だ。

「ねえパパ、見て見てェ!」
 ボクの周りに集まってくる、六十人の娘たち。

「緑の戦艦も、蒼い戦艦も、一緒になって……」
「どっか行っちゃうよ?」

「……一体なにが起きてやがる!? 説明しろ、フォログラム!!」
 プリズナーも、苛立ちをベルダンディへとぶつける。

『可能性として、考えられるのは……』
「戦艦や艦載機を制御しているコンピューターが……乗っ取られた?」

 ボクの答えを聞いたフォログラムの少女は、コクリと頷いた。

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この世界から先生は要らなくなりました。   第03章・第03話

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ライブハウス

「先生……見ちゃいましたぁ?」
 柔和な笑顔とは裏腹に、なにやらドス黒いオーラを纏っている卯月さん。

「み、見てない! 一瞬だったからな。アハハハ……」
「ホントですかあ? ウソついてません?」
「そんなコト言って、ホントは見たんじゃ?」

「や、やだな。そんなワケ無いじゃないか」
 花月さんと由利さんにも突っ込まれ、思わず目が泳いでしまう。

「そんじゃ先生、ここにおるみんなの下着の種類と色、言ってみてみィ?」
 真っ赤に茹であがったツインテールの女の子が、階段の上から問いかける。

「えっと確か、卯月さんが白と薄いグレーの縞々で、花月さんがピンクに白のフリル、由利さんがメロン色のレース、キアが純白の子供っぽいパンツに、ヘンなキャラがお尻にプリントされた……あッ!」

 『時すでに遅し』ということわざが、脳裏に浮かんだ。

「なにが『あ!』やねん。めちゃめちゃバッチリ見とるやんけ!」
 教室では口数も少なく、大人しくボクの授業を受けていた女の子が、すごい剣幕で怒っている。

「よ~もそんなんで、見とらん言えたなあ。ほんまスケベな先生やで!」
 関西弁の言葉だけでなく、キアの両脇の赤い髪の毛も激しく揺れて、しっかりと怒りをアピールする。

「あ、でもキャンさん。そろそろライブの時間なんじゃ?」
 卯月さんに指摘されて、慌てて左手の内側の時計を覗き込むキア。

「ホンマやぁッ! 急がんとアカン。それもこれも、先生がけったいな教室始めるからやで。おかげでこっちは、午前中しかライブ入れれんようになってもうたんや!」

「え? でも、土日は教室も休みだから……」
 そう返した言葉の先には、赤い髪の少女はすでに居なかった。
ギターケースであろう大きな荷物を抱え、何度も転びそうになりながら駆けていく。

「キャンさんのバンド、まだ駆け出しだから土日は高くて借りられないんです」
「そうなんだ。なんて名前のバンド?」

「『チョッキン・ナー』です」
「へ? ちょっきん……これはまた、かなり個性的な名前のバンドだな」
「先生もライブ見れば、キャンさんの面白さがわかりますよ」

 ボクたちは、キアの駆けて行った方向に歩き出すと、すぐに古びた雑居ビルの地下へと続く階段が目に入った。

「マイナーなライブハウスって地下にあるイメージだったケド、まさにその通りの場所だな。これじゃ、大雨とか降ったら浸水しちゃうんじゃ……」
「おかしな心配してないで、さっさと入ってください!」

 三人の女子高生にせかされて、少しカビ臭い階段を降りると、扉の向こうから音が漏れ聞こえる。

「このドアを開けると、爆音が……」
 予想していた通り、すべての言葉がかき消される。

 スマホをかざして中に入ると、髪をオレンジに染めた長身の男性ボーカルが、ステージの上で激しく頭を振っていた。

 隣で、卯月さんたちが何かを必死にアピールしていたが、激しい音に邪魔されて全然聞こえない。
恐らく、キアのバンドのコトだと思われるので、テキトーに相槌を入れる。

 今さらだが、赤いツインテールの彼女の名前は、可児津 姫杏(かにつ きあ)。
姫にあんずと書いてキアと読むのだが、キアンからキャンになったのだろうと推測する。

「お、いよいよキアのバンドが出てくるのか?」
 前のバンドの演奏が終わると、自分の声のボリューム調整が上手くいかず、ついつい大声を出してしまう。

 するとステージ横から、キアとバンドのメンバーたちが駆け出してきた。
キアのギターは、有名なカニ料理専門店の巨大な動く看板みたいに、リアルに美味しそうに装飾されている。

「ハイ、どうも~。キャンでぇす! 今日は、小汚いライブハウスに足を運んでくれて、ホンマありがとな~」
 彼女はしょっぱなから、ライブハウスの笑いを取っていた。

 

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ある意味勇者の魔王征伐~第7章・1話

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赤毛の少女

 その日……舞人は、体の上に妙な圧迫感を感じて目が覚めた。

 辺りを見ると、そこは長年慣れ親しんだ教会のベットで、一人の少女が自分の眠っていたかけ布団の上で、気持ちよさそうに寝入っている。

 幼馴染のシスター、パレアナではなかった。
ルーシェリアより、もっと小柄なのだ。

「キミは誰だい? ……ボクを看病でもしてくれていたのかな?」
 蒼髪の少年は、紅いボサボサ髪の少女の肩を揺すって起こした。

「……オ、オウ? 目が覚めたか……舞人! 体は大丈夫か?」
 見た目が十歳程度の少女は、馴れ馴れしく少年を呼んだ。

「随分とワイルドな感じの女の子だなあ。パレアナの知り合いの子かな?」
 舞人は、赤毛の少女をヒョイッと抱き上げる。

「そう言や礼がまだだったな。助けてくれて、サンキューな……舞人!」
 少女は、やんちゃな笑顔でニカッと笑った。

「……へっ?」
 舞人の脳裏に段々と、サタナトスと刃を交えた時のコトが思い浮かんでくる。

「いやぁ~参った参った。イティ・ゴーダ砂漠で魔王と戦ってたら、いきなり後ろからバッサリだもんな~? サタナトスってヤツの剣は、『人を魔王に変えちまう』みてーだが……オメーのお陰で大量殺戮者にならずに済んだぜ!」

 蒼髪の少年は、抱き上げた『赤髪の少女』を見て、額に脂汗を浮かべた。

「……あの……もっ……もしかして…『シャロリューク』さん……ですかぁ?」
 舞人は、少女が否定してくれるコトに願いをかけて聞く。

「おうよ!」
 けれども彼の耳は、最悪の返答を脳に伝えてきた。

「ゴメンなさい! ゴメンなさい! ゴメンなさい!」
 頭を抱え、天を仰ぐ蒼い髪の少年。
「ああ……ボクはなんとゆーコトを、してしまったんだあぁぁーーーーッ!?」

 舞人は教会の床に頭を擦りつけて、ひたすら謝る。
「シャロリュークさんを、こんな姿にしてしまって! 人類の希望であり、救国の『赤毛の英雄』をよりにもよって、いたいけな少女の姿にィィィーーーー!?」

「落ち着けって、舞人。名誉も肩書きも、命あってのモノダネだ。それに『女の体』ってのも、意外と悪くは無いのかもな? ……胸はぺッタンコだし、背も小っちゃいケドよ」
 少女にされた当の本人は、意外にもあっけらかんとしている。

「……ああ……ボクは『間抜け』どころか『大・大・大間抜け』だああぁぁ!?」
 けれども少年は、自分が犯した罪の大きさに押し潰されそうになっていた。

「せっかく『女の体』になったんだしよ。上手く利用しね~手はねえよな、舞人!」
「……ふえ?」
 舞人には、赤毛の英雄の言葉が理解出来ない。

「今日はニャ・ヤーゴの城で、あのクソガキ……サタナトスの討伐に向けた会議が、開かれるらしいんだぜ。ヤツを野放しにしておくのは、危険すぎっからな」
「……そ、そうなんですか……?」戦いのあとの記憶が無い、舞人。

「オメーは戦いで疲れて眠ってたみてーだから、リーセシルたちが気を遣って起こされなかったが……流石に目覚めたとあっちゃ、出席しないワケにもいかんだろ?」

「は……はい……」舞人は、憂鬱に返事をする。
(この教会に、プリムラーナ将軍やカーデリアさんが尋ねて来たときも、メチャクチャ緊張したもんなあ。でも、流石に断れないよなあ?)

 赤毛の少女は、足取りの重い舞人を引き連れ、教会を出るとニャ・ヤーゴ城へと向かった。
スタスタと城門をくぐり抜けようとするが、城兵につまみ出されてしまう。

「あの……シャロリュークさんが、その姿になったってコトは……?」
「言ってね~よ。自分で言うのもなんだが、オレって影響力が大きいからな」
 それはそうだろうと、心の中で思う舞人。

「まあ、ルーシェリアって娘の意見なんだが……な。今の人類にとって、英雄ってのは心の拠りどころみてーだからな」

「ルーシェリアが……」
 舞人は、彼女が色々と気を遣ってくれているコトに感謝した。

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