ラノベブログDA王

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萌え茶道部の文貴くん。第六章・第十四話

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ナース服・学生服化……

「……き、絹絵ちゃんは、無事なんですか……先輩!?」
 渡辺は戦々恐々と、先パイの表情を伺う。

「ゴメンなさい……お母様の隙をついて助けられたのは、あなただけなの……」
 千乃 美夜美は、申し訳なさそうに俯いた。

「あの『狸のコ』が戦っていてくれなかったら、血溜まりを作ってお母様を欺くコトなんて、到底出来なかったわ」
「狸って……! それじゃあ絹絵ちゃんも、やっぱ先パイみたく……!?」

「そう……あの子は狸よ」
 キツネの少女は、ゆっくりと頷く。

「そ、そんな……狸って……絹絵ちゃんは……まさか!?」
 渡辺は、絹絵と出会ってからの、彼女の言動を思い出した。

「……まさか、あの時の!!?」
 それは学校帰りの坂道で、トラックにはねられ瀕死の重傷を負った狸のことだった。

 体育館の舞台はすでに、『ナース服・学生服化推進委員会』に交代していた。

「はあぁ~い、お集まりの皆様。わたし達が、愛のこもったお注射で癒しちゃいますよォ~♪」
 部長の香住 癒音ら五人の少女達は、観客に向って悩殺的なポーズを取って見せる。

「相変わらず体の方は、揃いもそろって発育不足じゃがのォ!」
「負けるで無いぞ、癒音ちゃん!」
 会場の一角に陣取ったお爺ちゃん達から、励ましの声がかかる。

「ヘンな励まし方しないでって、いつも言ってるでしょ!?」
「いいぞ、いいぞ、ユ・ノ・ン!!」「ユノンちゃ~ん!!」
 老人たちは、意に介してない様子だった。

「オホン。わたし達は、発育不足でお悩みの女の子のためにも、ナース服を学校の制服として採用してもらうため、日々活動を行っておりますの」
壇上で、力説をする香住 癒音。

「男子の学ランは陸軍の制服、女子のセーラー服は海軍の制服が元になっているのですわ。それなら、平和と慈愛の象徴でもある、ナース服にだって可能性は……」
 会場では、あくびと苦笑いが広がっていた。

「……相変わらずグラマーと言えば、『ナース服お姉さま』と思い込んどるようじゃの……」
「そこがまた、可愛ええんじゃがな~♪」
 うっとりと表情が緩む老人たち。

「……渡辺……まだか? 茶道部の出番はもう直ぐなんだぞ……」
 おかしなステージを横目に見ながら、生徒会長はヤキモキしていた。

「まったく、双子どもまでミイラ取りがミイラになりやがって……」
「蒔雄。ここはわたし一人で大丈夫だから、貴方も行ってあげて……!」
 副会長はもう、運命に流されるだけの少女ではかった。

「悪ィな 沙耶歌。後は任せる……頼んだぞ!」
「蒔雄こそ、絶対に渡辺くんたちを連れて来て……!」「おう、任せとけ!」
 橋元は素直に、副会長の言葉に乗った。

「頼んだわよ。わたしの、チャラチャラした騎士(ナイト)さま!」
 醍醐寺 沙耶歌は、舞台を駆け降り体育館を出る橋元の姿を見送った。

「渡辺先パイも、どこ行っちゃったの!」
「絹絵も無事だといいケド……もう間に合わないよォ~!」
 双子は絹絵の割れた茶碗の欠片を持って、一端学校に戻って来ていた。

「お~い、楓卯歌! 穂埜歌!」
 途方に暮れる双子が振り向くと、生徒会長の姿があった。

「あっ、橋元だ。ねえねえ、どうしよう!?」
「二人とも、全然見つからないんだ!」

「なんだって? シルキーもまだ、見つかってないのか!?」
「そうだよ。かなり色んな場所を探したんだけど……」
「あと、学校の前で交通事故があったみたい」

「オイ、それってまさか!?」
 一瞬、蒼ざめる橋元 蒔雄。

「でもね。トラックが電柱にぶつかった、だけっぽい」
「今のところ、人身事故じゃないみたい」
「なんだよ焦らせんなよ!」

「だけど、これが……」「道端に……」
 楓卯歌と穂埜歌は、手の中にある物を見せる。

「……欠片? これって、シルキーの抹茶茶碗じゃないか!?」
「割れてるし……それにホラ、血が付いてる!?」
「やっぱ絹絵の身に、何かあったんじゃ……!?」

「あ~あ、何となく読めたぜ」
 泣き出す寸前の双子に向かって、橋元がいつものチャラついた表情で言った。

「読めたって……何が?」
「……橋元、どういうコト?」
 顔を見合わせる、双子姉妹。

「つまりだ。シルキーは、渡辺に買って貰った大事な抹茶茶碗を割っちまったんで、怒られるのが怖くて、出るに出て来れないのさ!」
「……え!?」「そうなの……かな?」双子は半信半疑だった。

「まあ、多分そんなところだろ? とりあえずお前らは先に行って、抹茶を点てる準備をしてろ。渡辺はオレが、必ず見つけて戻るから……」

 橋元は二人を体育館に向わせ、万全の準備をさせた。

 

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