ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第10章・EP028

別れた運命

「マジか。このスカした野郎が、倉崎 世叛(よはん)のチームの選手ってのはよォ」
 題醐(だいご)さんが、怪訝(けげん)そうな顔でボクを睨(にら)んでいた。

「間違いないだろう。地域リーグの公式も確かめたが、そちらにも得点者として彼の名前が乗っている。まあ、相手に14点も取られてはいるがな」
 宝城さんが、スマホでさらなる情報を提示する。

「14点だァ。どんなキーパー使ってんだ。オレだったら……って、そう言うコトかよ」
 題醐さんは、自分で納得してしまった。

「サッカーで14点なんざ、普通はあり得ない数字(スコア)だからなあ。オメーが必要ってのも、わかる気がするぜ」

「美浦の言う通り、キーパーが早急な補強ポイントと言うワケだな?」
 宝城さんの質問に、コクリと頷(うなず)くボク。

「確かに14点なんて、野球ですらほとんど聞いたコトがない数字だからね。どうよ、鷹春。アンタ、行ってやってみたら?」
 ポエムさんが、それとなく聞いた。

「誰がやるか」
「なんだい、口先だけ? アンタがキーパーでも、変わらないって……」

「流石に、変わるだろ。少なくとも、何点かは防いでるぜ」
「だったら、なんで?」

「倉崎のヤツの下に付くってのが、気に喰わねェ」
「相手は、サッカー界期待の新星なんだろ。別に下に付いたって、構わないと思うケド」

「フッ。そう言えばお前、代表の合宿じゃ、倉崎 世叛と一緒だったと言っていたな」
 宝城さんが、話に入って来る。

「そうなの。ってかアンタ、代表にまで呼ばれてたってコトかい!?」
「ジュニアユースの頃の、話だ。アイツもオレも、代表の常連ってワケでも無かったんだがな」

「それが、片や日本サッカー界の注目を集める的で、名古屋じゃレギュラーどころかチームの中心でよ。片や学校も退学して、サッカー部からも……」

「黙れ、アホ。オレは、サッカーから足を洗ったんだ。じゃあな!」
 美浦さんの言葉に反発した題醐さんは、どこかへ行ってしまった。

「あちゃ~。怒らせちまった」
 悪いと思っているのかどうか、美浦さんは頭を掻いている。

「アイツ、自分の部屋に行ったね。ま、ほとぼりが冷めたら、またアタシから話してみるよ」
 ポエムさんが、大人らしい対応をした。

「お願いします。オレたちも、アイツにはサッカーを続けて貰いたいと思っているんで」
「わかっているよ。だケド、最終的に答えを出すのは、アイツ自身さ」

「はい。そろそろライブも始まる様ですし、オレたちは失礼致します」
「ああ。また、寄っとくれ」
 気さくな挨拶を交わす、ポエムさん。

「じゃあわたし達も、お暇(いとま)しよっか、ダーリン」
「……ウ、ウン」
 ボクたちも、席を立った。

「オレンジジュース、美味しかったです。わたし達も、またお邪魔させて貰ってもイイですか?」
「モチロンさ。深夜時間じゃなきゃ、また来てくんな」
 女の人同士、会話が自然に流れてる。

 ボクもあんな風に、普通に喋れたらな……と思いながら、地上へと出る階段を昇った。

 外に出てライブハウスを振り返ると、Gilbert(ギルバート)と書かれた看板が、薄っすらとピンク色に光っている。
それが、ポエムさんの亡きお父さんの名前だと知った今、ただの看板とは思えなかった。

「さ、沙鳴ちゃん……今日は……アリガト」
 精一杯、言葉を口から吐き出す、ボク。

「どう致しまして。でも、題醐さんはまだゲットしてませんよ」
 隣を歩く、沙鳴ちゃんが上を見上げた。

「また、来なくっちゃ……」
 空には星が、輝き始めている。

「わたしも、出来る限り付き合いますから、頑張りましょう!」
「ウ、ウン」
 頼もしい相棒を得たボクは、決意を胸に家路に付いた。

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一千年間引き篭もり男・第09章・23話

浴室での尋問

 ステュクス少佐の艦隊旗艦から、漆黒の宇宙へと飛び立った小型宇宙艇。
宇宙艇は偵察用であり、内部に4機のサブスタンサー等を搭載可能だった。

「これより、宇宙戦闘空母クーヴァルヴァリアの、視認可能宙域に進入。これ以上の接近は、発見される危険を伴います」
 格納庫内のサブスタンサーに登場した、ヴェローナ少尉が告げる。

「了解です。戦闘になったら、こちらに勝ち目はありません。敵艦との距離を維持し、ヴァクナ少尉、ヴィカポタ少尉との交信を優先します」
 ニー・ケー中尉が、返した。

 小型宇宙艇は、宇宙戦闘空母クーヴァルヴァリアからの距離を保ちつつ、その内部に捕虜となって捕まっている同胞との通信(コンタクト)を続ける。

「これでヨシっと! ウンウン、キレイになったね」
 宇宙戦闘空母の中に存在する豪華な浴室で、ご満悦の群雲 美宇宙。
彼女は全身泡まみれで、泡以外は何も身に着けていなかった。

 浴室には、大理石で作られた巨大な円形の浴槽が中央にあって、獅子の頭をした魚の口から湯が注ぎ込まれている。
金色のシャワーヘッドがいくつも並び、観葉植物もジャングルのように植わっていた。

「キミたち、クーリアの尋問も終わったコトださ。そろそろ自分の口から、名前を教えてくれたって、イイんじゃないかな?」
 泡を洗い流した美宇宙が、浴槽に横たえた2人の少女に問いかける。

 2人の少女は、髪型は違っていたが純白の髪に、褐色の肌の身体をしていた。
膨らみかけた乳房が、僅かに湯から出るくらいに浸かっている。

「なんだい。まだ、意識が戻らないのか」
 不機嫌そうな、美宇宙。

「仕方が無いよ、美宇宙。コミュニケーションリングを通じての尋問で、意識が混濁しているんだ」
 2人の少女の1人を、膝枕をするように抱えた、オレンジ色のボブヘアの少女が言った。
彼女は健康的な肌に、深緑色の瞳をしている。

「わかってるよ、レオナ。でもクーリアって、意外に酷いよね。いくら捕虜だからって、汚れた身体のまま尋問しちゃうんだモン」
 美宇宙は我がままを言って、足をバタつかせた。

「止めてって、美宇宙。バシャバシャしないの!」
 もう1人の少女を膝枕に抱えた、マゼンタ色の長い髪の少女が叱る。
彼女は、純白に近い絹のような肌に、バイオレット色の瞳をしていた。

「なんだよ、リリオペ まで。でもボク、こうやって誰かとお風呂入るの、始めてなんだ」
 レオナとリリオペに挟まれた美宇宙が、真っ白な大理石の天井を見上げる。

「そっか。美宇宙は、宇宙斗艦長のクローンだから……アッ、ゴメン!」
「イイって、レオナ。ボク自身、気にしてないし。でも、どうして女になっちゃったんだろ」

「わたしとしては、美宇宙ってメッチャ可愛いから問題無いと思うわよ」
 リリオペが美宇宙に、メリハリの利いた身体を寄せた。

「リリオペは、イイよね。胸もバインバインだし。ボクは、元が男なせいかこんなだモン」
「アハハ。美宇宙は、どっちが背中か解らないな」
 ケラケラと笑う、レオナ。

「ウッサイな。レオナだって、そこまで大きくないクセに!」
「な、なんだとォ。美宇宙よりは、わたしのが大きいぞ!」
「僅差だよ、僅差。そんなんで勝って、嬉しいワケ!?」

「ウフフ……」「クスクス……」
 そのとき、2人の耳に笑い声が聞こえた。

「アレ? 今笑ったの、リリオペ?」
 美宇宙とレオナが、同時に同じ質問をする。

「いいえ、違うわよ。ホラ、笑ったのはこの2人」
 それは、リリオペとレオナが膝枕のように抱えた、2人の少女だった。

「ア! キミたち、やっと起きたんだ!」
 喜ぶ、美宇宙。

「わたしの名は、ヴァクナです。階級は、少尉よ」
「わたしは、ヴィカポタ。同じく、少尉だ」
 2人は、膝枕のまま口だけ動かして言った。

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ある意味勇者の魔王征伐~第13章・115話

精霊使いの少女たち

 キュマイ・ラーの咆哮(ほうこう)と共に、ライオンの口が火炎を吐き出す。
ベレ・ロ・ポンティスが投げ込んだ槍(プルム・ヴム)は、溶けて灼熱の緋弾となってウティカやルスピナを襲った。

「荒ぶる風を巻き起こせ、アニチ・マリシエイ!」
「水の壁(ウォーター・ウォール)よ、メガラ・スキュレー!」
 自分たちの召還した精霊に、命令を降す2人の少女。

 風の精霊は5本の竜巻を発生させ、水の精霊は流れ落ちる滝の壁を発生させた。

「その歳で、高位精霊を使役するとは大したモノですね。ですがその程度の妨害で、わたしの灼熱の緋弾は止められませんよ!」

 魔獣の火炎によって熱せられ、ドロドロに溶けた鉛の粒。
竜巻の中を瞬時に突き抜け、水の壁をも貫いて、2人の少女の身体を貫く。

「キャアアアッ!?」
「イヤアアアッ!!」
 ウティカとルスピナの悲鳴が、闘技場に響き渡った。

「ウティカ姉さま!」
「ル、ルスピナ姉さまが!?」
 イオ・シルら12人の少女たちが、目の前の光景に青褪(ざ)める。

「なんてこった。アイツらが、やられちまった!?」
「オレたちの盾すら、焼き尽くしちまった炎だ」
「熱せられた鉛球を身体中に喰らえば、助かりは……」

 その後ろで、ティンギスら3人の船長も、悲痛な表情を浮かべていた。

「ククク。高位精霊を以ってしても、我がプルム・ヴムを防ぐコトは不可能。さあ、次はアナタたちが身体を焼かれ、鉛に貫かれる番ですよ」
 ベレ・ロ・ポンティスは、魔獣の喉を撫でながら、3人の船長と12人の少女の方へと近づいて行く。

「それは、どうかの」
 魔獣を操る英雄の前に、漆黒の髪の少女が立ちはだかった。

「オヤオヤ、貴女がおいででしたか。貴女も、レオ・ミーダスと同じ重力を操る剣を使うのでしたね」
 重力の影響を警戒し、ベレ・ロ・ポンティスは足を止め身構える。

「なんじゃ、妾のイ・アンナを警戒して、近づいて来んとはの。じゃが、お主の相手は妾では無いぞ」
「……どう言う意味でしょう?」
「そのままの意味じゃ。後ろを、見てみるが良かろう」

「後ろ? 後ろに、なにがあると……なッ!?」
 振り返って驚く、ベレ・ロ・ポンティス。
英雄の目には、2人の少女の姿が映っていた。

「ど、どう言うコトです。彼女たちは、我が灼熱の緋弾に貫かれて、死んだハズ!」
「それは、早とちりと言うモノじゃ。ああ見えて2人は、大魔導士リュオーネ・スー・ギルの高弟なのじゃからな」

「リュオーネ・スー・ギル……ヤホーネス王国が誇る5第元帥の1人にして、魔導の探求者と云われた、あの大魔導士ですか」

「残念だったね。わたしのアニチ・マリシエイは、蜃気楼(しんきろう)の精霊でもあるの。アナタが貫いたと思ったわたし達は、小さな水の粒のスクリーンに映った幻影よ」
 竜巻の中から姿を見せない精霊を従える、ウティカ。

「で、では、水の精霊が発生させたあの滝は、まさか……」

「メガラ・スキュレーが生んだ流れ落ちる滝は、小さな水の飛沫を生み出すためのモノだよ」
 ルスピナも、獣の下半身を持った美しい少女の精霊に、寄り添っていた。

「流石と、言うべきでしょうか。魔導の能力だけで無く、頭の方も切れる。ですが!」
 ベレ・ロ・ポンティスは2人に向け、キュマイ・ラーを解き放つ。

「性懲りもなく、また火炎の攻撃かァ。だがよ、ウティカとルスピナの嬢ちゃんたちにゃ、効かないぜ」
 観客席から大きな声で冷やかす、ティンギス。

「フッ、キュマイ・ラーの能力は、火炎だけとは限りませんよ」
 魔獣を操る英雄の指示で、キュマイ・ラーの背中から生えたヤギの頭が奇怪な声でいななき、不快な音波を放った。

「アニチ・マリシエイの前で、空気を振るわせる攻撃なんて無意味だよ!」
 風と蜃気楼の精霊が、魔獣の音波攻撃を完全に無効化する。

「ならば、こんなのはどうです!」
 キュマイ・ラーのシッポの大蛇が、毒の霧を吐いた。

「水の精霊は、毒を中和するの」
 けれどもメガラ・スキュレーの下半身から流れ出た水が、毒を完全に洗い流してしまった。

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この世界から先生は要らなくなりました。   第11章・第50話

サキカと孤児院

 渡邉 佐清禍(わたなべ サキカ)の件に、孤児院の3人のシスターが関わっていると言うマドル。
それに対し、ドームに集った観客から様々な声が沸き上がった。

「警察が、シスターたちを殺人に関わってると見ているって、どう言うコトだ?」
 観客の1人が、叫んだ……と言うより、それが彼本来の声量だったのかも知れない。

「サキカちゃんが殺された事件に、孤児院が関わってるってコトよね?」
「あり得なくはない話だケド、孤児院って今までそんなに関わって来なかったジャン?」
「館と孤児院って、けっこう離れてるっポイけど、どうやって関わったんだろ?」

「まさか3人のシスターが、館まで赴(おもむ)いてサキカちゃんを殺したってのか?」
「それは無いでしょ。大体、動機が不明過ぎるわ」
「ウ~ン。だったら、なんで?」

 騒(ざわ)めく観客席からも、疑問符しか浮かんで来なかった。

「わたし達が、あのコの殺人事件に関わっているだって?」
「残念ですがわたし達は、館に赴いたコトはございません」
「とんだ見当違いの、推理だったね」

 中年女性の3人のシスターたちの声が、ニヤニヤと笑っている様に聞こえる。

「オ、オイ、マドル!」
「落ち着いて、警部」
 マドルが、慌てる警部を制した。

「我輩は、サキカさんの件と言ったのであって、殺人とは言って無いのですがね」
「同じコトだろう。他に、なにがあるってんだい?」
 長女の珠の声が、反論する。

「我輩は、サキカさんの次に殺された、第3の殺人の被害者となったトアカさんを殺したのは、サキカさんだったと推理してるのですよ」

「チョット、警部さん。この警部補さんは、自分がなにを言っているのか解っておいでなのでしょうか。気が動転して、矛盾に気付いていないとしか思えません」
 次女の菊が、冷静な口調で言った。

「この人の言う通りだぜ、マドルよ。お前、どうかしちまったのか!?」
 更に慌てる、警部の声。

「サキカちゃんは、マスターデュラハンによる第2の殺人の被害者なんだぜ。浴室で、首無し死体となって発見されている。お前だって……」

「もしその死体が、サキカさんのモノで無かったとしたら?」
 神於繰 魔恕瘤(かみおくり マドル)は、言った。

「なに言ってんだ。渡邉 佐清禍のモノで無かったんなら、他に誰の……!?」」
 途中で口籠る、警部。

「そう。サキカさんは私生児であり、彼女が彼女と証明できる人物は、ほぼ皆無だ」
 マドルの推理に、ドーム会場が大きく騒めいた。

「だ、だったらお前は、サキカはまだ……」
「ああ。彼女は恐らく、まだどこかで生きている」

 マドルが台詞を終えると、背後のガラスの塔に渡邉 佐清禍の血文字が浮かび、それが流れ落ちるように消える。

「ふ、ふざけんじゃ無いよ!」
「どこに証拠が、あると言うのですか!」
「冗談もたいがいにしないと、訴えるよ!」

「随分な、慌て様ですね。サキカさんが生きていると、お困りのコトでもあるのですか?」
「そ、それは……」
「別に、無いさ」

「我輩には、そうは見えませんね。サキカさんが生存しているのであれば、浴室で発見された首無し少女はいったい誰なのか?」

「さ、さあね」
「わたし達には、関係が…」

「貴女方は、サキカさんの替わりとなる少女を用意できた。この孤児院にも、サキカさんと同年代の少女は大勢いる。身寄りの無い少女に、サキカさんと同じ服装をさせて、殺人のあった重蔵氏の館へと向かわせたのではありませんか?」

「な、なるホド。同じ服装の見ず知らずの小娘なら、警備の目も掻い潜れるって寸法か!」

「モチロン、代役となった少女は、自分が首を落とされて殺されるとは、露(つゆ)にも思わなかったでしょう。孤児院では見れない豪華な家具や食べ物をエサに、貴女方は少女を送り出したと、我輩は考えているのです」

 マドルの推理劇は、終焉(クライマックス)を迎えようとしていた。

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キング・オブ・サッカー・第10章・EP027

スカウトの仕事

「なんだ、テメーら。雁首(がんくび)揃えて。オレを、連れ戻すつもりならムダだぜ」
 題醐(だいご)さんは帰って来るなり、上着をソファに放り投げてドラムセットに向かった。

「ワン、ツー……ワン、ツー、スリー!」
 ドラムスティックでカウントを取り、バラードらしき曲を歌い始める。
ドラムの完成度に比べて、明らかに歌は音程がズレていた。

「相変わらず、歌はド下手だな、宝城」
「ああ。文化祭のときと、変わらないレベルだ」
 美浦さんと宝城さんも、呆れ顔でステージを眺めている。

「ケッ、止めだ、止め。気分が、乗らねェぜ」
 題醐さんはドラムスティックを置くと、ボクたちの居る観客席の方へとやって来た。

「さっき、ツラ合わせたばかりだってのによ、宝城。オレに、なんの用だ?」
「他でも無い。題醐、お前の将来について話がある」
「将来? 見ての通りだぜ。オレは、ドラムを続ける」

「続けるってアンタ、バンドメンバーも無しに、どうやって音楽を続けるって言うんだい?」
 ポエムさんが、話に入って来る。

「ウッセー。今、募集かけてるトコだ」
「彩遠寺さん。コイツ、まだバンドに所属して無かったんですか?」
 宝城さんが、ポエムさんに問いかけた。

「アタシが3件ホド、紹介してやったんだがね。コイツが、余りに変わり者で唯我独尊なモンだかから、どのバンドとも上手く馴染めなかったんだよ」

 さもありなん……っと、思ってしまう。

「仕方無ェだろ。音楽性の、違いってヤツだぜ」
「なァにが、音楽性の違いだよ。ヒヨッコの、クセに!」
「だ、誰が、ヒヨッコだ!」

「アンタのドラムは、周りに合わせるってコトを知らないからね。それじゃ、いつまで経っても、メンバーなんて集まりゃしないよ」

「放っとけや!」
 苛立ちを、前の席の椅子に八つ当たりする題醐さん。

「鷹春! ボロい椅子に、当たってんじゃ無いよ。アンタの退学した経緯は、このコたちから聞いたよ」

「ケッ。まったく、余計なコト喋りやがって!」
 宝城さんと美浦さんを、睨み付ける題醐さん。

「そう怒るな、題醐。お前が学校を辞めたのは、少なからずオレの責任でもある。キャプテンであるオレが、厳煌(げんこう)教諭の横暴な采配を止めれなかったばかりに……」

「オイオイ、宝城。そりゃ、ムリってモンだぜ。いくらサッカー部の主将だからって、顧問になっちまった教師の指示にゃ、逆らえんだろ」

「美浦の、言う通りだ。オレが退学したのは、全てオレの責任だぜ。お前にゃ、関係無ェよ」

「お前とは、中学の頃から5年間、チームメイトだったんだ。関係はあるさ」
「昔話だ。言っただろ。オレは、サッカーを止めたってよ」

「お前……彼らの話は、聞いたのか?」
 宝城さんの視線が、ボクと沙鳴ちゃんの方へ向いた。

「アン……アア、コイツらか。バーガーショップで会ったヤツらで、オレをスカウトするとかどうとか、抜かしてやがったな」
「ヤッパちゃんと、聞いて無かったのかよ?」

「ウッセ、美浦。オレらより年下みてェなガキが、オレをスカウトって言われてもよ。まともに取り合う方が、どうかしてるぜ」

 ま、まあ確かに、言われてみればそうだよね。
紅華さんにも、最初は相手にされなかったし。

「だけど鷹春。このコたちは、どうやらかなり大物がオーナーを務めるチームから、来ているみたいなんだよ」
「なんだって?」

「彼らは、あの倉崎 世叛がオーナーを務めるチームから、お前をスカウトしに来ている」
「そうだぜ、題醐。デッドエンド・ボーイズってチーム名でよ。今のお前に、ピッタリな名前だよな。ギャハハ!」

「黙れ、美浦。だいたい、コイツらが倉崎のチームのスカウトだって、証拠はあんのかよ?」

「スマホで調べたが、彼の顔がホームページに載っている。名前は、御剣 一馬だそうだ。地域リーグの、フルミネスパーダMIEとの試合で得点を決めている」

 宝城さんが、ボクのプロフィールを明かした。

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一千年間引き篭もり男・第09章・22話

ニー・ケー中尉の決意

 先回りしたハズの同僚艦隊の成れの果ての、残骸(デブリ)の間を抜ける漆黒の艦隊の旗艦。
その艦橋(ブリッジ)で、若い男が息巻いていた。

「いくら最新鋭の宇宙戦闘空母と言えど、随分とハデにやられたモノだな、ステュクス少佐。火のプレゲトーン、忘却のレーテー両少尉が戦死した挙げ句、敵艦も取り逃がすとは何たる失態!」

「申しワケございません。敵戦力を、見誤っていた模様です」
 黒に灰色のラインの入った宇宙服の上に、漆黒のローブを纏(まと)った女性が、深々と頭(こうべ)を垂れる。

「ゼーレシオン……か。コリーのペルセ・フォネーを堕としたのも、宇宙に漂っていた下半身の交戦記録から、相手はゼーレシオンと判明している」
 若きバルザック・アイン大佐は、言った。

「明らかにかの機体が、戦況に深刻な変化をもたらしております」
「そんなコトは、わかっている。今後の対策を、聞いておるのだ!」

「げ、現在、プレゲトーン少尉、レーテー少尉が率いた残存艦隊の再編を行っておりますが、敵艦に追いつくコトは不可能かと……」

「不可能で、済むとでも思っているのか、ステュクス少佐!」
「も、申しワケございません……」

「オレは、マーズ様の意向を無視して、宇宙戦闘空母クーヴァルヴァリアを追跡したのだぞ。これだけの艦艇を沈められて、今さらオメオメと本来の任務に戻れるものか!」

 怒りをぶちまける艦隊総司令官に対し、下げた頭を上げるコトが出来ないステュクス少佐。

「バルザック閣下、どうか怒りをお鎮め下さい」
 そのとき、ブリッジに2人の少女が現れた。

「なんだ、お前たちは?」
 バルザック大佐が、問い質す。

「わたしは、ニー・ケー中尉。後ろのヴェローナ少尉と共に、レーテー少尉旗下でサブスタンサー部隊を率いておりました」

「そうか。レーテー少尉は、惜しい女を亡くしたと思うが、だからと言って我が怒りは収まらんぞ」

「わたしは、ヴェローナ少尉の他に2人の部下を率いておりましたが、先の戦闘で2人は、敵サブスタンサーにより撃破され、捕虜となってしまったのです」

「そのサブスタンサーとは、このような姿では無かったか?」
 バルザック大佐の指示で、オペレーターがスクリーンに、宇宙で戦うゼーレシオンの姿を映し出した。

「はい。わたし達が交戦したのは、この機体で間違いございません」
「まったく……たった1機で、ここまで戦局を変えるとはな」
 大佐は艦橋の中央にある椅子に腰を落ち着け、ため息を吐き出した。

「バルザック大佐。わたしに、妙案がございます」
 敬礼しながら発言する、ニー・ケー中尉。

「なんだ、言ってみろ。聞くだけ、聞いてやる」

「ハッ。わたしやヴェローナ少尉は、戦闘用のクローンとして、1つの種から生み出されました。敵艦に捕らわれた2人、ヴァクナ少尉、ヴィカポタ少尉とは、コミュニケーションリングを通じて、より緊密な通信が行えるのです」

「なるホド。敵艦の様子を、伺い知るコトができると言うワケだな?」
「はい。現在2人は、捕虜として拘束されておりますが、敵艦の主であるクーヴァルヴァリア・カルデシア・デルカーダは、2人にコミュニケーションリングを通じた尋問を行っております」

「コミュニケーションリングを介した尋問は、太陽系統一法で禁止されているが……火星を火の海に沈めた魔女に言ったところで、ムダな話か」

「ですがわたくし達も、2人をコミュニケーションリングを通じてこちらから操るコトで、敵に偽の情報を流すコトに成功致しました」

「なんだと。それは、本当か!」
「はい。敵艦は進路を変え、土星圏へと向かっております」
 ニー・ケー中尉は、言った。

「それが確かなら、我が艦隊が追いつく可能性も出て来たと言うコトだな」
「バルザック閣下。成果を確実なモノとする為にも、わたしとヴェローナ少尉を小型高速艇で、敵艦の元へと派遣していただきたいのです」

「小型高速艇であれば、敵の艦にも追いつけるか。だが、危険な任務だぞ?」
 大佐は、真剣な眼差しを中尉に向ける。

「元より、覚悟の上です」
 ニー・ケー中尉は、再び敬礼をした。

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ある意味勇者の魔王征伐~第13章・114話

魔獣VS高位精霊

「なんってこったい!? せっかく闘技場で貰った盾が、ドロドロに溶けちまいやがった!!」
 ヒーターシールドを失ったティンギスは、天を仰ぎながら頭を抱えた。

「今の攻撃は盾で防げたが、次の攻撃は防げないぞ!」
「あの魔獣の炎を、防ぐ盾はもう無いんだ」
 レプティスとタプソスも、護った12人の少女たちに注意喚起(かんき)する。

 魔獣は4つ脚で、肩の高さでも長身な船長たちよりも上だった。
巨大なライオンの頭部が、炎を洩らしながらグルグルと唸りを上げている。
背中にコウモリの翼とヤギの頭を持ち、尾は巨大なヘビだった。

「このキュマイ・ラーの火炎を受けて無事とは、いささか驚きですがね。次の攻撃は、防げませんよ」
 ベレ・ロ・ポンティスは、魔獣に指示を飛ばす。

『グアルルッ!』
 咆哮と共に、ライオンの口が大きく開き、激しい炎を吐き出した。

「こ、こんな広範囲じゃ、どうにもなら無ェぞ!?」
「と、とにかく、遠くへ逃げろ!」
「お前たち、遅れるな!」

「わ、わかっている」「だがこれ程の炎……」「逃げ切れない!」
「マ、マズい!?」「このままでは……!」「焼かれる!?」

 必至に逃げる3人の船長と、イオ・シルら12人の少女たち。
けれども直ぐに、炎が追いついた。

「ククク。さあ、我がペットの炎で、消し炭となってしまいなさい」
 ほくそ笑む、ベレ・ロ・ポンティス。

「させない!」
 少女の声がすると、燃え盛る炎の上から、青い水が滝のように流れ出た。

 炎と水がぶつかって、水蒸気が激しく湧き上がる。
魔獣が息(ブレス)を吐き尽くすと、青い水はミドルヘアに整った顔の少女のカタチを取った。

「水の精霊……しかも、相当な高位精霊ですね」
 ベレ・ロ・ポンティスは、魔獣の背中を摩(さす)りながら様子を伺う。

「ルスピナ姉さま!」「来てくれたんだ」「助かったよ」
 12人の少女たちが、自分たちの前に立った少女に向けて言った。

「わたしが相手だよ。行って、メガラ・スキュレー!」
 ルスピナが、水の王女とも呼ばれる青い水の高位精霊に指示を出す。
精霊の下半身は、6頭の犬の上半身から、12本の海龍の尻尾が長く伸びていた。

 並んだ犬の前脚の辺りから、水が大量に湧き上がって魔獣を襲う。

「飛べ、キュマイ・ラー」
 ベレ・ロ・ポンティスを背に乗せ、宙に跳びあがる異形の魔獣。

「キュマイ・ラー、召還した少女を狙え!」
 コウモリの翼を羽ばたかせながら、火炎弾を連続で飛ばした。

「今度は、わたしが相手だよ。アニチ・マリシエイ!」
 別の少女の声が響き、闘技場の上空に竜巻が巻き起こる。

「な、なんだと!?」
 火炎弾は、あさっての方向に飛んで行き、まったく別々の場所へと着弾した。

「竜巻の中に、別の高位精霊か。気流で、火炎弾の軌道を歪ませただと!?」
 ベレ・ロ・ポンティスを乗せた魔獣は、闘技場へと降り立つ。

「ウティカ姉さまだ!」「わたし達を助けてくれた、風の精霊だよ」
 歓喜する、12人の少女たち。

「高位精霊が2体とは、ヤレヤレですね。これは早々に、決着を付けねばなりません」
 ベレ・ロ・ポンティスは、魔獣のライオンの口に、自らの槍を液体化して入れた。

「アイツ、どうかしちまったんじゃね?」
「自分の魔獣の口に、自分の槍を突っ込んだぜ」
「なにかの攻撃かも知れん。油断するな!」

「わたしは、この魔獣を仕留めたときに、自らの槍をコイツの口に突っ込んだのですよ。コイツが炎を吐き、内臓に達した槍がドロドロに溶け、コイツの内臓を焼いたのです」
 魔獣が吼え、口元から炎が零れ落ちる。

「お前たちも、灼熱の金属の飛沫となった、プルム・ヴム(鉛)を喰らいなさい!」
 巨大なライオンの口を開けた、キュマイ・ラー。
激しい火炎と共に、高温に熱せられた液体金属を吐き飛ばした。

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