ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第13章・113話

プルム・ヴム

 3つの黒きエネルギー球(トゥリ・シューラ)が、闘技場の中央で激しくスパークしていた。

「重力の歪(ひずみ)に、完全に飲まれたな。いくらお前の剣で身体を強化しようが、圧縮された重力の穴からは抜け出せまい」
 大暗黒剣(マハー・カーラ)で重力球を制御しながら、勝ち誇るレオ・ミーダス。

「オイオイ、どうすんだよ。アイツの剣が作った球に囲まれて、舞人のヤツ消えちまったぞ!」
「ルーシェリアの嬢ちゃんよ。あの球は、なんなんだ?」
「ヤツの剣は、イ・アンナと似た能力と言ったが……」

 ティンギス、レプティス、タプソスの3人が、ベレ・ロ・ポンティスとの戦いを繰り広げている、ルーシェリアに問いかけた。

「剣の能力は、どちらも重力を操る能力じゃ。ヤツがトゥリ・シューラと呼んだ黒い球体は、恐らく……クッ!?」
 空中を舞うルーシェリアの長い漆黒の髪が、槍によって貫かれわずかに落ちる。

「わたしを前にお喋りとは、余裕がありますね。ですが、わたしの槍(プルム・ヴム)は、あらゆる形態をとれるのですよ」

 ベレ・ロ・ポンティスの投げた槍は、解けるようにして形態を変化させた。
銀色の長い紐のようなカタチとなって、ルーシェリアの身体にグルグルと巻き付く。

「な、なんじゃ、この槍は……グアァッ!?」
 身動きが取れず、闘技場に墜落する漆黒の髪の少女。

「ルーシェリアの嬢ちゃんが、堕とされちまった」
「オレたちが、話を振ったからだ。ヤベェ」
「幸い、近場に落ちた。助けに行くぞ!」

 3人の船長たちは、観客席へと落下したルーシェリアの元へと駆け寄り、それぞれの盾を構えた。
イオ・シルら12人の少女も駆けつけて、ルーシェリアの身体に巻き付いた銀色の紐を、振り解(ほど)こうとする。

「な、だんだ。この紐は!」
「ヌルヌルしていて、解いてもまた元に戻ってしまうぞ!?」
「う、うわァ。こっちにまで、巻き付いて来た!?」

 銀色の紐は、やがて3人の船長と、12人の少女全員を絡め取ってしまった。

「ククク。プルム・ヴムは、あらゆる形態になれるのです。さあ、今から我が槍を、アナタ方の体内へと進入させて見せましょう」

「オワッ!? コ、コイツ、鼻の穴から入って来るぞ!」
「喋るな。喋ると、口から……ガハッ!」
「こ、このままでは、身体に進入を……グッ!」

「口や、鼻だけではありません。プルム・ヴムは、人体のあらゆる穴から進入して行くのです」

「キャアア!」
「止めて、そこは!?」
「ダメェ!」

 悲鳴を上げる、12人の少女たち。

「子供と言えど、女としての恥じらいは芽生えているようですね。ですがキミたちの体内に侵入したプルム・ヴムは、やがて元の槍の姿へ……グゥッ!!?」

 自らの槍の能力を、得意気に説明していたベレ・ロ・ポンティスが、地面に崩れ落ちた。

「なッ、これは……!?」
「妾の重力剣、イ・アンナの能力を、失念しておった様じゃな」

「わたしの身体が……地面に……!」
「お主は、自らの槍を手放した。お主も、重力に押しつぶされるが良かろう」

 ベレ・ロ・ポンティスの周囲の地面が、重力によって沈んで行く。

「銀の紐の縛りが、緩んだぞ!」
「これで、抜け出せる!」
「お前たち、今助けて……ン?」

 3人の船長が12人の少女の方を見ると、既に彼女たちは戦斧を構えていた。

「よくも、我らが身体を弄(もてあそ)んでくれたな」
「乙女に恥辱を与えたのだから、覚悟は出来ておろう」
「我らが斧を、喰らうがイイ!」

 イオ・シルら12人の少女たちは、怒りに任せて24もの戦斧を1斉に投げる。

「キュマイ・ラー!」
 ベレ・ロ・ポンティスが叫ぶと、彼の前に魔獣が現れた。

 魔獣は灼熱の炎を吐いて、ベレ・ロ・ポンティス目掛けて飛んでいた斧を、全て焼く尽くす。

「な、なんだと!?」
「我らの斧が……」
 12人の少女は、唖然として立ち尽くした。

「あ、危ねェ、お前たち!」
「まだ炎が、治まってねェぞ!」
「間に合ってくれ!」

 3人の船長は少女たちの前に出て、再び盾を構える。
けれども炎が収まった頃には、全ての盾も焼け落ちていた。

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