ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第09章・22話

ニー・ケー中尉の決意

 先回りしたハズの同僚艦隊の成れの果ての、残骸(デブリ)の間を抜ける漆黒の艦隊の旗艦。
その艦橋(ブリッジ)で、若い男が息巻いていた。

「いくら最新鋭の宇宙戦闘空母と言えど、随分とハデにやられたモノだな、ステュクス少佐。火のプレゲトーン、忘却のレーテー両少尉が戦死した挙げ句、敵艦も取り逃がすとは何たる失態!」

「申しワケございません。敵戦力を、見誤っていた模様です」
 黒に灰色のラインの入った宇宙服の上に、漆黒のローブを纏(まと)った女性が、深々と頭(こうべ)を垂れる。

「ゼーレシオン……か。コリーのペルセ・フォネーを堕としたのも、宇宙に漂っていた下半身の交戦記録から、相手はゼーレシオンと判明している」
 若きバルザック・アイン大佐は、言った。

「明らかにかの機体が、戦況に深刻な変化をもたらしております」
「そんなコトは、わかっている。今後の対策を、聞いておるのだ!」

「げ、現在、プレゲトーン少尉、レーテー少尉が率いた残存艦隊の再編を行っておりますが、敵艦に追いつくコトは不可能かと……」

「不可能で、済むとでも思っているのか、ステュクス少佐!」
「も、申しワケございません……」

「オレは、マーズ様の意向を無視して、宇宙戦闘空母クーヴァルヴァリアを追跡したのだぞ。これだけの艦艇を沈められて、今さらオメオメと本来の任務に戻れるものか!」

 怒りをぶちまける艦隊総司令官に対し、下げた頭を上げるコトが出来ないステュクス少佐。

「バルザック閣下、どうか怒りをお鎮め下さい」
 そのとき、ブリッジに2人の少女が現れた。

「なんだ、お前たちは?」
 バルザック大佐が、問い質す。

「わたしは、ニー・ケー中尉。後ろのヴェローナ少尉と共に、レーテー少尉旗下でサブスタンサー部隊を率いておりました」

「そうか。レーテー少尉は、惜しい女を亡くしたと思うが、だからと言って我が怒りは収まらんぞ」

「わたしは、ヴェローナ少尉の他に2人の部下を率いておりましたが、先の戦闘で2人は、敵サブスタンサーにより撃破され、捕虜となってしまったのです」

「そのサブスタンサーとは、このような姿では無かったか?」
 バルザック大佐の指示で、オペレーターがスクリーンに、宇宙で戦うゼーレシオンの姿を映し出した。

「はい。わたし達が交戦したのは、この機体で間違いございません」
「まったく……たった1機で、ここまで戦局を変えるとはな」
 大佐は艦橋の中央にある椅子に腰を落ち着け、ため息を吐き出した。

「バルザック大佐。わたしに、妙案がございます」
 敬礼しながら発言する、ニー・ケー中尉。

「なんだ、言ってみろ。聞くだけ、聞いてやる」

「ハッ。わたしやヴェローナ少尉は、戦闘用のクローンとして、1つの種から生み出されました。敵艦に捕らわれた2人、ヴァクナ少尉、ヴィカポタ少尉とは、コミュニケーションリングを通じて、より緊密な通信が行えるのです」

「なるホド。敵艦の様子を、伺い知るコトができると言うワケだな?」
「はい。現在2人は、捕虜として拘束されておりますが、敵艦の主であるクーヴァルヴァリア・カルデシア・デルカーダは、2人にコミュニケーションリングを通じた尋問を行っております」

「コミュニケーションリングを介した尋問は、太陽系統一法で禁止されているが……火星を火の海に沈めた魔女に言ったところで、ムダな話か」

「ですがわたくし達も、2人をコミュニケーションリングを通じてこちらから操るコトで、敵に偽の情報を流すコトに成功致しました」

「なんだと。それは、本当か!」
「はい。敵艦は進路を変え、土星圏へと向かっております」
 ニー・ケー中尉は、言った。

「それが確かなら、我が艦隊が追いつく可能性も出て来たと言うコトだな」
「バルザック閣下。成果を確実なモノとする為にも、わたしとヴェローナ少尉を小型高速艇で、敵艦の元へと派遣していただきたいのです」

「小型高速艇であれば、敵の艦にも追いつけるか。だが、危険な任務だぞ?」
 大佐は、真剣な眼差しを中尉に向ける。

「元より、覚悟の上です」
 ニー・ケー中尉は、再び敬礼をした。

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