ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第13章・114話

魔獣VS高位精霊

「なんってこったい!? せっかく闘技場で貰った盾が、ドロドロに溶けちまいやがった!!」
 ヒーターシールドを失ったティンギスは、天を仰ぎながら頭を抱えた。

「今の攻撃は盾で防げたが、次の攻撃は防げないぞ!」
「あの魔獣の炎を、防ぐ盾はもう無いんだ」
 レプティスとタプソスも、護った12人の少女たちに注意喚起(かんき)する。

 魔獣は4つ脚で、肩の高さでも長身な船長たちよりも上だった。
巨大なライオンの頭部が、炎を洩らしながらグルグルと唸りを上げている。
背中にコウモリの翼とヤギの頭を持ち、尾は巨大なヘビだった。

「このキュマイ・ラーの火炎を受けて無事とは、いささか驚きですがね。次の攻撃は、防げませんよ」
 ベレ・ロ・ポンティスは、魔獣に指示を飛ばす。

『グアルルッ!』
 咆哮と共に、ライオンの口が大きく開き、激しい炎を吐き出した。

「こ、こんな広範囲じゃ、どうにもなら無ェぞ!?」
「と、とにかく、遠くへ逃げろ!」
「お前たち、遅れるな!」

「わ、わかっている」「だがこれ程の炎……」「逃げ切れない!」
「マ、マズい!?」「このままでは……!」「焼かれる!?」

 必至に逃げる3人の船長と、イオ・シルら12人の少女たち。
けれども直ぐに、炎が追いついた。

「ククク。さあ、我がペットの炎で、消し炭となってしまいなさい」
 ほくそ笑む、ベレ・ロ・ポンティス。

「させない!」
 少女の声がすると、燃え盛る炎の上から、青い水が滝のように流れ出た。

 炎と水がぶつかって、水蒸気が激しく湧き上がる。
魔獣が息(ブレス)を吐き尽くすと、青い水はミドルヘアに整った顔の少女のカタチを取った。

「水の精霊……しかも、相当な高位精霊ですね」
 ベレ・ロ・ポンティスは、魔獣の背中を摩(さす)りながら様子を伺う。

「ルスピナ姉さま!」「来てくれたんだ」「助かったよ」
 12人の少女たちが、自分たちの前に立った少女に向けて言った。

「わたしが相手だよ。行って、メガラ・スキュレー!」
 ルスピナが、水の王女とも呼ばれる青い水の高位精霊に指示を出す。
精霊の下半身は、6頭の犬の上半身から、12本の海龍の尻尾が長く伸びていた。

 並んだ犬の前脚の辺りから、水が大量に湧き上がって魔獣を襲う。

「飛べ、キュマイ・ラー」
 ベレ・ロ・ポンティスを背に乗せ、宙に跳びあがる異形の魔獣。

「キュマイ・ラー、召還した少女を狙え!」
 コウモリの翼を羽ばたかせながら、火炎弾を連続で飛ばした。

「今度は、わたしが相手だよ。アニチ・マリシエイ!」
 別の少女の声が響き、闘技場の上空に竜巻が巻き起こる。

「な、なんだと!?」
 火炎弾は、あさっての方向に飛んで行き、まったく別々の場所へと着弾した。

「竜巻の中に、別の高位精霊か。気流で、火炎弾の軌道を歪ませただと!?」
 ベレ・ロ・ポンティスを乗せた魔獣は、闘技場へと降り立つ。

「ウティカ姉さまだ!」「わたし達を助けてくれた、風の精霊だよ」
 歓喜する、12人の少女たち。

「高位精霊が2体とは、ヤレヤレですね。これは早々に、決着を付けねばなりません」
 ベレ・ロ・ポンティスは、魔獣のライオンの口に、自らの槍を液体化して入れた。

「アイツ、どうかしちまったんじゃね?」
「自分の魔獣の口に、自分の槍を突っ込んだぜ」
「なにかの攻撃かも知れん。油断するな!」

「わたしは、この魔獣を仕留めたときに、自らの槍をコイツの口に突っ込んだのですよ。コイツが炎を吐き、内臓に達した槍がドロドロに溶け、コイツの内臓を焼いたのです」
 魔獣が吼え、口元から炎が零れ落ちる。

「お前たちも、灼熱の金属の飛沫となった、プルム・ヴム(鉛)を喰らいなさい!」
 巨大なライオンの口を開けた、キュマイ・ラー。
激しい火炎と共に、高温に熱せられた液体金属を吐き飛ばした。

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